第14話 到着
王都が近づいて最初に見えたのは人の何倍もの高さの城壁だった。10メートルを越すであろうその城壁で外からは王都の中を見ることはできない。
「うわぁ~、すっごく大きな城壁ですね!」
「初めて見る人は皆そう言うな。王都の周りには魔獣の溜まり場が多いんだ。だから、魔獣が王都に侵入できないようにあんなに大きな城壁が建てられているんだ。」
「魔獣が多すぎるのは困りますが、冒険者たちにはいい狩場になるし、王都も潤いますからな。」
「ふふっ、きっと門をくぐって王都の中を見たらもっと驚きますよ。」
ウォーレン公爵の言う通り、城壁に近づくにつれて帯剣した人や、鎧を身に着けた人が多くなってきている。この人たちが、冒険者なのだろう。
そうこうしているうちに城壁の門に着いた。門は2つに分かれていて、一つには冒険者や、積み荷を積んだ馬車を引いている商人らしき人などが並んでいる。もう一つは僕たちのような貴族の馬車が通る門らしく、一般の門よりは混んでいない。
門の前には、鎧を着た兵士が検問を行っている。そのうちの一人がこちらに向かってきた。
「失礼いたします。馬車の中を確認してもよろしいでしょうか?」
「お疲れさん、ちゃんと仕事してるみたいだな。」
「だ、第一騎士団長!宰相様まで!こ、これは失礼いたしました。馬車の確認は済みましたのでお入りください。」
「あぁ。急ぎの用事があるのでな。助かるよ。これからもがんばれよ。」
「はい!光栄です!」
父上が騎士団長としての仕事をしているのを初めて見た。普段とは違って、威厳があって凛々しい感じだ。
「騎士の人、父上のことすごく尊敬していましたね。」
「それはそうだな。ラルフはこの国で一番強いからな。戦いに身を置くものとしては憧れの存在なのだろう。」
「それに、ラルフは優しいし、面倒見がいいですからね。後輩達には好かれているのですよ。」
「ははは、やめてくれ2人とも。照れるじゃないか……」
母上が父上を褒めたことで2人がイチャイチャし始めた。夫婦仲がいいのは知っているが、場所を選んでほしいと思う。
「ゴホンッ!ラルフよ。王都に着いたがこれからどう動くのかね?」
さすがのウォーレン公爵も我慢できなかったみたいで、2人を止めてくれた。ありがたい。
「あ、あぁ。すまない。このまま王城に行きたいところだが、まずはディーナを降ろしたい。この事件に巻き込みたくないからな。レオには悪いが陛下のとこについてきてもらう。」
「わかった。ルイディナ夫人の安全を考えればそうしたほうがいいな。レオナルド君についてはテイマーとの戦いについて陛下に説明してもらった方がいいからな。よろしく頼む。」
「了解しました。それと、捕まえているテイマーは門の騎士団に引き渡さないのですか?」
「あぁ。そうだな。このまま王城に行くなら運んでもいいが、家に行くなら引き渡した方がいいな。」
父上はそう言うと、馬車の外に出て、騎士団に詰め所に連行するように伝え、馬車に戻ってきた。
「さぁ、行こう。そうだ、レオがマリア達に会うのはまだ先になりそうだ。ディーナ、マリアには伝えておいてくれ。」
「わかりました。早めに帰ってきてくださいね?マリアも楽しみにしているでしょうから。」
「わかっている。俺も久しぶりにみんなで過ごしたいからな。」
父上がそう言うのと同時に馬車が王都の屋敷に向けて動き出した。屋敷への道中には活気のある店が並んでいたり、コロソフ領では見ないような店もたくさんあった。ぜひ、あとで観光してみたい。
そう思いながら、景色を見ているとしばらくして馬車が止まった。どうやら着いたようだ。
「遅くなるということ、マリアに伝えておくわ。レオも陛下に失礼のないようにね?」
「はい、母上。頑張ってきますね。」
母上は馬車を降りて僕たちにそう言った。母上と後ろからついてきていた、ミルアなどの使用人はここでいったんお別れだ。王城には僕と父上、ウォーレン公爵の3人だけで行くことになった。もちろん兵士たちもついてこない。なにせ、王国1強い騎士団長に、オークの群れを一瞬で屠れる5歳児が乗っているのだ。この国にここ以上に安全な場所はないだろう。というわけで急いで王城に向かう。
王城はこの王都のちょうど真ん中に位置していて、貴族たちの住む屋敷は比較的、王城に近い所にあるためそんなに時間はかからなかった。
「城に着いたら俺とウォーレンは陛下に大体の説明と、レオの謁見の許可をもらいに行く。レオはその間、城のメイドたちに身だしなみを整えてもらえ。さすがに旅用の服で謁見するわけにはいかないのでな。」
「父上、僕も父上とウォーレン公爵と一緒に行けばいいのでは?なぜ僕だけ謁見なんですか?」
「体裁というやつですな。陛下や私たちは気にしないのですが、うるさい奴らもいますのでな。騎士団長や宰相という肩書があれば奴らは強くは言えないのですがな。」
「ウォーレンの言うこともそうだが、俺が思うにあの陛下の性格からすると、陛下の右腕である宰相をレオが救ったなんて言えば、褒美を与えなければ。なんて言いそうだからな。」
「確かに言いそうですな。そうなった陛下は誰にも止められなくなりますからな。」
父上とウォーレン公爵は苦笑いを浮かべて答えた。今の話からすると国王はとても気さくな人のようだ。それになにか褒美がもらえるらしいが、さすがに国王からの褒美は体裁的にも断れないのでその時は黙って受け取ろうと思う。
「なるほど、わかりました。それにしても、いきなり謁見なんて緊張しますね。」
「ははは、礼儀作法の心配はしなくていいぞ。陛下がその点に寛大なのもそうだが、レオはあのお披露目会の挨拶の件があるからな。あれができるなら大丈夫だ。」
「ラルフよ、レオナルド君のお披露目会で何があったのだ?」
それから2人は王城に着くまでの間、僕のお披露目会の挨拶の話題で盛り上がっていた。話を聞いたウォーレン公爵は改めて僕に、
「心配はいらないようですな。」
と、笑いながら言ってくるのだった。
______________________________
【あとがき】
ここまで読んで下さりありがとうございます。
次回は王様との謁見ですね。
次回もお楽しみに。
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