第4話 応援歌

 真浦道太がやけにスッキリした表情でベンチにでてきた。

 遅れて青井未央が付き従うような格好で真浦の背中に隠れている。若干、頰が赤いのが気になったが、坂崎は無視して真浦にいった。


「道太、頼むぞ」


 局面は進み、2アウト満塁、一打サヨナラの絶好の好機となっている。

 坂崎は主審に代打を告げた。


「代打、真浦道太!」


 その瞬間、スタンドが沸騰した。

 一塁側の応援席は総立ちとなり、道太コールが沸き起こる。


「ドータ!」

「ドータ!」

「マラドーダ!!」


 のっしのっしという感じで真浦がバットを携えグラウンドにでてきた。

『Titans』と銘打たれた縦縞のユニフォームに身を包んだ彼は、まさしく巨人のごとき威容で球場のカクテルライトと注目を一身に浴びている。


 一塁側スタンドから自然と応援歌が流れた。


 ♪マーラマラマラマラドーダ

 おまえのバットで

 白い白いアレをカッ飛ばせ

 ドビュッとドビュッと

 ぶっぱなせ!!


 いささか下品で意味ありげな応援歌ではあるが、真浦にとってはありがたい。

 先ほど放出したばかりだが、熱い声援を背に受けて真浦道太の股間に新たなエネルギーが満ちてくる。


「頼むで、道太!」

「いてこましたれ!」


 ひと振りふた振りと軽く素振りをくれて真浦が右打席に立った。

 バットをしごいて大上段に構える。


「プレイ!」


 主審がピッチャーに再開を告げた。



 第5話につづく
















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る