5話 幹部の集い
「今日は集まってくれてありがとう」
部屋には私を含めて6人の男女が円卓を囲うように座っている。
「ではこれより、アイヴィロ商会幹部会を始めます」
進行を務めてくれるのは私の代わりに商会の表の顔として働いてくれているクレアだ。
「売り上げは右肩上がりで多くの街より支店を構えていただきたいとの嘆息状が届いています」
クレアが議題を掲示した。
現在、アイヴィロ商会は三店舗ある。
オーブリー領の本店、王都、そして商人の街ツェゲロに店を構えている。
「新作商品の開発は順調に進んでるよ、後は少し希少な素材が欲しいんだけど」
ヴィネッサは開発部門のトップで日夜研究に明け暮れている。
「リストに軽く目を通したが、概ね問題なく揃えられそうだぜ。費用は相手さんとの交渉次第ってとこだな」
セオドアは資材部門のトップとして商会に必要な素材や道具を見つけて揃えてくれる。
「これぐらいなら問題ないですよ」
経理部門トップのウェンデルが各素材に出せる費用をその場で計算してセオドアに渡した。
「これ以下には抑えれるだろうから問題なさそうだ」
「しかし、これ以上新作を作られてもラインを作るのに時間がかかるよ」
製造部門トップのジュダは苦笑いする。
「やはり人材がネックなところね」
飛ぶ鳥を落とす勢いのアイヴィロ商会の弱点はその尋常でない勢いにある。
急速に成長したことにより人材の確保が追いついていない。
簡単に雇えばいいというわけでもない。
信頼できる人間の選出、さらには育成まで必要になる。
今は育成する人すら足りていない。
「申し訳ありません」
「いえ、決してクレアのせいではないわ。私もまさか、ここまで伸びるとは思わなかったもの。みんなにも休みなく働いてもらってるというのに私的なことで迷惑までかけてごめんなさい」
「とんでもありません。お嬢様に非などあるわけがありませんよ」
「でもなぁ、嬢ちゃんの脇が甘かったってのも事実ではあるだろう」
「あなたはお嬢様に落ち度があったとでも……騙される方が悪いとでも言うんですか?」
「それをお前が声高々に言うかね」
「お二人共、今は会議の途中なのですからお戯れは後にしてくれますか」
ヴィネッサとセオドアの争いをクレアが制する。
ここに集まってくれている5人は性格が大きく異なる。
言い争いになるとも多々あるのだけど、だからこそ商会にとっていい起爆剤にもなってくれている。
何よりもみんなが私を思ってくれていることがひしひしと伝わってくる。
本当にみんなには迷惑をかけてしまっている。
「人材については例の計画の第一段階がもう少しかかりそうだから、前に話したあれで簡易的に対応しようと思っているのだけど」
「さすがはオリヴィア様ですね。目の付け所が違うというか……まぁ、私どもをこんな役回りに置いていただけるというのも普通ではないのですが」
そう、実はここにいるみんなは孤児であったり、浮浪者だったなど少し経歴が変わっている人が集まっている。
私自身は気にしたことないのだけど、本人たちは拾ってくれた恩を返すために休むなどあり得ないと言っている。
ぜひにも休みは取って欲しい。
この日の会議で人材不足とアランたちに対しての私の思いなどについて話し合った。
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