第41話邂逅、そして会敵の朝✗41

「その件につきましては、いえ、あの、えっと。そうですね・・・・・・・・・何と言って申しましょうか・・・・・・・・・。そう! そうです! 仰るように、そのように隊長御自らの手を小官などに煩わせる訳には参りません。ですのでその御心だけ有り難く頂戴致したく存じます。ちなみに、勿論これはヴァルカ隊長との説教プレイを小官が固辞している訳ではありません。隊長がお呼びとあらば、小官は即参上仕ります。ですので小官は何時でも全裸待機、もとい準備万端整っておりますので、何処でもお声掛けください。世界を縮める男には及ばないにしても、光の速さなど五馬身ほどは引き千切って駆けつける所存です」

 ふぅ、とりあえずこれでよし。

 先ほどのヴァルカの言葉に対する返答としては、これが完璧、これで十全なはずだ。

 後半は何やら勢い余って言わなくてもいいことを口走ってしまったような気がするが、それは私の考えすぎだろう。

 きっとこのはりつめた空気による緊張感が、私にそう錯覚させているのだろう。

 どちらにせよ、気にするようなことではない。

 間違いなくさっきから最大音量で私の心に鳴り響き続けている警報は、気の所為にすぎないのだから。

 それにヴァルカなら、言葉が行き過ぎたとしても、笑って許してくれるだろう。

 上官や仲間を想う言葉として、好意的に解釈してくれることだろう。

 このとき私は、未だ気付いていなかった。

 自分が大いなる大間違いを侵してしまっていたことを。

 またしても、盛大にやらかしてしまったことに。

 どうしてひとは、同じ間違いを何度となく侵してしまうのだろうか。

 どれだけ自分を顧みて内省し、反省し自省してとしても。

 取り留めもなく、過ちをばかりを繰り返してしまうのだろうか。

 これは、私だけの問題ではない。

 人類の打ち勝つべき、人間の乗り越えるべき、終わりない命題テーゼのひとつであると、私はそう考える。

 思えば人類の歴史など、大局的に観察すればごくありふれたすごく単純なものでしかない。

 戦争、平和、革命の三拍子が環となって、これまでに延々と続いてきた。

 そしてこのままならこらからも、永遠に続いていくのだろう。

 この歴史上初めてとなる、が終わったあとも。

 ひとは誰かと争うために相手を求め、同じひとと戦い続けるのだろう。

 まさしく、終わりのない円舞曲エンドレスワルツのように。

 そう考えれば、私個人の問題など些末なことだ。

 どんな異能の力を持っていよと、所詮私もひとりの人間。

 人類という種を構成する極微の一部でしかないのだから。

 そんなことに、ヴァルカはいちいちこだわったりはしない

 こんなことで長々と、時間を使ったりしない

 故に、その考察から導き出される答えはひとつ。

 このお説教は、先ほどの私の言葉で終わるということ。

 じゃないと私の精神が保たない。

 精神的に死んでしまう。

 たとえこの先同じことを繰り返すことがあったとしても、今回だけはこれで終われる。

 私はそうして、高をくくっていた。

 それが、今回における私の最大の間違い。

 自分の思考が正しいと、根拠もなく依存したこと。

 ひとにはひとの考えがあるという、その当然に考えがいたらなかったこと。

 それがヴァルカの怒りを通り越し、呆れのひと言を引き出した。

「キルエリッチャ・ブレイブレド隊員。お前はまったく何時でも何処でも何処までも、

 心の底から絞り出されてような、本心からの冷厳な言葉。

 そのは私の脊椎に突き刺さり、ゾクリと体を震わせた。

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