なんでロボット?(2)

 ぼくら人類が発生した惑星ナルジの重力加速度は17.6m/s2。探査された宇宙全体から見ると、酸素呼吸型生物の可住惑星としてはかなり大きめになります。


 この高重力がもたらしたのは生物の小型化です。他の重力加速度が低い可住惑星の現住生物が2~10mほどの体高を持つのに比べ、ぼくらは小さいと言えるでしょう。


 その中でも彼女、ギナの背が低めなのは否めません。女性の平均身長が120cmくらいと、ちょうどぼくの身長と同じなのです。ギナは100cm。コンプレックスに感じても致し方ないことです。


「見下ろしたい。つまり乗るタイプの巨大ロボットを造りたいと言うんですね?」

「なのなの!」

 ぶんぶんと頷く。

「確かにそれも少ないですよね。人工知能も発達しているので、わざわざ乗って操る必要なんてありません」

「無いなら造るしかないの」

「ギナが何をしたいのか理解しました」

 本当に必要かは別の話です。


 ぼくは彼女を十分魅力的に感じています。小柄な身体に豊かな胸というのも需要があると思いますけど、そんな理由ではありません。


 緑色の頭髪は肩にかけて色が抜けて黄色に変わっていっています。

 切りそろえた前髪の下には金色の大きな瞳を持つ目。小さな鼻に小振りな唇も可憐です。

 樹上生活の猫から進化したぼくらは当然顔の横に三角耳を生やしています。そこだけ残っている耳の毛皮は焦げ茶と黒の濃淡。耳の穴付近の耳毛は薄い黄色で彩り豊かです。

 華奢で可愛いギナは、小柄なぼくでも思わず守ってあげたいと思うほど。でも、彼女は天才的な機械工学の権威でもあるのですからアンバランスにもほどがあります。


 対してぼくはいたって普通の男です。

 藍色の髪は水色にあせるところの首元で切っています。ギナは青い瞳を羨ましいと言いますが、顔の造形も平凡の二文字でしょう。

 三角耳の毛皮だけは白銀。遺伝的に髪の色が反映されることはありません。どういった因子で毛皮の色が決定されるのか研究もされましたが、明確な答えは未だ発表されていないのです。耳毛が濃い灰色なのが全て台無しにしているんですけどね。


「理解はしましたけど、ぼくでは不適格でしょう?」

 疑問は尽きません。

「機械工学の専門家でも何でもないんですから」

「専門家は不要なの。ギナは自分で造れるの」

「ですよね?」

 どうしてぼくを呼んだのでしょう?

「ギナは世間知らずなの」

「あ……、気付いてましたか」

「ぶー、なの」

 彼女はむくれています。

「レリみたいな色んな分野に精通している人の意見が要るの。構造じゃなく、普通に運用するのにそういう意見を容れないと失敗するの」

「やっぱり研究者なんですね」


 実用レベルの開発のためにぼくを必要としているようです。

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