第21話 社交界②

「いやー、息子さんがあんな活躍をして親としても鼻が高いでしょう!羨ましいことです!」



「はは、そんなことはありませんよ。息子ともどもまだまだですからな・・・」



「おや、父親の目から見てレオナルド君はまだまだだと?」



「ええ・・・・・・・・」



 目の前では、予想していた通り貴族たちが我先にと僕たちに挨拶してきたのを父上が対応している。ただ、これが一人目ではなくかれこれ15人くらいだというのが驚きだ。皆、僕の婚約者にうちの娘はどうかなど同じような挨拶のためだんだん飽きてきていた。

 ちなみに、母上は開始早々、他の貴族の奥様達に連れられて別の場所で囲まれている。



 そして、さっきの貴族の挨拶が終わると、次にこちらにやってきたのはウォーレン公爵だった。今日の社交界ではウォーレン公爵は宰相としてではなく公爵としているため、陛下の傍ではなく、こうしてホールを家族と共に歩いているのだった。

 話しかけてきたウォーレン公爵の隣には、20代くらいの若い、白髪の美人な女性と、その女性をそのまま小さくしたような白髪を肩まで伸ばした、僕と同じくらいの美少女がいた。



「やぁ、ラルフ、レオナルド君、貴族の相手は疲れたかい?」



「ん?なんだウォーレンか。あぁ、見ての通り疲れたよ。予想はしていたが一気にこんなに来るとは思っていなかった。」



「こんにちは、ウォーレン公爵。僕は父上が頑張ってくれていたのであまり疲れていませんよ。」



「はは、ラルフは昔からこういった社交界は苦手だったな。それにその様子だとレオナルド君も同じようだね。」



「そうですね、できればあまりこういった社交界には出たくはありませんね。」



「それでもこれから、レオナルド君は出なければいけなくなるかもしれないな。」



「ウォーレンの言う通りだな。レオは出る場面が多そうだ。しかし、もう付き添いはごめんだな。」



「「ハハハハハハ」」



「あなた、話すのもいいけどそろそろ私たちのことも紹介してくださらない?」



「おっと、そうだな。レオナルド君は初めましてだな。こっちが妻のリゼット、そしてこっちが前に話していた娘のミアだ。」



「初めまして、レオナルド君。ウォーレンの妻のリゼットです。よろしくね?」



「長女のミアです!よ、よろしくお願いします、レオナルド様!」



「コロソフ家の三男、レオナルドです。こちらこそよろしくお願いします、リゼット様、ミア様。」



 リゼット様はおしとやかな感じで、ミア様はその逆でなんにでも興味津々な活発な感じだ。5歳くらいの子供と言えば大体がこんな感じだろう。

 そう思うと、僕の反応は変かな?と、思ったがまぁ、いつもこんな感じで何も言われないからこのままでいいということにしておく。



「あら、様なんてつけなくてもいいわよ。もっと砕けてくれた方が話しやすいわ。」



「わかりました。ではリゼットさんと呼ばせていただきますね?年上の人への話し方は敬語の方が話しやすいのでで許してください。」



「ええ、そっちの方が話しやすいわ。距離も感じないですしね。」



「あ、あの!私も様はつけなくて大丈夫です!そ、それに敬語も!」



「わかったよ。じゃあ、ミアって呼ばせてもらうね。それと、僕のことはレオって呼んでね。」



「う、うん。改めて、よろしくね!レオ君!」



「うん!こちらこそ、よろしくね!」



 僕がそう言って微笑むと、ミアは顔を赤くしてうつむいてしまった。なんかしちゃったかな?と、考えていると、



「ラルフ、これはわざとか?」



「いや、おそらく本人はわかってないな。天然ってやつだ。まぁ、これに関しては後で言っておくにするよ。」



「ふふ、レオナルド君も隅に置けないわね。」



 三人の言っていることがわからず、困惑しているとミアが治り、三人の話も区切りがついたので別の話題へと移り、今までの挨拶とは違って楽しい時間を過ごすことができた。

 しばらく話して、ウォーレン公爵が陛下に挨拶しに行くというので話はいったん終わりにしたのだった。ミアとはこの後の子供たちだけの時間でまた、と約束した。



***



 陛下への挨拶は位の高い貴族から行うため、ウォーレン公爵たちが行った後からあまり時間もかからずに僕たちの番になった。



「よく来たな。ラルフ、レオナルド。今日の社交界は楽しんでおるか?」



「そんな余裕はないとわかっているだろうに。まぁ、レオの良い経験にはなっていると思うぞ。それと、お久しぶりです、レイラ王妃。そして、5歳のお誕生日おめでとうございます。シャルロッテ王女。」



「ええ、お久しぶりですわね、ラルフ。それと、初めまして、レオナルド君。君の活躍は多方で聞いているわ。」



「ありがとうございます。騎士団長様。そして、貴方がレオナルド様ですね。私はオストラ王国の第三王女、シャルロッテです。よろしくお願いいたしますね。貴方の活躍を聞いて、前から直接会ってお話を聞いてみたいと思っていたのです!」



「初めまして、王妃様、シャルロッテ王女。コロソフ家、三男のレオナルド・コロソフです。シャルロッテ王女、私でよければいくらでもお話させていただきます。」



 シャルロッテ王女は5歳とは思えないほど落ち着いた人に見えた。しかし、その中にも5歳らしいあどけなさもあるように感じた。



「本当ですか!?」



「シャル、今は後がつかえているから、後にしなさい。レオナルド、悪いがまた後でシャルと話してくれ。」



「もちろんです。では、シャルロッテ王女、また後でお話ししましょう。」



「わかりました。レオナルド様もまた後で。」



 シャルロッテ王女の言葉に一礼すると、僕と父上はホールへと戻った。ちなみに陛下に挨拶しに行かなければいけないのは当主と5歳の子どもだけであるため、母上のような貴族夫人はついてきても来なくても良いことになっている。



「レオ、王女様はどうだった?」



「思ってたよりもとっつきやすい御方でしたね。入場した時とはまた違った雰囲気でした。」



「俺は王女様が小さい時から知っているが、あんなに楽しそうなのはあまり見なかったな。」



「普段はどんな感じなのですか?」



「そうだな・・・ほら、ちょうど今の王女様がそんな感じだぞ。」



 父上に言われて先ほどまでいたステージを見ると、僕と話していた時のような笑顔はなく、ただ淡々と貴族たちの挨拶を聞いているシャルロッテ王女の姿があった。



「王女様は昔から人見知りなんだ。だから、初対面のレオにあれだけ楽しそうに接するのを見て意外だと思ったんだ。」



「そうなのですね。てっきり、普段からあんな感じだと思ってました。」



「普段からあんな感じなら、今でさえ貴族の子息が黙っていないのがさらに激しくなるだろうな。」



「それは同感です。とにかく、話しやすい人で良かったです。」



 とりあえず、これからの子供だけの時間、ミアとシャルロッテ王女に話しかけることができそうで安心したのだった。



_______________________

【あとがき】

ここまで読んで下さりありがとうございます。

今回で社交界は終わる予定だったのですが、意外と長くなってしまったので分けたいと思います。

まだまだ続くので気長にお楽しみください。

次回もお楽しみに!




 





 



 

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