(二)-9

 しばらく歩くと、夜目に慣れてきた。木がどこに生えているかについては判別がつくようになった。

 このまま進んで川に出て、それを渡ればアディレバイジェンだ。目的地はそう遠くない。息を切らしながらもお互い励まし合いながら歩いて行った。

 すると先の方で、悲鳴が聞こえた。声の主は僕の一〇メートル先を歩いていた、カティア・イラクリの声だった。僕は声の主であるカヘティ国立大学の学生の彼女に近づいた。彼女は立ち止まっていた。

 僕は暗闇の中の彼女の顔を見た。彼女の目は目の前にそびえ立つ木の根元を見つめていた。


(続く)

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