入洛と武衛陣でのやり取り
京に辿り着いた我々は、逗留する予定の武衛陣へと向かった。
武衛陣に着くと、屋敷の門にて留守居役への取り次ぎを願う。
暫くすると、武衛陣の中に通され、屋敷の一室へと案内された。
通された一室で待っていると、数人が部屋の中に入ってくる。武衛陣の留守居役たちだろう。
平手五郎左衛門殿が、留守居たちと挨拶を交わし、武衛様(斯波義敦)からの書状を渡した。
留守居役の長の者が武衛様からの書状を読む。読み終えた後に、他の留守居役たちに書状を渡すと、平手五郎左衛門と話を始める。
「平手殿、先代様からの書状を届けて下さったこと感謝致す。
先代様からは、貴殿等、織田弾正忠家の家臣たちを逗留させよとのことであったので、直ぐに準備させる」
「忝のうござる。これは、我が主から武衛陣の方々への御礼にございます」
武衛陣の留守居役は、武衛様の書状を読んで、逗留を認めてくださり、平手五郎左衛門殿は、織田弾正忠様から武衛陣の留守を守る斯波家の家臣たちへ、銭や米、布などの土産を渡す。
「忝ない。都での生活も苦しいので、ありがたく受け取らせてもらおう。
武衛陣の屋敷はまだ良いが、他の守護や奉公衆の屋敷、公家の屋敷などの多くは酷い有り様よ」
「左様にござるか。我が主は、武衛様を支援させていただいておりますれば、武衛陣にも取り計らう様に伝えておきまする」
京の守護や奉公衆、公家たちの生活は苦しいらしい。平手五郎左衛門殿も、織田弾正忠様が武衛様を支援しているので、武衛陣にも支援をする様に、弾正忠様に伝えると応えた。
「忝ない。京の斯波家の縁者たちも中々苦しい生活を送っているが、今川那古野氏の当主である今川左馬助殿が、京へ逃げ延びてきたぞ。
斯波家の縁者たちも生活が苦しいのに頼られて、困っておった。
今は京の今川那古野氏の屋敷におる様だが、尾張国から持ち出せた物が少なく、今川左馬助殿たちも生活が苦しい様だぞ。」
武衛陣の留守居役が、今川左馬助が斯波家の縁者を頼って、京に逃れてきたことを教えてくれる。
今川左馬助たちは、斯波家の縁者に迷惑を掛けつつも、京の今川那古野氏の屋敷で暮らしている様だが、その生活は苦しいらしい。
「今川左馬助が尾張国を追放されたことで、那古野家の家督は、本来の継承者である那古野高義殿が家督を取り戻されております。
那古野家の家督を正統な御血筋に戻すことには武衛様も承認されております故、何か問題ありましょうや?」
「いや、問題は無かろうな。
先代様からも、那古野高義殿が那古野家の正統な当主であると書状に書いておられた。
また、先代様は今川左馬助殿たちが落ち着かれたら、姫様と左馬助殿を離縁させるおつもりらしい。
斯波家の縁者たちにも伝えるようにと書かれておられた」
武衛様は、今川左馬助と姫様を離縁させるおつもりの様だ。
武衛陣の留守居役たちに、離縁の手配をさせるつもりらしい。
「今川左馬助殿は、織田弾正忠家に所領を奪われたとか京中で申しておるが、駿河今川家が那古野今川氏を乗っ取ったことは知られておるし、乗っ取った駿河今川家は足利将軍家に逆らうなど、京での評判が良いとは言えぬから、相手にしておる者も多くない。
先代様が那古野高義殿を支持していると言う話が伝われば、今川左馬助殿を相手にする者も少なくなろう」
駿河今川家の先代の今川氏親が足利将軍家に反する行動を取っていたため、京での評判はあまり良くないらしい。
武衛様が那古野高義殿を支持していることを、武衛陣の留守居役たちが広めるであろうから、今川左馬助の立場は悪くなっていくことであろう。
その後、武衛陣の留守居役たちと京や畿内の情勢を聞いたり、世間話などを終えたら後、逗留する部屋へと案内され、京での活動の準備をするのであった。
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