胴体はレイアウトが大事?(3)
実用性を説いたギナに安全性を説いたファトラ。いつの間にか消去法のようになっていますね。迷走しそうな気配があるので、この辺りで条件割り出しに入りたいところです。
「真ん中をとって腹部というのは?」
誘いかけてみます。
「悪くはない案なの。でも胴体の中心は避けたいの」
「なぜです?」
「小型対消滅炉も搭載するの。コクピットからは離して配置したいの」
理由は被爆に関してでしょうか?
「炉の周囲には電磁波変調分子ヘスタロンを充填するんでしょう? 放射線に関しての危険性は度外視していいのではありませんか?」
「被爆は考えていないの。でも、爆発は無視できないの」
「戦闘を前提とした時の配慮ですか」
対消滅炉は実用化からの歴史も長いのです。今さら暴走の危険性など訴える技術者はいないでしょう。
となれば攻撃によって一部または大部分が損壊した場合の話。対消滅反応が外に漏れれば通常物質は飲まれ、その存在エネルギー全てを放出します。その爆発力は少々の防護では防ぎきれません。
『コクピットには独立した装甲を施す計画です。しかし対消滅反応そのものを防ぐ力場で覆うような措置をすれば空間的に孤立してしまい、操縦は不可能となります』
「力場シールドですか。確かに何も通さなくなりますもんね」
力場シールドは対消滅炉内壁を覆って反応を外に漏らさないようにしています。この強固な力場は電磁波も何もかもをシールドしてしまうのです。それを穴のないように設置すればケーブルどころか電波でのコントロールも不可能になってしまうのです。
『ジェネレータの異常時に一面だけ力場展開する機能は設置します。それはコクピットを排出させる時間を確保するためでしかありません』
「炉が失われたのに力場を維持するエネルギーを保持するのも無理なの。シールドできるのは一瞬だけなの」
『力場シールドは展開維持に膨大なエネルギー量を要するのだ、主』
ラノスも補足で常時シールドも無理な話だと分かります。
「なるほど、分かりました。ほんの僅かの脱出時間でも稼ぎたいからできるだけ離して配置したいという話なんですね?」
「なのなの」
胴体という制限された容量の中にジェネレータとコクピットの離隔を取って配置しなくてはなりません。となれば端と端を選ぶしかないようです。
「それなら結果は出ているんではないですか」
「なのー」
腰部が廃案になったのであれば胸部の上のほうしかありません。
「胸部前面、首の下あたりに搭乗口を設けるの。コクピットはその中に配置するの」
『ハッチおよび周囲装甲厚を高めて安全を担保する設計にいたします』
「それしかないみたいなの」
ぼくに説明している間に結論に達してしまいました。
これも役割なのかもしれませんね。
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