隣に引っ越してきたのは銀髪の女の子でした ~ひと夏の思い出から始まる恋物語~
紅狐(べにきつね)
第1話 天使の寝顔
──ゴソゴソッ
頭がボーっとする中、次第に覚醒していく悩。いつもより、胸のあたりが重く感じ息苦しい。
アラームが鳴る前に目が覚めてしまった。
薄っすらと目瞼を上げ天井を見上げると、いつもと同じ天井が視界に入ってくる。
が、一つだけいつもと違う。胸の上に銀色の髪が流れ落ち、石鹸のいい匂いがしている。
「おい、起きろ」
「ん、んっ……」
俺は銀色の髪をかき上げ、彼女の寝顔を覗く。
白い肌に、銀色の髪、そして──
「お、はよ……。まだ、眠い」
薄っすらと開いた彼女の瞳は、吸い込まれるようなブルー。
「眠いじゃない、なんで俺の布団に入っているんだよ?」
「この部屋、エアコン涼しい」
「だからといって布団に入ってくる必要はないだろ」
「起こしても、起きなかった。私、床で寝たくない」
「……はいはい。じゃぁ、部屋交換するか?」
「それは困る」
「なんで?」
「秘密。ごはんどうするの?」
さて、今日はどうしようか……。
「自分たちで作るしか、ないよな」
「ない。お父さんもお母さんもいない。二人で作る」
ベッドに立ち上がった彼女は俺の布団も剥ぎ取り、朝からテンションが高い。
「つか、なんだよその服! 俺のじゃないか!」
ダボダボの白いTシャツ。俺のお気に入りだったのに!
「汗かいたから、かりた。これ、着心地いい」
「勝手に着るなよ」
「私も同じの欲しい」
「じゃぁ、今日買いに行くか」
「行く! あっ」
手を挙げた彼女は体勢を崩し、俺に向かって倒れてくる。
「ちょ、危なっ!」
俺はとっさに手を出し、彼女を両手で受け止めた。
「ぐふっ……」
が、つぶされた。
彼女のいろいろなものが、俺に当たる。
「ありがと。起きよっか」
「はいはい……」
両親はしばらく不在。彼女としばらくの間、二人暮らしになる。
彼女はカーテンを開け、部屋に日の光を入れた。
「んー、朝だね。今日もいいこと、沢山あるかな?」
俺は彼女の隣に立ち、軽く手を握る。
「きっとあるだろ」
こんな日が来るとは思わなかった。
あの日、俺のした選択はきっと間違っていないと思う。
「何考えてるの?」
「ん? ちょっと昔の事を考えてた」
「昔?」
「そ。俺が君と初めて会った時の事──」
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