魔法の絆(2)
しかし勇者キャムクティの一撃は、竜の鱗に僅かな傷を付けるのみで弾かれてしまう。
「く、硬い」
やはり今の自分たちでは荷が重い。
「キャムクティ、上っ!」
その瞬間、魔法使いレイラの悲痛な叫びと共に、勇者キャムクティはドラゴンの尻尾の痛烈な一撃に吹き飛ばされた。
咄嗟に盾で防ぎはしたが、勇者キャムクティは石壁に叩きつけられてうずくまってしまう。
間髪入れずに勇者キャムクティに向けて、ドラゴンの口内に真っ赤な閃光が収縮し始めた。火炎のブレスの兆候である。
「だ、駄目、やめてーーっ!」
魔法使いレイラが悲鳴と共に駆け出すが、とても間に合う距離ではない。
そしてそのとき、勇者キャムクティを庇うように立ちはだかったのは、羊のメルルであった。
「メ…ルル、逃げ…ろ」
勇者キャムクティが呻くような声で呟く。
『キャムクティ、今までありがとう』
そのとき突然、羊のメルルの姿が光に包まれる。
『故郷で産まれてからここまで、一緒に冒険出来て本当に楽しかった』
「メル…ル?」
眩い光が辺り一面を覆い尽くし、魔法使いのレイラもドラゴンも、まるで時が止まったかのように微動だにしない。
『本当は食べられるところをキミが助け出してくれたんだ。やっと恩返しが出来る』
「だ、ダメだ…メルル」
何かを察したように勇者キャムクティは、慌てて羊のメルルに右手を伸ばした。
『心配しないで、ボクは死ぬ訳じゃない。いつか今よりもっと強くなったら…』
助けに来て…
次の瞬間、真っ白な闇が目の前を覆い尽くし、
気が付くと、勇者キャムクティと魔法使いレイラは見知らぬ土地に立っていた。
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