混線メールで未知との遭遇⁉︎/『自由に、小説にしてみよう!』自主企画、参加作品
以下の内容を土台に、自由に、小説にしてください。
「約束してたのに、友達がこなくて。連絡したら、スマホの電波を、間違って受信した宇宙人が降りてきた。友達に、ドタキャンされたから、そのまま、宇宙人と1日、過ごした。」
〜〜〜
「ごめん、待ったー?」
「え……待ってない」
かの子はカレコレ一時間ほど、ここで待ちぼうけをしている。とうとう待ちくたびれて友達に連絡を送ったら、変な少女が現れた。
全身ピンクのピッチリライダースーツ風。紫色の大きな瞳で真っ直ぐかの子を見つめている。同じくピンクの頭髪はツインテールに結い上げられ、極めつけに、頭に2本の触覚が生えていた。
「またまた嘘ばっかりー。だって私の携帯に、ここで待ってるって連絡きたしー」
そう言って彼女は何やらコンパクトのような物を取り出し、その画面をかの子に見せつける。
「うそっ、何で⁉︎」
「ほらねー。それじゃ、行きましょー」
そう言って繋いできた少女の手を、かの子は慌てて振り払う。
「いやいや行かないって! 第一私、友達と約束あるから」
「えー、そっちから連絡してきたくせにー」
「だからそれは何かの間違いで、とにかく私は忙しいの!」
そのときタイミング良く、カバンの中で、かの子のスマホが流行りの音楽を鳴り響かせた。
「ほら、友達から連絡きた」
かの子はスマホを少女に見せびらかすと、通話をスライドして耳に当てる。
「もしもし、キョウちゃん」
『悪りー、かのっち。今日、他に用事あんの忘れてたわ。ごめんなー』
そのまま一方的に電話を切られ、通話終了の音が木霊する。かの子は石像のように固まった。
「暇になっちゃったねー」
何やらニヤニヤした表情で、少女がかの子に顔を寄せる。
「ち、違うし! 確かに友達との用事は無くなったけど、他にもまだまだ用事はあるし!」
確かに、今日の用事は無くなった。
だからと言って、こんな見た目から怪しい人物と行動を共にするなんて有り得ない。
「それならさー、私もその用事に付き合うよー」
「あ、いや、それはダメ。部外者は入れないから」
「友達と会う筈だったのにー?」
「キョウちゃんと別れてから、ひとりで行くつもりだったの!」
「ふーん」
どう考えても、苦しい言い訳だ。少女もあからさまに怪しんでいる。
「かの子は欲しがりだねー」
「は⁉︎」
突然訳の分からない事を言われ、かの子は素っ頓狂な声を上げた。
「お呼ばれしたのは私だけど、仕方ないかー。ここは私が誠意を見せるよー」
少女はかの子の足元に
「どーか私も、連れて行ってください」
「…………は⁉︎」
堂々とした土下座スタイル。驚いた通行人たちからも、かの子に奇異の視線が注がれる。
暫くその重圧に対抗するが、
「分かりました、分かりましたからああ。立ち上がってください、お願いしますうう」
周りの注目に耐え切れなくなり、かの子はとうとう心が折れた。
〜〜〜
少女の名は「ナナペチカ」と言った。何でも他の天体から、地球にやって来たらしい。
……という設定なのだろう。
ここを議論しても仕方がない。おそらくは終わりの来ない平行線だ。かの子は全てを受け入れた。
しかし服装だけは、何とかしなければならない。このままでは、何処へ行っても注目の的だ。
そうして訪れた、駅ビルの中にあるファストファッションの店で、
「かの子が適当に選んでよー」
ナナペチカがニッコリと微笑んだ。
「え、何でよっ⁉︎」
「私、地球のセンスとか分からないからさー」
「ああ、そっか。そう言う設定ね」
かの子は小さく溜め息を吐くと、無難に水色のワンピースを選び取る。
「これなんか、どう?」
「じゃー、それにしよーっと」
ナナペチカは嬉しそうに受け取ると、直ぐさまレジへと歩き出した。
「え、ホントにそんな適当でいいの?」
「かの子が私のために選んでくれたんだから、良いに決まってるよー」
「あ、そ…そう? それなら良いんだけど」
真っ直ぐに向けられた笑顔が眩しくて、かの子は思わず顔をそむける。それでも何だか、悪い気はしなかった。
「そう言えば、ナナペチカは宇宙人なのに、日本のお金持ってるの?」
だから少しくらい、相手の調子に合わせてあげようと思い直した。
「大丈夫、スペペイがあるからー」
そう言ってナナペチカは、右手でコンパクトをヒラヒラと振り回す。
何だろう、キャッシュレスかな……まさか、スペペイって、
「…そう? それなら安心だ」
ゆっくり頷くかの子には、苦笑いを浮かべる事しか出来なかった。
〜〜〜
この後は、二人でボーリングにも行ったし、ゲームセンターにも行った。
ナナペチカは何処に行っても、まるで子どものように無邪気にはしゃぎ回る。そんな彼女のパワーに当てられて、何だかんだで、かの子も一日楽しんだ。
そうして夕方遅くになった頃、
「それじゃそろそろ帰るね。思ったより、ずっと楽しかったよ」
かの子は満面の笑みを浮かべた。
「えーもう帰っちゃうのー? せっかく仲良くなれたのにー」
「私の家、ここから遠いから、そろそろ帰らないと遅くなっちゃう」
「だったら最後に一ヶ所だけー、私のとっておきの場所を、かの子に紹介したいんだー」
「え、でも…」
「お願いお願いお願いー」
そう言ってナナペチカは、かの子の右手を両手で必至に握りしめる。
「仕方ないなあ。じゃあ、ちょっとだけだよ」
肩をすくめてクスッと微笑んだその瞬間、かの子の頭上の上空が七色の光に埋め尽くされた。
〜〜〜
何だろう、頭がぼーっとする。
そう言えば夢の中で、窓の外に青く輝く、綺麗なビー玉を見た気がするんだけど、
何だったんだろな、あれ……
〜おしまい〜
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