ゴーカイ伝説 魔羅道打

八田文蔵

第1話 そそり勃つ極太バット‼︎

 白熱した試合となった。

 ここ豪志園球場では、六甲タイタンズと東京グレイツが熱戦を繰り広げ、3対3のまま9回裏の攻防に突入した。


 一塁側のタイタンズベンチでは名将・坂崎正道さかざき・まさみち監督の采配がずばりと当たって、1アウト1塁2塁とサヨナラの好機を得ている。


(さて、どうしたものか……)


 坂崎はチラリと傍の青井未央あおい・みおをみた。

 右腕の皮膚をポリポリと掻いている。

 未央は球団広報に配属されたばかりの新入社員だ。ピンチの場面や、逆にチャンスの場面でも焦りや興奮を隠せず、右腕の前腕部を掻きむしって、その部位だけが赤く腫れあがっている。


「だれか、真浦を呼びにいってくれ」


 坂崎がいうと、即座に未央が反応した。


「あたしがいってきます!」


 いうが早いか未央が風のように飛び出してゆく。


「お、おい待てっ!」


 バッティングコーチの田村が呼び止めたが、既に未央の姿はベンチにはない。


「いいんだ、いかせてやれ」


「しかし……」


 心配そうな田村の視線を平然と受け流して坂崎がいった。


「いくらあいつでも、試合中にそんなマネするわけないだろ」




 未央はベンチ裏の代打控え室に向かった。

 そこには代打専門のバッター、真浦道太まうら・どうたという選手がいる。

 聞けば、相当破天荒な選手だという。

 未央はまだ、真浦に会ったことがなかった。

 コンコンと軽くノックして控え室に入る。


「えっ!」


 その瞬間、未央は棒立ちになった。

 なんと、真浦は鏡の前で素っ裸になってバットを振っていたのであった。




 第2話につづく



















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