飛べないとダメ?(4)
「電力は駆動と制御に使うの。超電導モーターもジェルポンプも賄えるの。残った熱とかプラズマは推進機に回すのが一番話が早いの」
こだわったわりに扱いが雑です。
「決まったようなものですね」
「リキッドスプレーも装備するにしても、ちょっと考えてみたいの。ギナ独自のリキッドが作れると面白いの」
『ギナ殿は科学分野は畑違いではないのか?』
『それはわたくしがサポートいたします。ご心配には及びませんわ、ラノス』
意見を出すまでもないようです。
「でも、ちょっと気になっている技術もあるの」
「他の方の発明ですか?」
「そうなの。発明と言うべきかは迷うとこなの」
ギナが言うには、反重力機構ティバルグの発展型らしいです。慣性制御能力を向上させて反重力推進を行う仕組みを作り上げたのだそうで、彼女は興味を惹かれたみたいですね。
「重力を打ち消すことが可能ならば、強化すれば反力まで生みだすのも可能ということですか」
「そんな生易しい話ではないの。ゼロまで持っていくのと、更にマイナスまで振っていくには大きな壁を超えなくてはならないの」
その壁はきっと専門家にしか見えないものですね。
「構造を見たけど、一歩だけ踏み出した感じだったの。まだ改良の余地が見えたの」
『それは分かるが、ギナ殿。重力下でしか作用しないのでは考慮するまでもないのではないか?』
「なのなの。宇宙では使えないの。だから興味を惹かれただけなの」
航空機に採用される予定なのだそうです。
「面白そうと思ったけど限界も見えるの」
技術的に興味は持ったけど将来の発展性には疑問を持ったようです。彼女も研究者なのでどんな技術でも興味を持つのは仕事でしょう。
「へぇ、でも重力圏近辺では使えそうなんですよね?」
「なのなの」
「あれ? 結局は慣性の制御能力をアップさせた技術なんでしょう?」
「なのなの」
なんか引っ掛かります。
「静止しているのも慣性なのではありませんか?」
「確かにそうなの」
「反力を推進力にはできないんですか?」
ギナはぷぷっと吹きます。
「静止の慣性力は相対的には極微小なの。得られる反力も小さすぎるの」
「やっぱり無理ですか。なんなら重力を生みだす機構でも考案するしかないですね」
「なの?」
『は?』
微妙な空気に驚かされます。ぼくは何か変なことを言ったのかもしれません。笑われる前に取り消したほうが良さそうです。
「レリは変なの。最高にいかれてるの」
ギナの目がキラキラです。
「面白すぎて考えたいの」
『イメージをお願いします。試算いたします』
「やってみたいけど、これはとびきり時間がかかりそうなの。今回は見送って、別の推進システムとして研究するの。ヒュノスにはまずブラスターを組み込むの」
当面は諦めたみたいです。彼女の前で不用意な発言は怖ろしいですね。
ともあれ、巨大ロボット『ヒュノス』はほぼ完成です。
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