21話 リロイラと王国

 子どもたちのことは一旦保留となって、私がリロイラにいる間はカンナやクレア、手の空いている人に見てもらうことになった。

 私は今後の商談に向けて集中しないといけない。

 今回の議会で承認を得られればリロイラと王国の関係は親密になり子どもたちの受け入れもできるようになるはずだ。


 リロイラの不動産王と呼ばれるアルジェルは意外にも若いイケメン青年だった。

 イケメンといってもヴィクターの足元にも及ばないけど。


「僕の顔に何かついてますか?」

「いえ、申し訳ありません。お返事はどうでしょうか?」

「僕としては問題ないですよ」

「ありがとうございます」

 アルジェルとの商談はスムーズに終えることができた。


 続くエセルコットは議長の中で最年長で最も長く議長の座についている。

 しかも、人材派遣というものすごく難しいジャンルで成功している。

 強面の表情からは何を考えているか読み取れない。


「オリヴィア嬢は商人であり、王族になったのだったな」

「左様です。縁に恵まれまして……」

「そうか、これは商人同士の商談というよりも国同士の会談と捉えることもできるな」

「その認識で問題ないかと……私は国王より今回の件の一任を受けておりますので」

「いいだろう、失敗はするなよ」

「ありがとうございます」


 ふぅ、緊張した……

 アルジェルからのエセルコットは落差がありすぎるよ。

 でも最後の一人は残念だったな。

 人数的にはこれで過半数が取れたからいいんだけど。

 食材卸をしているジェフリーは議会のギリギリまで遠征が延びているらしく、会うことができなかった。


 それにしてもヴィクターは何をしているかしら。

 日本にいた頃はどんなに離れていても連絡を取ることができたのに、こっちの世界でそんな科学技術はない。

 主なやりとりは手紙になっしまう。


 こっちに来て初めて届いたヴィクターからの手紙には変わりなくやっていると書いてあった。

 後は愛のメッセージとか、とか、とか……

 これだけでやる気が満ち溢れてくる。

 ヴィクターも頑張ってるんだ。

 変わりなくやってるなんて書いてるってことは難問にぶち当たっているはずだ。

 本当に変わりなくやってるなら、もっと事細かに詳細を書いてくれるはず。


「ヴィクター……」

 無茶なことをしていなければいいけど。


 コンコン……


「失礼します」

 クレアがやってきた。


「子どもたちの様子はどうだったかしら」

「お嬢様が拾われた子なら元気にしています。それと言われた通りにお調べしたんですが、結構な捨て子がいますね」

「やはりそうなのね」

「後はどうにも裏で動いている組織がありそうですが、詳しくはまだ……イングリットとビルギットならもう少し上手くやれるんでしょうが」

「それは仕方ないは、クレアにはいつも迷惑をかけてごめんなさいね」

「いえ、お嬢様がいなければ私の命はここにはありませんでしたから」

「あなたにもいい殿方がいればいいんですけど……」


「お嬢様、明日は議会です。そろそろお休みになられてください」

 ヴィクターとの惚気を聞かせていると、さすがに諌められてしまった。

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