腕は複雑かも?(3)
「これを見てほしいの」
冗談を撤回しているとギナが言います。
3Dモデルは簡易なロボット造形が作業をしている様子を投影しています。腕から手へとクローズアップされていき拡大状態になりました。
片手で棒状の物を握ったり、もっと大きな物を握って持ち上げたりします。また箱状の物体を両手で持ち上げる動作なども加わり、繰り返し表示されています。
「ここ、注目なの」
「どこですか?」
引き続き動作はリピートされていますが、薬指と小指が黄色に変わって点滅を始めます。その二本の指に注意してほしいみたいです。
「ああ、もしかして?」
「そうなの。こんな単純な作業だと薬指と小指はほぼ同時に動いているの。ほとんど個々に動かさなきゃいけない場面はないの」
小さい物をつまむシーンになると人差し指と中指は用いられていますけど前述の二本は遊んでいます。
「別個に動いていないということは省略して構わないということですか」
「それも違うの」
径の小さい棒を掴む場面になりました。普通に五本の指が棒を掴んで握りこみます。
「この時の力を計算するの」
「つまりは握力ですね」
二画面になり、五本の指で握った時の力と、小指を省いて握った時の力が横に数式で表示されます。小指のないほうの算出値は、あるほうの算出値より著しく低下しています。
「握力という意味では、小指は極めて重要な働きをしているの」
ギナは棒を握る場面のストップモーションを指で示します。
「手の中で対角に位置する親指と小指という位置関係が最重要なの」
「理解できました。小指を省くのが無理ならば薬指ですか」
「それもアンバランスになるの。握力のかかる部分が不均等になって支持力は弱まってしまうの」
同様に3Dモデルから算出されます。
「本当だ。小指のないものほどではありませんが低下しますね」
「無くしてはダメなの。だから一緒にするの」
今度は小指と薬指が接合されて一本の平たい指に変わりました。構造の変わった手がやはり棒を握る場面で計算が行われます。数値は五本指とほぼ同等。握力の不均等も認められません。
「おー、見事に解消されましたね」
ぼくは褒め称えます。
「当然なの」
「やっぱり天才博士です。ぼくなどとは視点が違いますね」
「なのなの!」
自慢げに胸を張るので、たゆんと揺れています。
続いて握った棒を手の中で角度を変える動き。これも巧みに行えます。四本指でも特に支障なく作業ができると分かりました。
「これで手のベースは完成ですか」
「なの。超電導モーターの数を減らせたので、その分装甲を厚くできるの!」
「言いたくないけど殴る時に有効ですね」
ぼくは失笑しつつ手を叩いた。
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