第13話邂逅、そして会敵の朝✗13
私は頭と心を完璧に切り離し、意識的にきりっとした表情をつくり作業を開始した。
赤を基調とした色鮮やかなスーツに身を包んだアーサを、その肉体美ともどもためつすがめつ点検する。
スーツの色が各自で異なっていて、なおかつ派手な色調を主としているのは戦闘中に仲間が誰かを速やかに判別するためだ。
そして万が一何かがあった際、一秒でも速く反応し対処するためでもある。
しかしそんな実際的で実用的な理由に関係なく、この燃えるような赤色はアーサにとてもよく似合っていた。
そんな姿を、何ら恥じらう様子もなくアーサは堂々と晒していた。
おそらくはその理由は、私のことを信じてくれているから。
わざわざ両手を広げてまで
よし、これで罪悪感とはさよならだ。
自分に課せられた仕事を全うし、欲望を満足させることに躊躇はなくなった。
そしてもう一度じっくりと、頭のてっぺんから足の先までアーサの肉体を観察する。
目の前にあるアーサの鍛えられた肉体を、体にピッタリと張り付いたスーツが浮き彫りにしているのだから。
短く切られた髪から覗く、健康的なうなじ。
そこから視線を下へと辿っていくと、なだらかな鎖骨のくぼみのさしかかる。
その鎖骨の流れに従って視線を巡らせると、小ぶりだがかたちの整ったアーサの双丘を拝むことが出来る。
そこには柔らかな頂きはツンと尖り、しっかりと存在を主張していた。
その双丘から続く美しいくびれのラインと、薄っすらと浮かぶ六等分にされた腹筋。
まるで少年のように柔軟な筋肉質の線をみせながらも、女性特有の柔らかさとふくよかさを併せ持つ体。
邪魔で余分な贅肉など一切ない、しなやかで長い手足。
そしてその両足のつけ根に薄く透ける淡い茂みと、その奥に隠された一筋の・・・・・・・・・。
ああ! まさにこれこそハレルーヤ!
実によく、
私はこの極上の時間を、心が逝くまでしっかりと堪能した。
無論、その間にも自分の仕事はしっかりとこなしている。
私の頭と手は自動的かつ事務的に、点検項目にチェックをしていく。
これは私の心とは完全に隔離されたお仕事モードなので、堅実度百%だ。
間違いなく間違いなどあってはらないのだから。
そんなことになったら、もう二度とこの素晴らしいアーサの肉体を見て興奮することができなくなる。
もうアーサと、メルと、ナナと、フォーと、ヴァルカと、みんなと語り合い笑い合うことができなくなる。
そんなことは、それだけは、絶対に嫌だった。
「ねえキルッチ、もう終わった?」
「ああ、目視での点検は終了した。
「そう、それならよかった。流石はうちの整備班だね」
「ああ、彼らには本当に頭が上がらないな」
アーサの言葉に頷いた私に向けて、すかさず二の矢が放たれる。
「キルッチの場合はー、それだじゃ済まないっしょー」
「どういうことだ?」
私は解っていながらとぼけた
「何言ってんのさー。この前の戦闘で調子に乗りすぎて、ユニットとスーツを壊したのは一体何処の誰でしたっけー?」
「ああ、そのどうしようのない底抜けの間抜けなら、紛れもなくこの私だ」
「うわぁー! このひと言い切ったー! 自分が悪いのに、自分が悪いことを堂々と言い切ったー!」
「事実は事実だからな。そこはもう曲げられない」
「そうじゃなくて! もうちょっとこう、申し訳なさそうというか・・・・・・・・・」
「整備班への謝罪なら既に済ませてある。みんな本当にいいひと達だ。ちゃんと受け容れてくれたよ」
菓子折りを持って謝罪に出向いたら、皆笑いながら許してくれた。
ただ両手の掌を上にして額を地面につける寸前のところで、
「そうなんだ。だったら、いいのかな。いや、やっぱりそういう問題じゃないんじゃないかな」
「挽回はするさ。
「ホントに~?」
「ああ、本当だとも。同じ失敗は二度としない」
「一度やらかしたひとの言うことなんて、二度と信用出来ませーん」
「それは、確かに痛いところを突かれたな」
私は言いながら電子ペーパーを畳み、制服のポケットにしまう。
「さて、次は
「だからいつでもいいってば。ちゃちゃっとやっちゃってよ」
「ああ、そうだな。大事なことだから、ねちゃねちゃっとやらないとな」
言いつつ私はくるりとターンし、アーサに向けて背中を見せる。
こればかりは見せられない。
いまの私が浮かべているであろう顔と、
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