婚約破棄されましたが、あなたのあてにしている商会の会長は私ですよ!!

セフェル

1話 婚約

「オーブリー家長女、オリヴィアと申します。本日はよろしくお願いいたします」

「グリフィス家のアランだ。今日はよろしく頼む」

 王国の中でも一定の権力を持つ伯爵家の彼と貧乏貴族だとバカにされる男爵家の私ではまるで格が違う。


 今回は親同士が学生時代の親友らしくお見合いの話に至った。

 彼は最近まで海外留学にいっていて、豊富な知識、堪能な語学力、マルチな才能を持ったお方だ。


「アラン様は海外に行っていたのに王都の情報にも精通されているのですね」

「もちろんだ、特に『アイヴィロ商会』の独創的な商品の数々は遠く離れた国にも轟いているからね。 確かオーブリー領に本店があるんだろ」

「本当に物知りでいらっしゃいますね、その通りです」

 アラン様は笑顔が素敵で話も面白い。

 しかし、楽しい時間はあっという間に終わってしまう。


 アラン様が手を2回叩くと、扉が開いてお見合い仲人が部屋に入ってくる。

「よろしく頼む」

「あっ……よろしくお願いします」

「お二人に幸せを」

 こうして仲人を証人として婚約の契りが交わされるに至る。


 春を感じ、ただただ幸せな日々を過ごしていたが、最近はアラン様とあまりお会いできない日が続いていた。

「ねえ、アラン様には今日もお会いできないの?」

 今、話しかけた騎士風の青年は私の世話係兼警護をしてくれているヴィクターだ。

「申し訳ありませんが、私には何もお答えできることがありません」

「そうね、仕方ないわ。仕事を頑張るとしましょう」

 寂しさを紛らわせるために仕事に打ち込むことにして、机の上に乱雑に積まれた大量の書類に目を通す。


「オリヴィア様、王都のこの数字は少し違和感を感じます」

「あら、たしかにそうね。どうなっているのかしら? 調べておくわ、ありがとう」

 ヴィクターは剣術の腕前だけでなく事務処理も一流だ。


「そろそろお休みください。少し働きすぎですよ」

「ええ、きりのいいところで休憩にするわ」

 王都でアラン様が女性と歩いていると噂もあるがそんな訳がないと、自分に言い聞かせる。

 たしかに幸せはそこにあるのだから、多少会えないくらいで文句を言っていてはだめだわ。


 そう思っていたのに……

 信頼が崩されたのは次の日だった。

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