16話 商国リロイラ
商国リロイラはその名に恥じないだけの経済力と商いをするに最適な政策がとられている。
売り上げの高いいくつかの商会によって国の舵取りがされているからだ。
この国でも貴族や王族というものが存在はするもののそれは形だけでさして権力はない。
この国での正義は金だ。
金こそが全てのパラメータになっている。
辺境伯が王国を離れた場合、商国に身を置くことになる。
これだけでも王国として問題視しなければいけない事案なのだ。
辺境伯がパイプ役となって商国と上手く付き合っている状態。
そのパイプ役がいなくなれば商国に辺境の地一帯が食い物にされる可能性がある。
しかも辺境伯が領民にとっての救世主であり信頼され過ぎているせいで話がさらに大きくなっている。
辺境伯自身は自分が国を移るだけで、王国や貴族に復讐をするつもりはないと言っていたし、事実なのだろう。
しかし、本人が被害を与えるつもりがなくても辺境伯が国を移るとなった時に領民は何を思うか。
ただでさえあの地に住む人間は特権階級から虐げられてきた者が多く、辺境伯が王国から追い出されたなどと思えばついていく人間もいるはずだ。
さらに王国への復讐を決意する者も現れるかもしれない。
商国と反乱分子が手を組み合わせでもしたらそれを誰が抑えるというのだろうか。
王国の北側は壊滅してしまう。
しかも、反対の西側では帝国と冷戦状態で一触即発のありさま。
北側でもたついていれば、帝国は容赦なく攻めてくるだろう。
あれっ、こう考えると王国って詰んでないかな……
それもこれも貴族が好き勝手にしているせいだ。
貴族というものは能力に限らず血縁で受け継がれるもので、優秀な貴族が少なすぎる。
そりゃそうだろう。
幼い頃から甘やかされて育てられれば育つものも育たない。
全部が全部というわけではない。
だが、特権階級を振りかざす無能な貴族が多すぎる。
貴族の中でも歴史と力のある家ですらそんな状態で、王族としても強くは言えない始末。
辺境伯が王国を捨てたくなる気持ちも大いに分かってしまう。
でも国が崩れて真っ先に被害が出るのは庶民だ。
とりわけ、子どもが一番の被害者となる。
私はそれを断じて許さない。
辺境伯には王国を捨ててもらっては困るのだ。
どうするかと言えば、辺境伯に王国を捨てる利と捨てなかった場合の利を比べてもらって、王国に残った方がいいなと思わせるしかない。
そのために、商国でも大きな権力を持っている方と話をしなければいけない。
商国は商人の国。
そんな国で歴戦の商人を相手に結果を出して、国の舵取りに関わっている商会の会長ともなればとんだ食わせ者ばかりになる。
それでもやるしかないのだ。
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