第13話 無垢なる少女の願い
大小さまざまなぬいぐるみの間から、こちらをじっと見つめている黒い瞳に真浦は思わず引き寄せられた。
「そや。わいが真浦や。真浦道太じゃ」
年の頃は17、8といったところか、端正な顔立ちの無垢なる乙女の瞳は、キラキラと少女マンガの主人公のように輝いている。
「璃子、ご挨拶なさい。真浦さんはお忙しいなか、わざわざあなたのためにお見舞いにきてくださったのよ」
母親の素子が常識と礼儀をはたらかせて璃子をたしなめた。
「すみません。あたし——」
「高宮璃子ちゃんやろ。話はきいとる。固いあいさつはなしや。お互いタメ口でいこやないか」
真浦はベッドサイドのイスにどっかと腰かけると、
「訊きたいことがおうたら、なんでも訊いてや。なんでもこたえるで」
「お願いがあるんです」
「おう、なんや。わしにできることがあったらなんでもするで」
「パパ、ママ。あたし、真浦選手と二人っきりになりたいの」
璃子が両親に視線を向けて懇願するような口調でいった。
「でも璃子、あんた……」
「いいんだ、わたしたちは席をはずす。真浦さん、ご迷惑でしょうが、しばし璃子にお付き合いください」
広志は妻の背中を押すようにしてドアの外に出てゆく。
病室は璃子と真浦の二人っきりの空間になった。
「なんや、お願いって?」
真浦が低い声をだした。
だが璃子はベッドの上でモジモジするばかりで、なかなかお願いとやらを切り出せないでいる。
「はよ、いえや。わしゃ超能力者ちゃうぞ、いわなわからんやないか」
促されて、やっと璃子が口を開いた。
「アレを見せてほしいの」
第14話につづく
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