第22話 暗躍

***



 時は少々遡り、レオ達が社交界の会場に入場した頃



「クソが!なぜこうなった、なぜ私が子爵なんかに!」



 家の中のあらゆる物を壊しながらブランク子爵は叫んでいた。

 彼は先日の国王による判決によって、侯爵位から子爵位に降格していた。また、降格と共に今回の社交界に参加できないことが決まっていた。



「お、落ち着いてください。ブランク子爵・・・」



 そんな彼を落ち着かせようとしているのは、使用人ではなくレオに模擬戦にて敗れ、騎士団長の地位を剝奪されたマークだ。

 マークは、レオの『ナイトメア』によって悪夢を見せられ、性格が変わってしまい、前のような自信過剰なナルシストではなく、気弱でおどおどとした性格になってしまっていた。



「黙れぇ!!この私を、子爵と呼ぶなぁ!!」



「ひ、ひぃ!!も、申し訳ございません、ブ、ブランク侯爵・・・」



「こうなったのも全てあのレオナルドとかいうガキのせいだ!宰相を襲わせたのも・・・そして!!貴様があっけなく負けたのもなぁ!!」



「ひぃ!!し、しかし僕が負けたのは、あ、あのガキがわけのわからない魔道具を使って僕のことを・・・」



「うるさい!!貴様の言い訳を聞いているのではない!!」



「ご、ごめんなさい・・・」



 そんなやり取りをしている2人のもとに、突然部屋の影から1匹の蝙蝠が飛び出した。その蝙蝠は驚いている2人の前まで飛ぶと、黒い霧を纏いだし、人型へと姿を変えていく。

 次第に黒い霧が晴れ、中から出てきたのは、黒い髪に赤い瞳、口からは鋭い牙が出ているいわゆる、ヴァンパイアだった。



「な、何者だ!!ここがどこだかわかっているのか!!」



「急に怒鳴らないでください・・・ただでさえ、昼だから眠いのに。まぁいいでしょう。私の名は・・・お伝えしなくてもいいでしょう。どうせ・・・ね?」



「お、お前は魔族だな!!なぜここにいる!!」



「そうですねぇ。それは私が帝国側だから、でしょうかね。」



「な!帝国は魔族と手を組んでいるのか!」



「まぁ、魔族全体がというわけではないですがね。というわけで、あなた方が国王や騎士団長になれば、私たちにとっても都合がいいのです。」



「あ、あぁ。それは前からそちらと連絡を取っているから、把握している。」



「あ、あの、ですが・・・魔物による襲撃も失敗して、私たちはもう打つ手が・・・」



「えぇ、そうですね。確か、レオナルドとかいいましたっけ?あの子供のせいで失敗したんですよね?」



「あぁ!その通りだ!あのガキのせいで・・・」



「ならば私が力を授けましょう。この力を使えばあんな子供、楽々殺せちゃいますよ。」



「ほ、本当か!!その力があれば私が国王に・・・」



「この僕の手で、あのガキを・・・」



 ヴァンパイアの誘惑によって2人は完全にその気になっていた。

 ブランクは王族を殺し、自分が国王になることを、マークは一度負けたレオに復讐を。2人はそれぞれの思惑でヴァンパイアの思うように思考を誘導されていく。

 そんな2人をみたヴァンパイアは、自身の影の中から、禍々しいオーラを纏う剣と杖を取り出した。



「剣はマークさんに、杖はブランクさんにお渡しします。この武器の説明ですが、魔剣と魔杖なので実際に持ってみれば使い方はわかるでしょう。あぁ、それと前回の反省を活かして、武器には魔力感知されないように細工をしておきました。」



「この杖を使えば、すべてが私のものに・・・」



「こ、この剣で、あのガキを・・・」



「今は社交界で多くの貴族や王族が王城にいるはずです。もちろんその中にレオナルドという子供もいますよ。さぁ、存分にその力を使って恨みを晴らしてきてください。」



 ヴァンパイアのその言葉を聞くと、ブランクとマークは禍々しいオーラを纏う、呪いの武器を手に取った。

 


「「ウガァァァァァァァァ!!!!!」」



 その瞬間、2人の体に呪いの武器が放っていた禍々しいオーラが纏わりつき、飲み込んでいく。2人の体をオーラが全て飲み込むと、黒い繭のようになった。

 しばらくすると、その繭が崩れ始め、2人の姿が見えてくる。

 その姿は、前とは大きく違っていて、肌色だった皮膚は灰色に変色し、背中からは悪魔のような翼がはえている。そして、額には2つの角がある。

 それを見たヴァンパイアは、拍手をしながら、



「おめでとうございます。これであなた達も私の仲間です。今の気分はどうですか?」



「素晴らしい・・・力がみなぎってくる・・・」



「前の僕とは比べ物にならない・・・最高だよ。」



「フフフ、それはよかった。では、あなた達2人を王城へお届けします。今、ここで暴れてもらっては困りますからね。」



 ヴァンパイアはそう言うと、自身の影の中に2人を引きずり込み、王城へ転移させた。

 誰もいなくなった部屋の中でヴァンパイアは、一人呟く。



「せいぜい、頑張ってくださいね。次は、ありませんから・・・」



 ヴァンパイアは、そう言うと影の中へと消えていった。




______________________

【あとがき】

遅くなりました。

ここまで読んで下さりありがとうございます。

怪しくなってきましたね。

レオ達はどうなるのか!

次回をお楽しみに!




 


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自重をしない少年は異世界で成り上がる 夜咲 @whale19

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