第9話 王都へ①

 コロソフ領は比較的王都に近い位置にあるが、それなりに広いため、王都へは馬車で5日くらいかかるらしい。行く道中は領内の街に宿泊するため野宿ではないが、移動中に魔獣が出てくる可能性もあるため気が抜けないらしい。もっとも、今の僕が勝てないような魔獣は出てこないだろうし、私兵が馬車を護衛しているためそんなに危険な旅ではない。



「王都に着いたらまずマリアーノに会いに行こう。マリアーノもレオに会いたいと言っていたしな。ジーク達は学校があるから夕食の時に紹介することになるだろう。俺は城に行って陛下にレオのことを話してくる。溜まってた仕事もあるだろうしな。」



 いつも領地に居がちだからたまに忘れそうになるが、父上は第一騎士団団長何だった。

 僕たちの馬車の旅も今日で3日目だ。ここまでは多少の魔獣の襲撃はあったものの、群れからはぐれたレッサーウルフだったり、私兵で十分対応可能だった。もちろん僕も魔力感知で魔獣の位置を把握しているため、奇襲されることはないのだが。

 魔の森でのレベル上げによって、魔力感知の範囲も広がった。大体半径5キロの生物を感知できるようになった。



「レオはマリアーノ達に会うのは初めてですものね。」



「そうですね。兄上たちにも会っていないので会えるのが楽しみです。」



 ちなみに馬車に乗っているのは両親と僕の3人で、後ろについてきているもう一つの方の馬車に、ミルアをはじめとした使用人たちが乗っている。



 しばらく馬車に揺られていると、魔力感知の範囲に大量の魔獣がこの先に集まっていることが確認できた。魔力が小さい存在も確認できるのでおそらく人が襲われているのだと考えられる。



「父上!この先で何者かが魔獣に襲われています!」



「なに?俺の魔力感知には反応がないが…。」



「いえ、本当です!5キロくらい先で、30体くらいの反応があります。」



「5キロだと!そんなに感知できるのか?まぁ、レオがそういうなら私兵の一部を向かわせよう。」



「それでは間に合いません!僕がいきます!」



 それだけ言うと僕は父上の返答も聞かずに馬車の外へ飛び出した。もう魔力感知に反応しなくなった者がいたので急がなければ。

 僕は全力で身体強化の魔法をかけ、さらに付与魔法を使って体に雷を纏った。電気信号を筋肉に伝えることでより速く動けるのではと、考えての行動だった。

 その状態で急いで現場に向かうとやはり30体近くのオークの群れに1台の馬車が襲われていた。オークの中には上位種と思われる個体も何体かいた。



「加勢します!」



 僕は戦っている兵士たちにそう言うと、そのままの勢いで短剣を抜き、通常のオークの首を切り裂いた。

 いきなり声がしたと思ったら、たくさんのオークが一斉に首を切られ、気が付いたら目の前に子供がいた。という状況に兵士たちが混乱しているがそんなのお構いなしに僕は残りの上位種に向かって魔法を放つ。



『サンダーボルト付与エンチャントウィンドカッター』



 雷を纏った風の刃が上位種の首を跳ね飛ばした。



「な、何者だ!」



 振り返ると、負傷して動けない兵士や、事切れてしまっている兵士以外の全員から僕は剣を向けられていた。隊長だと思われる人は深い傷を負いながらも歯を食いしばりながらこちらに剣を向けていた。

 このまま放置していたら死んでしまうようなケガの人もいたので光属性の回復魔法を唱える。



『エリアハイヒール』



「「「「「き、傷が……」」」」」



 今にも死にそうだった人が全快したのを見て一安心する。まだ、剣は向けられているが。どうやって説明しようかと、思っていると壊れかけの馬車の中から怒声が聞こえてきた。



「なにをしている!命の恩人にむかって剣を向けるとは!この無礼者が!」



 馬車から出てきたのは白髪で身長が高く、顔の整った30歳後半くらいの男性だった。



「し、しかし何者かもわからぬゆえ、ウォーレン公爵に万が一のことがあっては…」



 どうやら白髪の男性は公爵様らしい。



「もし、私に危害を加えようとする御方なら、オークに襲われ、放っておいても死にそうなところを助けるか?死地に飛び込むようなものだぞ!」



「公爵様、私が名乗るのが遅れてしまったゆえに、兵士たちは警戒したのです。ですのであまりお怒りにならないでください。申し遅れました、私はラルフ・コロソフが三男、レオナルド・コロソフです。」



「おぉ、ラルフの子だったのか。どおりでまだ小さいのに実力があるわけだ。私はウォーレン・ミラーだ。私たちを助けてくれたことに加え、兵士たちを治してくれてありがとう。ところで、レオナルド君なんでこんなところに一人で?」



「魔力感知で襲われているのがわかったので馬車を降りて駆け付けました。一番速く移動できるのが私だったので。」



「その年でラルフの速さを超えるか、先ほどの戦いを見てなければ信じられないが、今は納得がいくな。して、近くにはラルフが来ているのか。」



 すると1台の馬車がこちらに向かってきた。その馬車から父上が降りてきた。



______________________________

【あとがき】

ここまで読んで下さりありがとうございます。

長くなりそうなので2つに分けたいと思います。

次回は少し短いかもです。

これからも読んで下さると幸いです。

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