第16話 決意
父上を馬鹿にされたことにキレていた僕が答えると、それに反応したのは国王ではなくブランク侯爵だった。
「この子供もこう言っているのです!それに信じていない者も大勢います!ここは陛下、なにとぞ!」
「う、うむ。そうであるな。では、レオナルド・コロソフと第二騎士団長の模擬戦を許可する。しかし、今日ももう遅い。よって、模擬戦は明日の正午に開始する。双方、準備しておくように。」
ブランク侯爵は僕がキレていることがわかっていないようだったが、国王はわかったようだ。戦いは見てみたいが怒らせるつもりはなかったらしい。国王の言葉は頭を冷やせということだろう。
「これにて本日の謁見を終了とする。レオナルドはこのあと別室に来るように。以上、解散。」
国王はそう言うと謁見の間から出て行った。それに続いて位の高い貴族から退出していく。ブランク侯爵は僕と父上に向かって気味の悪い笑みを浮かべて去っていった。
しばらくして謁見の間にいた貴族たちが全て退出すると、メラニーさんがやってきた。
「陛下が別室にてお待ちです。第一騎士団長様や宰相様もいらっしゃいます。付いてきてもらえますか?」
「はい、わかりました。」
メラニーさんの後を付いていくと、ある部屋の前で止まった。
「この中で御3方がお待ちです。」
「ありがとうございます。」
メラニーさんにお礼を言って中に入る。
「失礼します。レオナルド・コロソフです。」
「あぁ、入ってきてくれ。」
国王の返事があったので中に入ると、円状の机を囲むように3人が座っていた。
「まずは、座ってくれ。」
その言葉に従って僕が座ったのを確認すると、国王が話し始めた。
「レオナルド、改めて君には感謝をしよう。ウォーレンを助けてくれてありがとう。そして先ほどはすまなかった。君を怒らせるつもりは無かったんだ。」
国王はさっきとは違い、ラフな話し方をしている。きっとこっちが素なのだろう。そんなことを考えながら国王に答える。
「先ほど怒っていたのは国王様に対してではありません。別に、戦うことくらいなら言ってくださればいくらでもしました。ですが僕が怒っているのは、ブランク侯爵が父上に恥をかかせようとしたことにです。」
「そうだったのか。あんなに怒ったレオを見るのは初めてだったからな。俺のために怒ってくれてありがとうな。」
「ラルフも見たことがなかったのか、あの怒気は5歳が出せるものではなかったぞ。」
国王は苦笑いを浮かべていた。すると、ここまで黙っていたウォーレン公爵が口を開いた。
「それにしてもレオナルド君の相手は第二騎士団長ですか。彼は完全に貴族派ですからな。ブランク侯爵とも繋がっていたのでしょうな。まぁ、レオナルド君の心配はしていないですがね。」
「ブランク侯爵と繋がっているということは呪いの装備を付けているんでしょうかね?」
「それはどうだろうな。相手は完全にレオのことを舐めているからな。それに今回は大勢の観客がいるしな、自分たちの支持を得るために不正まがいのことはしないと思うが…」
「それは余も同感だな。そもそもやつらの目的は余や余の側近たちを陥れることだ。そのことをおおやけにするわけにはいかないからな。表立った行動は起こすまい。」
「とりあえず、警戒だけはしておきますね。
「それにしても、レオナルドは大丈夫なのか?君の強さを疑っているわけではないが、相手は第二騎士団長だ。あれでもこの国のトップクラスの力を持っているのだ
。いくら強いとはいえ、無傷では済まないだろう?」
この疑問に答えたのは僕ではなく、父上だった。
「あいつが俺にも勝てないのにレオの相手になるはずがないんだがな。少なくとも、俺が今レオと戦っても勝てるビジョンが見えないからな。」
「僕が父上より強いかどうかはわかりませんが、おそらく大丈夫です。手加減するつもりはありませんしね。ただし殺さないようには気を付けますけど。」
「あぁ、レオナルド君には言ってなかったですな。王城にある闘技場には魔道具で特殊な結界を張っているのです。結界の中で死んでしまっても結界の外にはじき出されるだけで済むのです。中で負ったケガも元通りになりますな。ただ、莫大な魔力とクールタイムが必要なのでそんなに長くは張っていられませんがな。」
なるほど、そんなものがあるなら常時張っていればいいと思ったけどそうはいかないんだな。それに、その結界があればいくらでも本気を出していいってことだよな。これで、僕の怒りを存分にぶつけることができるな。
「フハハ、その顔では心配はいらないようだな。ならば余は存分にレオナルドの戦いを楽しむとしよう。」
「俺も心配はしてないが、父親として一言言っておこう。無茶はするなよ。」
「はい!奴らを後悔させてやりますよ。」
ここで4人での会話は終了し、時間も時間なので僕と父上は家に帰ることにする。ウォーレン公爵も今日は家に帰って王都にいる家族に今日の出来事を話すようだ。家族もきっと心配しているだろうからだそうだ。
***
ということで、王都の屋敷に戻ってきた。玄関の扉を開けると母上とミルアが待っていた。
「お帰りなさい、レオ、ラルフ。早く帰ってきてくれてうれしいわ。もう中でみんな揃って待っているわよ。」
「お帰りなさいませ、レオ様、ラルフ様。中へご案内いたしますね。」
母上とミルアに案内されて屋敷のリビングにやってくると、見知らぬ女性と青年が2人座っていた。僕たちも席に座り、父上が互いの紹介をしてくれる。
「さて、帰ってきて早々だが、久しぶりだな。そして、レオは初めましてかな。マリアーノとジークフリード、ウォレスだ。」
「初めまして。レオナルドです。よろしくお願いします。」
「初めまして、マリアーノよ。気軽にマリアって呼んでね。」
「ジークフリードだよ。ジークって呼んでね。なかなか会えなかったけど会えてうれしいよ。」
「ウォレスだ!よろしくな!会えて嬉しいぜ!」
マリア母上は青髪のおしとやかな感じのする人だ。ジーク兄上はマリア母上の青髪を引き継いでいて、どちらかと言えば、中で読書をしていそうなおとなしそうな人だ。ウォレス兄上は真逆で外で剣でも振っていそうな活発な感じの人だ。
「さぁ、お互い自己紹介が終わったってことで、夕飯にしよう。その時に今日何があったのか話そう。」
それから家族みんなで夕飯を食べた。父上に話を聞いたマリア母上達はとても驚いていて、信じられない様子だった。それで、明日の戦いを見に来るかと、聞いたらちょうど学園も休みなので見に来るらしい。ちなみに、明日の戦いを知った母上は、
「レオがラルフのために怒ってくれて嬉しいわ!でも、無茶だけはしないでね。私はレオが勝つと信じてるから。」
と、声をかけてくれた。毎回毎回心配させてるなぁ。と思いながら明日は絶対に負けないと再度心に誓った。
ブランク侯爵、ウォーレン公爵を襲ったり、父上と母上の乗る馬車も襲った。僕の大事な人たちを傷つけようとしたんだ。あなたを僕は絶対に許さない!
そう決意し、戦いの日、翌日を迎えた。
______________________________
【あとがき】
ここまで読んで下さりありがとうございます。
更新遅くなってごめんなさい。
テスト期間なのでまた遅くなるかもです。
テスト期間が明けたらまたたくさん更新するので次回をお楽しみに。
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