7話 王族
「ルクシア様、この方が例の方ですのよね」
「エルン、ここでその話はしちゃダメだよ」
ルクシア様とエルン様は本日社交界デビューとなる15歳。
どちらもまだまだ幼く、愛らしい顔をしている。
私は両親が挨拶をしているところへと呼び出しをされて、割と大きめなひそひそ声をばっちりと聞かされている。
私が呼び出されたことで周りには聞き耳を立てている野次馬がそれとなく集まってきている。
「オーブリー男爵、そなたの領地でとある商会が大陸中に名を轟かせるほど活躍していると噂を聞いた」
「はい、その通りでございます」
「実はエルンもその商会の商品の虜になっていて、ここだけの話お母様もそうなんだよ」
ルクシア様のお母様と言うと王妃様のことだ。
野次馬の熱が上がる。
王妃が気に入ってるなんていえばどれだけの影響力があるか計り知れない。
さらに王族や貴族は一夫多妻が基本なのだが、国王は王妃としか契りを結んでいないほどに愛が深い。
「これこれルクシア、ひそひそ声が大きいんではないかな」
国王陛下っ!?
王国の民ならば誰もが知る存在。
貴族たちの顔も強張っているが、一番はこんな状況で登場された私の方が緊張するに決まっている。
国王陛下は職務が忙しく出席できないと聞いていたが……
これは私にとって追い風である。
国王陛下を前にして私を糾弾しようとするようなバカな貴族はこの場にはいない。
「お父上、今日は来られないと聞いていたのですが……」
少し照れ臭そうにルクシア様が答える。
「そんなことあるはずがないでしょ。ルクシアちゃんの晴れの舞台を見ないなんて私が許さないわ」
王妃様でなければ国王陛下に向かってこの発言は即刻死刑になってもおかしくない。
「まぁ、そういうことだ息子よ……」
尻には敷かれるなよとの忠告混じりの目を向けていた。
「エルンちゃんなら安心してルクシアちゃんを任せられるわね」
「はい、ご期待に添えるように精進いたします」
エルン様と王妃様の視線を受けてルクシア様は苦笑いをするしかなかった。
国王陛下からの救援はなかったようだ。
「ところで久しぶりだなオーブリー男爵よ」
「陛下におかれましては、お元気そうで何よりでございます」
「そなたの領地にとある商会があると思うが、実は……」
「お父上、その話は先ほどしてしまいました」
「そうか、ならば話が早い。オーブリー領もかなり発展したと言えるし、近いうちに叙勲を与えようと思う」
「ありがたき幸せ」
まさかこのような場で叙勲の話を聞かされるとは……
さらに、その話を受けても冷静にしている我が両親を誇りに思う。
「国王陛下、よろしいでしょうか!!」
どこのバカが陛下に簡単に話しかけるのかと思ったらアランだった。
王国騎士の護衛が腰に差した剣に手をかける。
「よいよい、このような祝いの場で血生臭いのはいらん」
陛下が騎士を止めた。
「貴殿はグリフィス家のものじゃったな。どうかしたのかね?」
「実は私の婚約者が例の商会の王都支店の支部長をしていまして、よければまだ世に出ていない新作などお譲りできます」
アランは突如売り込みを始めてしまった。
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