22話 議会開幕

「粗方の収支報告、現助報告はこんなもんでいいだろう、あの件を除いて他に発議がいるものもいないな」

 エセルコットは議会に参加しているメンバーに問いかける。

 議会には議長の5人以外にもいくつかの商会から議員として参加が許されている。

 今回の議会は30名ほどで進められていた。


「異論がなければ進めさせてもらう、連れてきてくれ」

 エセルコットの秘書が部屋を出ていく。

 議員からすれば何があるのかは初耳で今までの議会でこんなことはなかった。


「誰だ?」

「さぁ、見たことないな」

「最近街をうろうろしてたような気がするな」

「新たな議員か?」

 秘書の連れてきたオリヴィアについて顔を知るものはいないため、様々な憶測が飛び交う。


「静粛に」

 エセルコットの声で一気に静まる。


「議会に部外者が参加するのは初めてになるが、各議長の承認は得ている。ここにいる女性はオリヴィア嬢、彼女から発議があるため各々聞くように、では、オリヴィア嬢」

「初めまして、オリヴィア・アセルセアと申します。今回は発議の機会をいただきありがとうございます」


「アセルセア!?」

「王国の王族か?」

「なぜ議会に……」

「アイヴィロ商会の会長であり王族に入ったという、あの……」

 議員も顔は知らずともその名は知っていた。


「粛に!!」

 エセルコットから話を進めろと目で合図してくる。


「今回、私が提案するのは商国リロイラと王国アセルセアとの親交についてです。現在、リロイラとアセルセアは敵対しているわけでもなく、貿易をしているわけですが、そこをより強固にしたいと思っています」

 まず、敵対はありえない。

 リロイラとの関係が良くなれば、帝国を相手にしている間、背後の影に怯える必要がなくなる。

 さらに、もし帝国との争いがあっても物的支援まで考慮に入れることができる。

 割高で購入すればリロイラとしても損はないはずだ。


「アセルセアとリロイラでの貿易は小規模なものです」

「当然だ、大規模にしたくても難しいからな」

 議員の一人がそう呟く。


「なぜでしょうか?」

「流通経路があまりにも厳しいからだ。多少のものなら運べるが、大量となると厳しい上に、盗賊の餌食になる確率が高くなる」

「その通りです。ですのでアセルセアが大規模工事を行い、流通経路を整備します。さらに治安の維持にも努めることを約束します」


 議員たちがザワザワとしだす。

 しかし、手応えとしては悪くない感触だ。


「オリヴィア嬢、以上でよろしいかな」

「はい、ありがとうございました。ぜひ承認をよろしくお願いします」

「では、こちらで評議するためオリヴィア嬢は一度ご退出を」

 議題の採決は議長5人の多数決で決まる。

 事前に過半数からの承認はもらっているが、この評議で考えが変わることだってあり得る。

 やれることはやった。

 後は結果を待つのみだ。

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