25話 戦争準備
「ロージア様、間者の者から帝国兵がアルスター領に侵攻を開始すると報告がありました」
「そうか、戦闘開始予定はいつになる?」
「一週間後とのことです」
「短すぎるな、王宮への報告と援軍要請を」
ロージア・アルスター辺境伯の屋敷では人が入れ替わり立ち替わり走り回っていた。
戦争の準備をたったの一週間で行わなければいけない。
「なぜこんなにも報告が遅かった?」
「帝国が出立まで異様に早い速度で準備をしたとか……」
「なんの前触れもなくか? そんなことはありえないだろう」
ロージアはアルスター領経営陣と緊急会議を行っていた。
張り詰めた空気の中で対応について話していると、扉が強く開かれ一人の青年が汗だくで入ってきた。
「今は緊急会議中じゃぞ、何を……」
「たっ、大変です!! 攻めてくる帝国兵の数、およそ5万との報告がありました」
「なっ、なんじゃと!?」
「最初の報告の5倍ではないか」
アルスター領は他国と隣接しており、防衛の準備はされている。
1万の軍勢なら戦闘になっても時間を稼ぎつつ、周辺の領土からの援軍と王宮からの増援を待っていれば追い返すことは可能だ。
しかし、今回は一週間と短い時間しか用意されていない。
援軍要請をしても持ち堪えれない可能性すらあった。
ただでさえ慌ただしくしている中で相手の数が5倍になるのは死刑宣告にも等しい。
「お前たち落ち着け、まずは住民を避難させて、各領主へ会議行う旨の連絡を送れ」
どれだけの兵が出せるかの確認と情報共有、住民受け入れの話もしなければいけない。
「3日後に例の場所でだ。それとリロイラにも遣いを送ろう」
「王宮の許可なく他国への援軍要請などできるわけがない」
「援軍要請ではなく情報の共有をするだけだ。アルスター領とリロイラは近い。戦火に巻き込まれるかもと話をすればいい、エセルコットにこの手紙を届けてくれ」
「お待ちください。リロイラに借りを作っては喰いものにされるかもしれません」
「このままではアルスター領が帝国に喰われる」
「しかし……」
「リロイラは普通の国とは違う。なんとかなるはずだ。俺はもう例の場所に向かう。後のことは任せたぞスイフト」
「畏まりました」
スイフトは先代の時代からアルスター家に仕えている。
勝手は分かったものだ。
「ハルク、スイフトのサポートを頼んだぞ」
「はい、任せてください」
ハルクは若いながらもその実力で今の地位まで上り詰めた叩き上げ。
混沌とした今の状況でも冷静な判断が下せる。
リロイラは速やかに戦争態勢に入り、住民は避難の準備を衛兵は戦争に向けての準備を。
懸念点はいくつもあってもそれを精査する余裕はない。
とにかく最悪の状況にならないように手を打っていくしかなかった。
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