なんでロボット?(4)
ファトラは人工知能です。今の時代の人間の全てではありませんが、それなりの立場がある人にはサポートシステムとしての
『主は忙しい。無理を言うでないぞ、ファトラ』
そして、ぼくの
「大丈夫ですよ、ラノス。最近は時間の使い方も上手になってきたでしょう?」
『その時間は自分のために使うべきだ、主よ』
「ラノスは意地悪なの」
『出すぎた真似は褒められたものではありませんよ、ラノス』
ファトラにまで責められた彼は劣勢です。
「ありがとう。君に心配させないようにしますよ」
『主がそうまで言うのなら仕方あるまい』
「結局、ぼくも彼女と同じで自分のしたいことしかできないのかもしれません」
話は決まりました。これから時間がある時には彼女のロボット開発を手伝うことになります。ギナのやることなので失敗したりはしないでしょうが、僕の意見に意味があるのかは不安ですね。
「それで、どのくらいの大きさのロボットを造るつもりなんですか?」
基本的な条件は頭に入れておきたいところです。
「おっきければおっきいほどいいの」
「でも現実的ではないですよね?」
「その通りなの」
彼女は専門家。夢想家ではありません。
『こちらが素案となる基礎設計です』
ファトラが空間に立体模型映像を浮き上がらせました。それは人型ロボットというには足りないものばかりに見えます。でも、人の形はしています。
『基本フレームです。これを骨格にして動かす形になります』
「まだこれに足し算していかないと無理なの」
本当の本当に基本の構想らしいですね。
「全高はどれくらいです?」
『フレームに各種機構を装着した場合の重量を縦軸とし、横軸を全高としたグラフです。体高が上がるほど尻上がりの曲線を描いていきます』
「やっぱりそうなりますよね」
単純に考えて、一辺が長くなるほど容積は三乗倍に増えていきます。強度を踏まえれば、とんでもない重量になっていくのは確定です。
「ティバルグがあるので重量は無視しても構わないんですか?」
反重力機構ティバルグを搭載すれば何でも重さをゼロにできます。
『そうとばかりはまいりません』
「人間みたいに動かそうと思えば駆動負荷も考えないといけないの。重さをゼロにできても、大きくなるほど駆動部の摩耗は激しくなって実用からは遠ざかるの」
「難しいものなんですね」
簡単にはいかないものらしいです。
「では、このフレームも重量がかさむし、摩耗部品も多くなってしまう構造なんじゃないんですか?」
『フレーム構造は規定事項です』
「はい? どうしてです?」
納得いかないです。
「これが無いと殴り合いができないの」
「殴り合いできないとダメなんですか!」
先が思いやられそうです。
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