腕は複雑かも?(1)
ちょっと間が空いてしまいました。初稿の、編集さんの要望する点の修正をする傍ら、招聘された地方経済活性化委員会に参加していたので時間が取れなくなっていたんです。
特に顔を売る意図がありませんので、ぼくを知らない地方自治体の首長は嘗めてかかります。それを政府の事務方が見咎めて注意し、非常に座りの悪い状況になったりしていました。
「レリ・アチストンを知らないなんてもぐりなの」
話を聞いたギナは憤慨している。
「選挙でえらばれる州務長は経済の専門家ではありませんからね。ぼくの著作に目を通したりはしていないだけですよ」
「そんな州務長に導かれる市民が憐れなの」
『怒りをお納めください。彼らも以降は行いを改めるでしょう』
ファトラの作業用義体が彼女の前にお菓子を置いていきます。
『此度は初顔が多かったゆえな。あれらが他の州務官に恥をかかせようと画策せん限り、主の顔も拡散されていくであろう』
「それが嫌で名乗るのも控えているんですよ、ラノス。どこに取材に行っても自由がないでは楽しめません」
「贅沢なの。ギナは研究所以外だと騒がれるので楽しくないの」
若くして数多くの発明品が社会へと普及しているギナは各所で顔も含めて紹介されています。可憐な容姿もともない、有名になってしまった彼女はどこに行ってもちやほやされてしまうでしょう。
「君はここにこもって研究しているだけで満足なのでしょう? ぼくは寂しがり屋なので人の中にいたいんです」
職業柄、人間観察も怠れませんし。
「寂しがり屋ならもっとここに来るべきなの。ギナなら幾らでも歓迎してあげるの」
「確かに邪険にされたことはありませんけどね」
『お察しください、レリ様』
もっと訪問頻度をあげるよう言われているんですね。
「かと言って研究の邪魔もしたくないんです。いつも役に立つとは限りませんもんね」
「お話ししているだけでも閃きはあるの」
『もっと人のこともお勉強なされるのを推奨いたします』
それはたぶん一生の命題なんですよ、ファトラ。
それでもギナの
「それでロボットのほうはどんな進行具合なんですか?」
情勢不利と見て話題転換を図ります。
「予備作業がいっぱいだったの」
「予備作業?」
『ジェルシリンダに関しましての研究です。形状から内径、ストロークのほか、円弧型の開発実験も行っておりました。さらにジェルの組成についても改良を施す努力もしていらっしゃいます』
本体の設計から離れて、駆動機の研究に勤しんでいたようです。
かえって程よい頃合いだったのかもしれません。
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