第6話邂逅、そして会敵の朝✗6
「さ、むくにぃ。冷めちゃう前に一緒に食べよ」
そう言いながら屈託のない笑顔を浮かべ、我が愛しの妹・
たったいま、ひとの内臓、特に消化器官に甚大な損害を与えたことなどおくびにも出さない。
何故なら、そんなことは斗雅のなかでは最早終わった話。
我が愛しの妹は、絶対に過去を顧みたりはしないのだ。
そんなところが、また何とも言えず可愛らしく愛らしい。
そうして言われるがまま我が愛しの妹である斗雅に促され、俺は席に着いた。
自分の死を受け容れる殉教者とは、果たしてこんな心地なのだろうか。
心境と覚悟としては、腹よりも首を括るほうがより近い。
だが俺に、斗雅の手料理を食さないなどという選択肢は存在しない。
だからこそ、俺は何も言わずに漆黒の目玉焼きと対峙する。
ここまでまあ色々とあったような気がするが。
それなりに何だかんだとあったようだが。
様々なすったもんだがあったがその末に。
それでも何はともあれ、遂に俺はこうして地雷原の潜む食卓まで辿り着いたのだった。
そこに待っていたのが、まさかお前のような腹も
貴様の放つ威圧感、貴様の持つ存在圧は認めよう。
だが、生憎だったな。
貴様には責任も落ち度もないが、今回ばかりは相手が悪い。
そこらの有象無象が貴様を見たなら、二の足を踏んだ挙げ句逃げ足に走るのが道理だろうが。
いま貴様の目の前にいるのは、他の誰でもないこの俺だ。
貴様が俺に敗北した理由は極めて単純だ。
理由は、たったひとつだけだ。
貴様をつくったのが我が愛しの妹・斗雅であること。
ただ、それだけだ。
呪うなら、自分の出自だけを呪うがいい。
そしてそのまま、俺の胃のなかで栄養となって朽ち果てろ。
「どしたのむくにぃ? さっきからそんなにじっと熱い視線を、目玉焼きなんかに注いじゃって?」
小首を傾げながら、我が愛しの妹・斗雅が問い掛ける。
まさか目玉焼きと対話していたとは言えず、適当(適切に事に当たるの略)に我が愛しの妹の疑問に応える。
「いやなに。随分と
「でしょ~! 流石はむくにぃ、やっぱりわたしのお兄ちゃん。肝心要の大事なところはしっかりと見てるし解ってくれるね。そういうところ、大好きだよ。ちょっと恥ずかしいけど、この目玉焼きにはわたしの想いを込めて作ったんだよ。それにこれね~、火の通し方が絶妙に難しいんだ。でも今日のは自信作にして傑作だから、お腹いっぱい心逝くまで食べてくれると嬉しいな。だって、
「そうか。それはまた
俺は我が愛しの妹・斗雅の言葉に、心からの言葉を返す。
この物体を火加減のみで生み出したという事実に、驚愕と戦慄を覚えながら。
「じゃあ、そろそろ食べようか。いい加減冷たくなっちゃうよ。冷たいごはんは、美味しくないもんね」
「その見解には十全に同意だな」
そしてふたりで手を合わせ、「いただきます」と感謝の言葉を口にして、俺と斗雅の朝食は幕を開けたのだった
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