飛べないとダメ?(3)
『では推進機に話を戻してもよろしいでしょうか?』
ファトラの声音は少ししおらしげです。
推進機を搭載するといってもそれほど大げさな話にはなりません。反重力機構ティバルグが搭載可能なサイズである以上、どれほど重かろうがあまり意味を成さないのです。
ファトラが割り出したロボットの概算重量は100t。それほどのものでも簡単な推進機を取りつけるだけで、この惑星ナルジの重力加速度17.6m/s2の大気圏から離脱だって可能です。
「すみません、ファトラ。その前に現在の最新技術について教えてもらえませんか?」
知識としては子供と大差ないかもしれません。
「小説執筆のために歴史は漁ったのですが、ガス推進や燃料ジェット推進なんて化石ですよね?」
「それは太古の昔の技術なの」
『どんな小説をお書きになったのですか、レリ様?』
ギナも唖然としています。
「まだ人類が宇宙を知らなかった頃の話だったんです」
『それでは仕方ありませんね。ですが、子供でももっと興味を持って調べるものだと思っておりました』
「航空機も宇宙機も移動手段以上に考えていなくて……」
言い訳させてもらうと、それくらいティバルグの発明は画期的だったんです。物体が浮いて空を飛ぶ機構というのは推力に頼っていたのに、重力を含めた慣性力を制御できるようになれば全ての飛行にまつわる機構がひっくり返ります。
それこそガス推進でも宇宙に物を飛ばせてしまえるんですよ。浮揚技術や推進技術が色褪せたって致し方ないじゃありませんか。
「本当に言い訳なの」
ギナの目が冷たいです。
「推力そのものの大きさが必要にならなくなれば、今度は効率を求めるようになるの。誰でも分かることなの」
『宇宙航行技術は元よりそういう考え方で進化しているものですので』
「ごめんなさい。完全に足を引っ張っていますね」
『勉強不足は恥ずかしいぞ、
自分の
『エネルギーブラストが基本です、レリ様。熱ブラストやプラズマブラストであれば対消滅炉より簡単に抽出できますので』
「ありがとう、ファトラ」
『あとは如何に効率化するかが問題だ、主。最近の主流はブラスト推力を上げるために添加物を用いる。リキッドスプレーが多く、小容量で高い推力を叩き出す物質の発明に技術者は腐心しておる』
なるほど。
当たり前といえば当たり前です。要は後ろに何かを放り投げれば反力が生じます。その反力を推進力とするのが基本。それが熱などのエネルギーでも同じ現象が起こるのです。
そこに物質という質量を加えれば効率は飛躍的に上がるでしょうが、容量という壁が存在します。リキッドスプレーというのは一時的に大きな加速を得るための技術でしょう。
ヒュノスに搭載するのもブラスターになるのでしょうか。
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