第5話 絶対の自信

 3ー3で迎えた9回裏タイタンズの攻撃。

 2死満塁で代打、真浦道太が右打席に立つ。

 対するピッチャーは開幕26試合連続無失点を継続中の渋川大河しぶかわ・たいがであった。


 渋川はクローザーである。敵に献上した3点は当然、先発ピッチャーが与えたものであり、中継ぎがうまく抑えているあいだに味方が同点にしてくれた。

 ここで打たれるわけにはいかない。

 チームのためであることはもちろんだが、自身の記録もかかっている。この試合も無失点に抑えれば開幕27試合連続無失点登板の新記録に並ぶのだ。


「頼むぞ、タイガー!」


 三塁側のグレイツ応援席から声援が飛ぶ。

 渋川は打席の真浦をにらみつけた。

 守れない、走れない、投げられないの三拍子揃った代打専門の点取り屋。

 確か今年で32歳になったはずだ。

 もうロートルだ。夏場になると疲れがでてくるのか打率ががくんと落ちる。

 7月に入ってから真浦はことごとく凡退している。

 ランナーが三塁にいても返しきれない。


(勝てる。延長は決まりだ!)


 追い込まれているという焦燥感は微塵もない。

 絶対の自信をのぞかせて渋川は第一球を投じた。



 第6話につづく















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る