最終話 不滅の魔羅道打。
二ヶ月後——
真浦は病室のなかにいた。
いまは退院した高宮璃子と同じ病院の同じ病室である。
というのも——
打席で頭部にデッドボールを受け転倒。すぐさま起きあがったものの、監督の坂崎から精密検査を受けるよう厳命され、その足で即入院の運びとなったのだ。
検査の結果は軽い脳震盪だが、大事をとっての二泊三日となった。
(退屈でかえって死にそうやわ)
今期の六甲タイタンズは早々とペナントレースから脱落、Bクラス落ちが決定したので真浦が焦る必要はまったくない。
とはいっても、なにもしないでベッドの上に横たわっているだけというのは鬱屈が昂じてくる。
(そういえばこの部屋、ヘンなもんがいたような……)
『雄琴ソープ嬢名鑑』を放り投げて真浦はドア付近の壁をみた。
以前、そこには死神の形をした染みが浮き出ていたが、壁が崩れたということで補修されモルタルが塗られている。いまは死神の影も形もない。
「死神のアホンダラめ、でていきよったな」
声にだして呟くと、いきなり病室のスライドドアが開いて、
「マラさん、元気ですか?!」
はずんだ声で広報の青井未央が入ってきた。未央は最近、真浦のことを「マラさん」と縮めていうようになっている。
「なんや、未央かいな」
「なんやとはなんですか。せっかくゲストを連れてきたのに」
「ゲスト?」
さっきからドア外の辺りでもじもじしている影がみえる。
「入って」
促され、その人影がおずおずと入ってきた。
「おまはん?!」
「お久しぶりです」
高宮璃子がぺこんと頭を下げた。
「真浦さんのおかげですっかり元気になりました」
あれから体力が回復した璃子は心臓の手術を受け成功。いまでは軽い運動をこなせるまでになったという。
「璃子ちゃんもマラさんの容態が気になってこうやってお見舞いきたというわけなんです」
未央が補足説明すると真浦は豪快に笑い飛ばした。
「容態もクソもあるかい。わしゃ、このとおりピンピンしとるでえ」
「ホントにピンピンしてるんですか?」
未央がいたずらっぽい顔になった。
「な…なんや
「やっぱり確認しないとね。ねえ未央ちゃん」
「は…はい。確認は必要やと思います」
璃子が頰を赤らめてうなずく。
「確認て……ちょ、ちょい待て、なにするんや?!」
未央と璃子が左右に別れて真浦のパジャマの下を脱がしにかかる。
「あっ、やっぱりピンピンしてる!!」
「ホンマですね。すごーい!!」
「お…おまえらなにしとんのや、ここは病院やぞ、場所を選ばんかい!」
「よくいうわよ、ねえ」
未央が璃子に同意を求めると、璃子は激しくうなずいて丸出しになった魔羅バットにペロリと舌をだした。
「あ、璃子ちゃん、抜け駆けはダメよ!」
未央も反対側から真浦の魔羅バットを舐めにかかる。
ピンピンだった魔羅バットがますます怒張してビンビンにそそり勃つ。
「あっ、あんたたちなにしとんの?!」
いきなり声が響いてもうひとり入ったきた。球団オーナーの六道寧々である。
「病室で病人相手になんてことを! はしたない。まったく最近の若い子は常識がないんだから」
と、いいながらタックスカートとショーツを脱いで臨戦態勢充分になった真浦の魔羅バットにまたがろうとする。
「あっ、オバサンずるーい!」
「だれがオバサンよ、キーッ!!」
「オーナー、ここは若い子に譲りましょう」
……やれやれ、ここは三人いっぺんに相手したるか。
と、真浦が半身を起こした、そのとき——
天井の隅の方で染みが蠢いた。
(まだ、そないなところにおったんかいな。あんさんも諦めの悪い死神はんやな)
真浦は天井の染みに向かって『はよ、
死神は苦笑らしき揺らめきを見せると、染みも影も霧散してどこかへ消え去るのであった。
ゴーカイ伝説 魔羅道打 完
ゴーカイ伝説 魔羅道打 八田文蔵 @umanami35
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます