18話 レェーブ商会
「いらっしゃーい、ウチがレェーブ商会で代表やらしてもろうてるリサ言いますんでよろしゅう」
美しいライムグリーンの長髪をなびかせる女性はこってこての関西弁で握手を求めてきた。
もちろん断るわけもなく握手に応じる。
「アイヴィロ商会会長のオリヴィアと申します。本日は急な訪問に対応していただき、ありがとうございます」
「なんや、かたいなぁ、そない畏まられても困ってまうわ」
フレンドリーな態度で接してくるからといってこちらもフレンドリーに行ってはいけない。
これは罠、かといってこのままでは信頼を得ることはできない。
適切な距離感が大事なのだ。
「リサ様はお客様でもありますから、私どもの商会を贔屓いただきありがとうございます」
私はライムグリーンの髪を見ながら笑みを浮かべる。
髪を見てすぐにアイヴィロ商会の商品を使っていると分かった。
それも髪の毛の艶から結構な期間使用しているはずだ。
「やっぱ分かるかぁ、あれの効果は凄いわな」
そう言ってリサは髪の毛を手で解く仕草して続ける。
「ところで今日はどないな用事やろか?」
「こういうことを考えています……」
私は今思い描いている構想を誠心誠意伝えた。
「なるほどな、その発想力には恐れ行ったわ」
リサは額にポンと手を当てて思案する。
少しの沈黙の後にリサが口を開く。
「そんな大それたもん、実現できるわけないやろ」
「しかし……」
「って、普通やったらいうわな、商人であり王族やからこそ実現出来るかもしれへんってことやな、ウチはオモロイと思うで」
「それでは協力していただけるということでしょうか?」
「そりゃあ、アイヴィロ商会の商品にはお世話になっとるし、飛ぶ鳥を落とすオリヴィアはんに恩を売っとくのも悪ないと思うんやけど、かまへんかまへんとは問屋がおろしてくれへんのよな」
リサさんは乗り気でも規模が規模だけに議会に話を出す必要があり、そのときに過半数以上の議長の票が必要になる。
つまり、残り二人以上を説得してこいとのことだ。
次の議会は一ヶ月後、そしてそれを逃すと繁忙期に入ってしまい、かなり先まで待たなくてはいけなくなる。
「まぁ、こんな大それたことしようゆうんやから残り二人の議長くらいは説得してもらわんとな、せやけど、あの狸どもを落とすんは骨が折れるさかい気張るんやで、かっかっかっ」
リサさんは笑いながら私の背中を叩いて、一応は応援をしてくれている。
「必ず、いい報告をするので待っていてください」
「そうさせてもらうわ、ほなっ」
リサさんとの話を終えて帰路に着く。
なんとか希望を残して明日を迎えれる。
やることは山ほどあるが、泣き言を吐いている暇はない。
「クレア、明日はエウロパ鍛治商会にもう一度行きたいと思うから、手筈を任せてもいいかしら」
「畏まりました」
書類と睨めっこしていると声がかけられる。
「さぁさぁ、食事の準備ができましたよ」
「もうそんな時間でしたか、ではみんなでいただきましょう」
ガーデイフさんが宿屋の主人と交渉して料理をさせてもらったようだ。
ガーデイフさんの料理は活力の源になるのでありがたい。
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