ヒュノス完成?

 結果は圧勝でした。


 実際に製造されたギナのロボットは、軍の稼動実験に参加しました。採用可否を問われる新型機が演習場で現行機と対決するのです。そこで発表されたヒュノスは圧倒的な力を示したのでした。


「当たり前なの。ギナの『ギナンザ』はあんなやわ・・な機体になんか負けないの」

 完成したロボットは『ギナンザ』と名付けられています。

「本当に圧倒的でしたね。訓練されたパイロットが操る機動兵器を、格闘技経験もない素人の君が操縦するギナンザが圧勝したんですから」

『ずっと稼動実験をしていたのはギナ様です。いきなり乗って動かせるような機体ではございませんので』

「ある意味、それが欠点と言えるんですけどね」


 ほとんどの工程は仮想3Dモデルによるシミュレートによって行われます。材料の性質まで反映されてシミュレートされれば大概の問題点は洗い出し可能。

 基礎設計を終えて半年で実用モデルまで試行錯誤されブラッシュアップしたロボットは実際に試作されました。その稼動実験を行ったのは他ならぬギナです。


 実験で稼動を確認されたロボットは一度解体されて全部品のチェックが行われましたが数点の問題しか発見されませんでした。最終的に完成したギナンザは軍の稼動実験に参加したんです。


『操縦には感覚を掴む作業が必要なようです』

「それでもギナが最強なの!」

 いや、君ではなくロボットが、ですけどね。

「分かりやすかったですね。動きの速い小型機にも速度で劣らず、大火力の大型機も瞬時に接近されて粉砕されていました」

『飛行型戦闘機にも後れは取りません。飛行姿勢のシミュレートも入念に行いましたので』

『まさに蹂躙であったな』


 現行機も新型機も寄せつけませんでした。火器も装備していないギナンザは、力場シールドを用いたほかは打撃だけで勝利を掴んだのです。これには、僕の横に並んでいた軍幹部も開いた口が塞がらない様子でした。


「気持ちよかったの。上から見下ろして殴って蹴って粉砕してやったの。最高だったの~」

「ギナが一番堪能していましたね。気がすんだでしょう?」

「充実の時間だったの。ギナとレリのロボットは最強なの」


 ほろ酔いのギナはグラスを片手に極めて上機嫌。コンプレックスが消えたわけではないでしょうが、ストレスは十分に軽減されたのでしょう。


「今度は反重力推進機の開発に協力するの、レリ。二人なら何でも作れちゃうの」

『ヒュノス開発でめざましい活躍をしてくださったのは意外でした、レリ様』

『主の珍しい一面を見られた気がするな。要請も当然だ』

 理論が難しすぎてぼくでは役に立ちそうにないんですけどね。


 さて、研究のパートナーになるのもやぶさかではないのですが、彼女はぼくの人生のパートナーにはなってくれるのでしょうか?



<完>

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ギナ・ファナトラ機械工学研究所 ~彼女はロボットが造りたいそうです~ 八波草三郎 @digimal

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