第15話 謁見
貴族街を抜けると、遠くから見ても巨大な王城がその全貌を現した。外壁は真っ白に塗られ、中世ヨーロッパの城のような構造をしていた。
城の門に着くと、門番が近づいてきたので父上が馬車の中から顔を出した。
「ラルフ・コロソフだ。中にはウォーレン・ミラー公爵と私の息子が乗っている。至急、陛下にお話ししなければならないことがあるため、お目通りを願いたい。」
「了解しました。しばしお待ちを。」
門番はそう言うと、後ろに控えていた使用人に父上の要件を伝え、使用人は急いで王城の中に入っていった。
しばらくして、使用人が帰ってきて門番に確認してきたことを伝えた。
「陛下がお会いになられるそうです。どうぞ、中へ。」
そう言うと門が開かれ、馬車は中へと進んだ。王城の敷地内に入っても庭がとんでもなく広いためすぐには城に着かなかった。
「ここからは歩きだ。馬車を降りるぞ、レオ。」
「はい。」
父上に言われて馬車を降りると、一人の執事が立っていた。
「お待ちしておりました。ここからは私が案内させていただきます。ご子息様は初めましてですね。私はゼベットと申します。以後お見知りおきを。」
「初めまして。ラルフ・コロソフ伯爵家三男、レオナルド・コロソフです。こちらこそよろしくお願いします。」
「これはご丁寧にありがとうございます。では案内いたしますね。」
「あぁ、それなんだが陛下には最初に俺とウォーレンで話をしに行く。レオにも後であってもらうからそのための準備を頼みたい。」
「かしこまりました。ではレオ様は城に入りましたら、別の者が案内いたします。」
そんな会話をしながら城に入ると、一面ふかふかの絨毯で敷き詰められた高級感溢れる空間が目に飛び込んできた。その光景に目を奪われていると、ゼベットさんがメイドに説明したみたいで、メイドが話しかけてきた。
「お話は伺っております。ここからは私についてきてください。私はメイド長のメラニーです。よろしくお願いいたします。」
「レオナルド・コロソフです。よろしくお願いします。」
父上達とここで別れて、別室に連れられた僕は部屋で待機していたメイド達とメラニーさんに着せ替え人形にされるのだった。
***
その頃、ラルフ達は国王と面会していた。
「よく帰ってきたな。余の頼みを聞いてくれて助かったぞ、ウォーレン。それにしても、ラルフまで一緒に来て至急の用事とはいったい何があった?」
「実は………」
ウォーレン公爵がことの顛末を話すと、
「余の頼みを聞いたばかりに、すまんかった。それにしても、オークの上位種を含めた群れを瞬殺し、転移魔法を操るとは。にわかに信じられんな。」
「父親である俺でもいまだに驚いてるくらいだ。陛下がそうなるのも仕方ないな。」
「その強さを見てみたいところだが、そなたの息子、レオナルドといったか。余の失敗で取り返しのつかないことになる前にウォーレンを救ってくれたのだ。何か褒美を与えなければな。ラルフよ、ここにレオナルドは連れてきていないのか?」
「陛下がそう言うと思って、レオには謁見の準備をさせているよ。」
「ははは、さすがだな。ならば今のうちに何を与えるか考えておこうか。」
「陛下、それならば私に提案があります。」
「なんだ?言ってみろ、ウォーレン。」
「レオナルド君には………」
「なるほどの!よし、それでいくとするか。」
レオのいないところで勝手に話が進んでいくのだった。
***
着替え終わった僕は、謁見の準備が整ったと言われ、メラニーさんに連れられて謁見の間の扉の前にいる。中ではすでに、国王が集まった貴族たちに今回の事件の詳細を話していて、僕の名前が呼ばれたら中に入る予定だ。
「……ということがあった。これは捕らえた者の他にも我々を狙っている者もいる可能性がある。各自、警戒しておくように。というわけで、今回の宰相暗殺未遂事件の解決の立役者に褒美を与える。レオナルド・コロソフ、ここに参れ。」
国王のその言葉と共に謁見の間の扉が開いた。中は、中央のレッドカーペットを挟むように貴族たちが並んでいて、壇上には宰相であるウォーレン公爵と、騎士団長の父上がいてその間の豪華な椅子には、白髪が混じってはいるがまだまだ若々しい男性が座っていた。その人が国王だろう。周りの貴族に比べて纏っている覇気が全然違う。
僕は雰囲気に少し圧倒されながら、そのことを顔に出さないようにレッドカーペットを進み、王家の紋章が装飾されているところでひざまずいた。
周りの貴族たちはほとんどが僕に対して疑いの目を向けていた。
「レオナルドよ。そなたのおかげで宰相のウォーレンを失わずに済んだ。感謝するぞ。よって今回の褒美として、レオナルド・コロソフに男爵位を与え、金貨100枚を贈呈することにする。」
国王のこの言葉に驚いたのは僕だけじゃなかった。周りの貴族たちもざわめいている。たった5歳の子供を貴族の当主として認めるということなのだ。驚かないはずがない。そんな中、一人の貴族が声を上げた。
「恐れながら、陛下!こんな子供にオークの上位種を含む群れなど倒せるはずがありません!」
その声に同意を示すように何人かの貴族が頷いた。
「なんだと?では、ブランク侯爵。そなたは余が嘘をついているとでも?」
「い、いえ。そうではなく、ラルフ第一騎士団長が虚偽の報告をした可能性があるということです。陛下もそこの子供が実際に戦っているところは見ていないのではありませんか?」
「うむ、そうではあるがな……。では、ブランク侯爵。そなたはどうすればよいと?」
国王のその言葉にブランク侯爵はニヤリと笑みを浮かべて、
「実際に戦わせてはどうでしょう?相手は第一騎士団長では贔屓になるかもしれないので、第二騎士団長でどうでしょう。本当にオークの上位種を倒したならば5歳とはいえある程度は戦えるでしょうし。」
この言葉に壇上の父上が厳しい顔をブランク侯爵に向ける。そういえば貴族派の有力な貴族ってこの前父上達が言ってたな。それで僕に戦わせて父上に恥をかかせようってわけか。戦わせるのが第二騎士団長ってことはその人も貴族派ということだろう。
「なるほどの。ということだが、どうする?レオナルドよ。」
国王は僕に笑みを浮かべながら聞いてきた。この人、ただ戦っているとこを見てみたいだけだな。と思いつつ僕は答えた。
「ぜひ、受けさせていただきます。私が倒したのは本当のことですから、断る理由もないですしね。」
その言葉にブランク侯爵がすごい形相で睨んできた。僕が馬鹿にされるのは我慢できるが、父上を馬鹿にされるのは我慢ならない。この時の僕は少しキレていた…
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【あとがき】
ここまで読んで下さりありがとうございます。
初めてレオがキレましたね。
相手がかわいそうです。
次回もお楽しみに。
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