肩は大変かも?(5)
「これを全高22mのロボットの肩に組みこむんですか?」
さすがに無謀に思えます。
「違うの。注目すべきはジェルのほうなの。このジェルは、シリンダ機構が斜陽を迎えた後に生みだされているの。もちろん変質しなければ、高温低温で膨張や凍結をしない性質なの」
「お? もしかしてこのジェルをシリンダ機構で用いる気ですか?」
「なのなの」
ギナの指が空間を示します。投影された2Dパネルが数列をすごい速さで流しました。何らかの計算をしたのでしょう。
「やっぱり粘性が高いだけ油を圧力媒体にするより制御がしやすいの。ロボットでも有効なくらい精密制御ができそうなの」
研究者の顔になっています。
『それでいて油圧以上の高出力が見こめそうです。実用レベルに持っていけば特許も可能かと思われます』
「またギナの収入源が増えそうだね」
「レリの助けがあってのことなの。上手くいったら共同開発にして分配するの」
ギナの研究者の顔は消えません。それだけで全ての問題が解消されたわけではないようです。
『このままでも空間が真空を嫌う性質とモーシャの圧力原理で駆動は可能でしょう』
新たな3Dモデルは模擬設計のシリンダを表しています。
『ただしジェルの性質上、宇宙空間での駆動に僅かな遅れが生じる可能性を排除できません』
「……遮断するの、ファトラ。シリンダを二重構造にして外側の筒には空気を充填して圧力を維持するの」
『反映します。必要な駆動速度が得られるようです』
即座に計算して結果が出たみたいです。
「これで実用品なの。製作して実験データを採取して速やかに特許申請するの」
『工作室を稼働させます』
早速実験段階に入ったようです。これで問題は解消されたでしょうか?
「君の計算でも問題ありませんか、ラノス?」
『我の計算でも新開発のジェルシリンダは実用品である。が、できたからといってこれを人体の筋肉と同じ配置にすれば同様の動作を約束するものではない。それではかなりの容量を必要とするであろう』
まだ問題点はあるみたいですね。
「シリンダの配置はこれから考えるの。でも、十二分な出力を引き出せそうだから、この先の設計作業は楽ちんなの。専門家の領域だから任せろなの」
『クロス配置など様々な素案を実証中です』
話している背後で計算が行われているんですね。
「安心しました」
「レリを頼って大正解だったの。これで殴り合いができる腕の基部ができそうなの」
「どうしても殴りたいんですね……」
「手伝ってくれないの?」
上目遣いのギナにぼくは「よろこんで」と笑いかけました。
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