第20話 男の意地
未央の花奥にたっぷりと放出すると、真浦はずるりと粘液まみれの肉茎を引き抜いた。
床に置いたオールドヒッコリーのバットを手に取り、姿見の前に構えて立つ。
左足をステップして思いっきりバットを振った。
びたーーん!!
小気味のいい音が控室全体に響いた。イチモツが内腿のベストポイントにぴったしアジャストしたのだ。
「おおきに。おまはんのおかげで余計な力みがとれたわ」
真浦はユニフォームに身をつつむと、しどけなく横たわる未央をその場に残して控室をあとにした。
カチャカチャとスパイクの底を鳴らせてベンチに向かう。
通路を抜けると、カクテルライトの明かりが目に飛び込んできた。
試合はすでに再開されている。
「真浦、おまえの出番はもうないかもしれんな」
坂崎監督がグラウンドに目を向けていった。
2アウト、ランナーなし。
不調で7番に降格した助っ人外国人のジュリアス・ボーズが打席に立ち、早くもワンボールツーストライクと追い込まれている。
真浦はベンチから出てネクストバッターサークルの近くまでゆくと、これ見よがしにオールドヒッコリーのバットを振った。
「おれと勝負しろ」との露骨なアピールである。
「そんな挑発にグレイツはんが乗るわけないやろ」
とバッティングコーチの田村が呟くようにいった。
東京グレイツは勝利至上主義である。選手個人の意地やプライドなどいっさい考慮しない。いくら渋川がリベンジを望んでも、それを許すベンチではない。まずは目の前にぶら下がっている勝利の果実をもぎ取ることが先決なのだ。
だが……。
信じられないことが起こった。
観客がざわめく。
追い込んだ渋川であったが突如、制球を乱し、立て続けにボールを連発、ボーズをフォアボールで一塁に歩かせてしまった。ボーズは同点のランナーである。
渋川が真浦をにらみつける。
さっさと出てこいと言わんばかりだ。
「それでこそ男やで」
真浦は不敵な笑みを浮かべると自軍ベンチを振り返った。
坂崎監督がでてきて主審にバッター交替を告げる。
「代打、真浦!」
その瞬間、球場全体が沸騰した。
地響きのような歓声に球場全体がつつまれたのである。
第21話につづく
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