8話 王妃ラクーティア
「ほう、新作とな?」
「その通りです。まだ世には出ていないものらしいですが、陛下の望みを叶えるのも貴族の務めというものです」
「そうか、そうか、ラクーティアも見てみるとどうだ? 新作らしいぞ」
「ですが、新作なんて聞いていないですね、本当にアイヴィロ商会の商品なのですか」
王妃様は疑っているけれど、あれはたしかにアイヴィロ商会がまだ世に出していないもの。
どうして彼女が持っているのかは謎だが、非常にまずい。
「もちろんでございます王妃様。そうだな、アンネリーネ」
「アンネリーネと申します。アラン様の仰るとおりです。私は王都で支部長をやっていますので内部に詳しいのです。さらにアイヴィロ商会のことでお伝えしなければいけないことがあります」
「まぁ、待て」
「陛下」
護衛が陛下に耳打ちをする。
「うむ、ラクーティアよ、どうやら王都支店の支部長というのは本当のようだぞ」
「さようですか……」
「よろしければあちらでお話をいたしませんか。実はグリフィス男爵の娘と私は元婚約者でして、少し気まづいので」
気まづそうな演技をするアランを見ていると怒りが込み上げてくる。
「そうだったのか、ここで少し目を惹きすぎているのもあれか、では部屋を……」
「なぜ、婚約を無効にされたのかお聞きしても?」
王妃様がアランに問いかける。
「恥ずかしい話、このオリヴィアと私の騎士をしていた男に不貞を働かれまして……」
「騎士のお名前は何というのかしら?」
「ヴィクターですが何か気になることでもありますか王妃様」
「ヴィクターだと……」
「まぁまぁあなた、そんなことは置いておいて新商品の話をしたいのですけど」
「いや、しかし……」
「いいですから」
陛下も王妃様もヴィクターを知っているのか、反応が不自然だ。
どうして一介の騎士の名を知っているのかは、私の計り知ることではないわね。
ある程度の予想はついているけど、とりあえずはこの流れを見守るしかない。
「そうそう、あなたはあちらでオーブリー夫妻と話してきなさいな。オリヴィアちゃんを借りてもいいわよね男爵?」
「もちろんでございます」
「いや、しかし……」
「さぁ、どうぞおいき下さい」
「あぁ……」
よっ、弱すぎますよ陛下。
どれだけ王妃様の尻に敷かれているんですか。
陛下と両親が別室へと行った後、なんとも言えない空気を切り裂くようにルクシア様が口を開いてくださった。
「母上、私も事の顛末が気になるのですが、同席してもよろしいですか」
「あなたの晴れ舞台なのにいいの?」
「ここにいるものも多少は許してくださるでしょう」
ルクシア様は取り囲む貴族を一瞥する。
反論など誰からも出るわけもなく、その場で話が続けられることになった。
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