(三)-4
僕は思わず大声を上げた。次の瞬間、人影が持つ刃渡りは三〇センチはあろうかという大きな軍用ナイフが、僕に振り下ろされてきた。
僕は横へ転がって避けようと思った。しかし避けると、下にいる妹に当たる。瞬時にそう判断して、手で相手の腕を受け流そうとした。
その間はわずか一秒にもみたない程の刹那の時間であった。瞬間的な判断ではあったものの、振り下ろされたナイフを止めるには時間が長すぎた。ナイフは僕の左肩に突き刺さった。
すんでの所で体をよじることができたため、僕の心臓をめがけていたナイフの切っ先は肩から僕の体の中に入った。
僕はとっさに「早く逃げろ」と大声を上げた。驚いて腰を抜かしているのか、妹は動くことができないでいた。
「早く! 急げ!」
僕はもう一度叫び、体を転がして妹の上からどいた。そのときに人影が持っていたナイフが抜けた。妹は何とか立ち上がり、振り返って走り出した。
(続く)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます