婚約破棄されましたが、あなたのあてにしている商会の会長は私ですよ！！

4話 情報収集

「あらあら、随分と面白いことになっているようね」

「ご主人様にあだなす不届きものには制裁を与えなければいけません」

　双子の姉、イングリットは冷静に集めた情報を私に伝えてくれる。

　その目は調査対象をゴミのように見下していた。

「ぼくが首を持ってきましょうか？」

　双子の弟、ビルギットはさも当然のように苛烈な言葉を口にする。

「何度も言っているけど、あなた達には後ろ暗いことから退いて欲しいと思っているわ。学校に行って友達を作って元気いっぱいに遊ぶ、そんな暮らしをして欲しい」

「ですが、ぼくたちがご主人様に受けた恩を返すにはこんなことぐらいしか思いつかないです」

「ぼくもこれ以外は何もできないです……」

「可能性を広げてくれるところが学校なのよ。いずれ必ず行ってもらいますからね」

「それがご主人様の命令なら……」

「オリヴィア様の命令に従います」

　双子と私の会話を驚いた様子もなくヴィクターは静かに聞いている。

　特に詳細を話したわけでもなあのに空気を読んでくれるというのはなんともありがたいわね。

　いずれは話していかなければいけない。

　ふぅ、アンネリーネ・ホルン、か……

　アイヴィロ商会王都支部の支部長にしてアランの次の婚約相手。

　次のと言うと語弊があるかもしれないわね。

　ヴィクター、イングリット、ブリギットに調査してもらった結果では二人は私と婚約する前からお付き合いがあったそうな。

　アランがアイヴィロ商会について妙に詳しかったのも彼女の入れ知恵でしょうね。

　私を嵌める作戦を言い出したのが彼女なのか、アランなのか、はたまた二人で仲睦まじく考えたのかは知らないけど、でもアランもアンネリーネも知らない、私がアイヴィロ商会の会長だということを。

　まぁ、だからといって簡単に復讐ができるほど貴族は甘くない。

　それが伯爵家ともなると権力は相当なものになる。

　今の私が動いても不貞を働いた男爵家の娘という噂が走ってしまい潰される可能性が高い。

　慎重に動かなければいけない。

　どういうプランで行くか考えていると扉が叩かれる。

「お手紙でーす」

「そんな……最悪のタイミングね」

　ポツリと漏れてしまう。

「行くのはお辞めになられた方がいいのでは……」

　ヴィクターと私の目線の先にあるのは届けられた一通の手紙。

　一ヶ月後に開かれる社交会への招待だ。

「ダメよ、今回だけは断れないわ」

「どうしてですか？」

　ビルギットが不思議そうに尋ねてくる。

「第二王子の披露の場でもあるからよ」

　貴族は15歳になれば貴族社会へとデビューするのが王国での通例だ。

　それは王族でも変わらない。

　今回はタイミングが悪いことに第二王子のデビューと重なっていて断ることができない。

　部屋に重い空気が漂う。

　表舞台へと上がってしまうと恰好の的になることが分かっているからだ。

「仕方ないわ。どれだけ準備ができるか分からないけど、やれるだけはやってみましょう。みんな、力を貸してね」

「もちろんです」

「仰せのままに」

「分かりました」

　3人は快く返事をしてくれた。

　何とも頼りになる仲間たちだ。