肩は大変かも?(3)
後ろからギナの香りが漂ってきました。椅子にかけたぼくの肩に小さな手が触れ、ごそごそとまさぐっています。
「むー!」
おや、また不機嫌に逆戻りでしょうか?
「高いから説明しにくいの! レリは嫌味なの!」
「そう言われましてもね」
「床に座るの!」
苦笑していると椅子から追い出されてしまいました。
「これでいいですか?」
「うん、じゃあ説明するの」
床に足を投げ出して座ります。するとギナは背後から覆いかぶさるように張り付いてきました。背中には豊かな球体の感触があります。押し潰されて広がる感じが困惑を誘います。もう少し女性を意識するよう言い聞かせないといけないんでしょうか。
「これが鎖骨なの」
両手がぼくの首元に触れています。
「こんなふうに肩関節に繋がっているの。で、これが肩甲骨なの。これも肩関節を支えてるの」
「前後から挟み込むように保持しているんですね?」
「なのなの」
ぼくの肩の筋肉をモミモミして中の大きめの関節に触ってきます。
「複雑そうでそうでもないの。あとは筋肉で駆動させてるだけなの」
「肩を動かす筋肉って多めですね」
「胸とか背中とかはほとんどそうだといっても過言ではないの」
触れられると確かに分かりやすいです。骨は接合しているだけで、支えているのは筋肉が主に担っていると分かりました。
「これと同じフレーム構造はできるの。でも、それだと算出上の腕の重量を支持するのに強度が足りなくなるの」
彼女は総体的に考えて不可を出しているんですね。
『人体のように駆動機構で肩関節や腕の重量を支えるのは困難です。駆動機には摩擦軽減措置や遊びなどもないと可動しませんので。腕部も複雑な駆動機構を組み込むのが必須である以上、重量も相当なものになってしまいます』
「やっぱり強度を考えれば金属製になるんでしょうからね。軽量素材を選んだとしてもかなり重くなるのは否めませんね」
「理解が早いの」
横に座り込んだギナが頼もしげに見あげてきます。
頼られても、構造的な閃きなど到底無理です。それこそ専門家の領域でしょう。知識が圧倒的に足りません。
「ちなみに駆動機はどういったものを想定しているのですか?」
前提条件から聞き出さないと話が進みません。
「ほとんどを超電導モーターに置き換えたいの。人工筋肉では十分な駆動力を得られないの」
「常温駆動する強力なものが普及していますし、精密制御できる使いやすさもあるんでしょう」
『メンテナンス性や軽量化にも有用です』
ぼくは自分の肩を触ってみます。構造的には効率的に思えるので、やはり類似した機構を組み込むほうが有効な気がしてきました。
ここは一つ視点を変える提案をしてみましょう。
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