第18話 戦いの後
「お疲れ様、レオ!とってもかっこよかったわよ!」
家族のいる観客席に行くと興奮した様子で母上が迎えてくれた。
「本当に強かったんだな。信じてなかったわけではなかったけど実際に見て、兄としては複雑な気持ちだよ。」
「レオ!今度は俺とも手合わせしてくれよな!」
兄上達も素直に褒めてくれた。この様子からして、僕がマークにナイトメアを使ったことはバレていないのだろう。そんなことを考えていると、いつの間にかこちらに来ていた父上に話しかけられた。
「お疲れ様、レオ。まずは、よくやったと言っておこう。これでしばらくの間、貴族派の連中は表立った行動は控えるだろうからな。」
「はい、ありがとうございます。」
ぼくが答えると、父上が僕にしか聞こえないような小さな声で話しかけてきた。
「最後に使った魔法、レオが何を思って使ったのかはわかっているつもりだ。だから俺からは特に何も言わないことにしておく。」
やはり父上にはバレてしまっていたようだ。となると、国王様やウォーレン公爵にも伝わっていそうだな。
父上は僕から離れると、
「あぁ、そういえば陛下もレオと話したがっていたが、今からブランク侯爵についての話し合いにでければならないようで残念がっていたな。まぁ、後日の謁見の時にまた呼ばれるかもな。」
「ははは、そうなりそうですね。」
僕は若干の苦笑いを浮かべながら答えた。
そんなたわいもない会話をしていると、マリア母上が
「ここで話すのもこれくらいにして、そろそろ家に戻りましょう。どうせ今日はレオの祝勝会をするんですから、その時にまた話せばよいでしょう?」
と、提案してくれたので僕も乗っかることにする。
「マリア母上の言う通り、そろそろ帰りましょう。ミルア達も家で待っているでしょうしね。」
「あぁ、それじゃあ帰ろうか。」
その後僕たちは馬車で家へと帰り、家で出迎えてくれたミルア達使用人に喜ばれたり、盛大に祝勝会をしてもらったりなど夜が更けるまで楽しんだ。
***
時は、レオ対マーク第二騎士団長の戦いの開始を陛下が宣言したところまで遡る。
「ち、父上・・・今のレオの動き、見えましたか?」
「あぁ、確かに見えはしたが・・・目の前であの速さで動かれて攻撃されて、完全に防御できる自信はないな。」
「父上でも怪しいなら、他の人では・・・」
「全く歯が立たないだろうな。もちろん、今戦ってる第二騎士団長もな。」
ラルフとジークは戦っているレオを見て、感想をこぼした。周りの観客は圧倒的な第二騎士団長の勝利という予想を覆され、たった5歳の少年が翻弄している姿に圧倒され、誰一人言葉を発する者はいなかった。
その一方、レオの勝利を最初から信じていた少数の者たちは、興奮を隠せないでいた。
「圧倒的、その一言に尽きますな、陛下。」
「余もここまでとは思っていなかった・・・多少の余裕を残して勝つと思っていたが、第二騎士団長は手も足も出ないではないか。」
「戦闘に身を置いていない私では目に追うことすらできませんな。どんどん傷ついていく第二騎士団長の姿からしか判断することができませぬ。」
「余は昔、冒険者をしていた時期があったからの。余計にレオナルドの強さがわかる。」
「あの時はあれほどやめてくださいと言ったのに、無断で外出なされるから城の者は困っておりましたな。」
「今となっては懐かしい物よ。それより、これでレオナルドが勝てばブランクのやつに一泡吹かせられるな。」
「そうですな。これで少しは貴族派の活動も収まるでしょうな。それに彼には呪いの装備についても詳しく聞かなければいけないですしな。」
「そうであったな・・・む?あの魔法は・・・」
「いきなり気絶しましたな。いや、レオナルド君が何かしたような気がしたが・・・」
「その通りだ、ウォーレン。あれは闇魔法の上級魔法『ナイトメア』だ。相手に自分の望む悪夢を見せることのできる魔法だな。」
「そもそも闇属性を使える人がほとんどいないですからな、忘れておりました。」
「余も見るのは初めてだな。影の者には闇魔法が使える者もおるが、上級まで
扱える者はおらん。なにせ、そもそも扱いが難しい魔法の上級だ。他の魔法の上級とは格が違うらしい。」
「結界は外傷が治っても、精神的な傷までは治せないですからな。なかなか、えげつないことをしますな。」
「それがレオナルドなりの家族を守る優しさなのだろうな。だがしかし、この魔法に気づいた者は少ないはずだ。だから、観客がレオナルドに向ける感情は悪い物にはならないだろう。」
「陛下の言う通りですな。私の家族も今日は見に来ているのですが、ここから見る限り、レオナルド君の勝利にとても興奮しているようなので、気づいてはいないでしょう。」
「お前の家族というと、お前の妻たちか?」
「ええ、私の妻は二人とも来ていますが、今回は今度の社交界のためにひと月前から王都に来ている娘も来ていますな。」
「そうか!いつもは領地に居て会えないからシャルも寂しがっていたぞ。」
「なんと!王女殿下にそう思われていたと知れば、うちのミアも喜ぶでしょうな。今度、城に連れてくるとしましょう。」
「シャルも喜ぶだろうな。それにしても、ミア嬢が魔獣に襲われなくてよかったな。」
「そうですな。タイミングをずれさせて本当に良かったと思っていますぞ。」
「良い判断だったな。さて、そろそろ余の出番のようだ。ラルフ、もう戻っても良いぞ・・・ん?」
「ラルフなら試合が始まった頃に家族の方に戻って行きましたぞ。」
「な!あやつ・・・まぁ、今回はレオナルドに免じて許してやるとするか。」
国王はそう言いながら舞台へと向かうのだった。
______________________________
【あとがき】
ここまで読んで下さりありがとうございます。
今回短めです。
やっとヒロインらしき影が・・・
テンプレを多く取り入れているので、他の作品とかぶってしまうかもしれませんが、パクリではないのでご容赦を。
次回もお楽しみに!!
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