結末は誰にもわからない √3 【3】
あれから半年間の厳しいリハビリを終え、やっと退院を迎える事になった。
その間両親は一度も顔を出さなかった。仕事の都合で、世界中を飛び回っているらしい。
婚約者の「白川美桜」は、あれからも毎日のように来てくれた。辛いリハビリも、彼女の献身的な支えがあったからこそ乗り越えられたと断言出来る。
それから不思議な事に、美桜が来ない日に限って妹の「咲良」が姿を現した。本人は隠しているつもりのようだが、病室に入る時に一度中を確認する姿が滑稽で僕の心を和ませた。
僕も気付かないフリを続けていたので、結局その行動の意味を問いただす事は出来なかったが…
そうして迎えた退院当日。
病院の玄関口で、初めて美桜と咲良が対峙した。
「美桜さま、いつも司お兄さまに付き添い頂きありがとうございます。ですがここからは私が付き添いますので、お帰り頂いて結構ですよ」
「咲良さん、出来れば私も、司さんを家まで送っていきたいのだけど、いいかな?」
「お心遣い感謝致します。ですがお気持ちだけで結構です。家での事は私が誠心誠意尽くしますので、ご心配には及びません」
そう言って咲良は僕の手を取ると、天使のような笑顔を僕に見せる。
「さ、お兄さま、参りましょう。あちらにハイヤーを待たせてあります」
「あ…ああ、宜しく頼むな、咲良」
そうして強引に歩き出す咲良に手を引かれ、僕は後に残された美桜に振り返った。
「今日はありがとうな、美桜。また連絡する」
「はい。司さんも、あまり無理な事はしないようにね」
そう言って手を振る彼女の姿が、何だか一瞬、とても寂しそうな笑顔に見えた。
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