第6話エスカトラの女4
...でかっ!。
...でーか!。
「何だこれ!何だこれ!うわあぁぁぁぁぁぁ!。」
「うるさい!。」
寧ろおまえの声にビックリするわ!。
この兵士、多分兵曹だ。
10メートル以上ある。
黒い鎧のような戦闘服に、龍?何かの絵が描かれてる。
ナジマだ!。
神話の戦闘神。
ハイドラの神話。
ハイドラ軍だ。
「か、こ、こ、か、こき...。」
...う、うまくこ、声が出ない。....
「わ...が...怖....か?。ワッハッハッハッハッ!。」
聞き取れない...。
笑い声がまるで地響きだ。
「とって食っ...せん...安心...い。笑」
食べる?!。
食べられる!?。
...ドタン...
「キャー!だ、大丈夫?。」
ビンセントが倒れた。
気絶した...。
いつも。おまえは...。
おばさんと女の子もただただ目を見開いてる。
噂には聞いていたけど、ヒドウィーンってこんなにデカいんだ?汗。
...ズダドン...ズダドン...ズダドン...ズダドン...
!?
特大の旗を持った兵士が走って来る。
さっき川の中にいた兵士。
地面が揺れてる。
...ゴゴゴーーーーーゴゴゴゴゴゴゴゴーーーーー...
...バシン...ガッツン...バラバラバラバラ...
通信塔みたいな旗で、高速道路の横をこすってる。
...ガツン...ガラガラガラバラッ...バラッ...
あぁあぁあぁ。崩れてる。
こんなに大きな音がしてるのに、兵士は全く気づいてない。
「...ノリエガ様!。進軍のご指示を...」
これまた、聞き取れないほど低い声。
「ハノイゲートに続きサブルゲートが開く。今回バグー軍と我が軍は連合軍としてケラム討伐に出る。ザバナという種の討伐だ。大量発生している。お前達の国とも連合軍を編成している。」
耳が慣れてきた?汗。
!?
で、でも...。
お前達の国って言った...。
背筋が凍る。
バレてる。
この辺りは、ヒドゥイーンだけじゃない。アマル人も、アトラ人も普通にいるはずなのに。
何で分かった?。
「いつもなら今頃もう灰になっている。あれでな。ワッハッハッハッハッハッ!。」
ひぇっ!。
デカい声。
ノリエガって言う人が、オグワンを指差して笑う。
「うわああああぁあぁぁぁぁ!。」
うっ、うるせぇ!。
ま、また耳元で...。
わざわざ。
ビンセント!。
寝てろ!。
「キャアーー。」
わぁ!。
えお?。
あぁ...こいつらのせいで2度びっくりした...。
「マダクと北のクシイバがいる限り、ハイドラはアトラと戦わない。お前達のような愚か者も生きていられる。ワッハッハッハッハッハッ!...」
うわっ!。
声デカっ!。
空気がビリビリ言う。
何これ...。
ノリエガさんが続ける。
「今回はハイドゥクご采配のもとハイドラ軍20万。バグー軍100万の連合軍が出撃する。サブルのゲートは全て開門している。見逃してやる。速やかに、立ち去れ。ケラムの獣どもが人間を求めて入ってくる。」
見逃すって...言われなくてもそのつもりだったけど...。汗。
ノリエガに叩きつけられたタイオールが壁にこびりついてる。
まるでイチゴアイスみたいに...。
ここを立ち去っても、入って来たケラムの生き物に出くわすかもしれない。
歩いてはどこにも逃げられない。
エルカーさえ修理できれば...。
僕達のエルカーは、道の向こうで大破してる。
車体がねじ曲がってる。
殆どスクラップだ。
爆発しないのが不思議なくらい。
ビンスもエルカーを見てる。
「どうした?。飛行車が壊れて動けんのか?よし、助っ人を呼んでやろう。お前達と同じくらいの者を。ワシの懐刀じゃ。」
この人、意外に紳士だ。
ノリエガさんが、旗を持った兵士に合図を送った。
兵士が肩に向かって何か話しかけている。
きっと通信機。
防水だ。
多分。
!?
エルカーがある辺りに、突然、大きな兵士が現れた。
煙のように...。
どうやって...?
5mくらいの大きさ。
ノリエガさんほどじゃないけどデカい。
ノリエガさんは、生身の人間。
なのに、その兵士の倍以上ある。
兵士は軽々と壊れたエルカーを拾い上げた。
びっくりすることに、片手で...。
ゆっくりと歩いて、こっちまで来る。
この兵士、人間じゃない。
金属の回転音が聞こえる。
ビンセントがコッチを見てくる。
何が言いたいのか分かる。
2年前ジンムで見た銀色の兵曹と良く似ている。
金属の皮膚。
でも、目は車のヘッドライトみたいだ。
きっと第一兵曹。
変形する途中の状態...。
兵曹は、おばさんと、女の子をエルカーに乗せると、軽々と肩に担ぎ歩き始めた。
まるで、空の紙箱を持っているように。
「あなたは、ジンムで、ジンムで戦っていたあの!。」
兵曹は、不思議そうにビンセントを見返した。
僕も思わず叫んでいた。
「あなた、ユーライって呼ばれてた兵曹ですよね!?。」
「なぜその名を?。」
兵士は初めて反応して、立ち止まった。
何かまずいこと言ったかな...。
血の気が引く。
話しかけたのはこっちなのに。
やはり兵曹は怖い。
ケラムの生き物よりも獰猛。
「僕はネオジンムで、あなたとアダムっていう兵曹に命を救われたんです。」
お、おい!。汗
空気読め!。
バカ!。
「それらはアトラの軍事兵曹だ。私とは関係がない。」
「でも。」
「黙ってついて来い。おまえ達は気軽に話しかける立場にはない。この先にハイドラの安全地帯がある。お前たちはついている。ノリエガ様の温情に感謝すべきだ。ノリエガ様は、マドワ アンティカ。ハイドゥクに次ぐ者。普通はお前達のような者の相手はなさらない。」
兵曹は、そう言うともくもくと歩く。
...アンティカ?。
「ハイドゥクの後継者の呼び名だ。アダムより強いかもしれない。」
ビンセントが囁く。
ノリエガさんが?。
アダムより...?。
全然、そう見えない。
申し訳ないけど。
アダムは、悪魔の申し子。アトラを護ってはくれる。
でも、人に作られた破壊神だ。
「おまえ、ザザルスの戦い知ってるだろ?。」
!?
汗。
「あのザザルスの!?。」
「そうだよ。不動明王だ。」
え!?。
ノリエガさんがあのザザルスに...。
僕たちは、階層をいくつも登り、三階層目の公道についた。
兵曹はエルカーごと、おばさんと、女の子を降ろした。
おばさんは泣きながら地面にひれ伏してる。
兵曹はおばさんに何かをあげた。
きっと薬だ。
「...おまえたちを助けたのは私ではない。あの者達だ。...」
相変わらず冷たい態度だ。
もっと優しくしてあげたら良いのに...。
おばさんは、アイちゃんの手をひき、僕たちの前に来た。
あ。汗
額を地面につけて、話し始めた...。
「あ、あ、あ、ありがとう... ごご、ございました。泣。ありがとうございました。私たちのようなものをお助けいただきまして、何て、何てお礼を言って良いのか。..ありがとうございます。ありがとうございます。あなた達は命の恩人です。」
おばさんは、震えてる。
「あぁあぁ。そんな。...」
ビンセントも土下座しはじめた。
僕も?。
するか...。
バランスが...。
ケイはアイちゃんの頭撫でてる。
「アイちゃん。元気になった?。笑」
「私、私。このご恩は一生かかっても。泣。アイ!アイもお礼を言いなさい...。ホントにホントにありがとうございます...。」
おばさんの声、悲鳴みたいだ。
こっちまで、涙が出てくる。
おばさん、アイちゃんがホントに可愛いんだ。
ずっと手を握ってる。
兵曹が言った。
「ここは安全だ。少し休むが良い。」
...ドゴーーーーン...
そう言うと、掴んでいた、エルカーの残骸を離し、食料を広げ、僕達に勧めた。
そして、陸橋を大河を望める場所まで歩いて行った。
この陸橋は、地上から200mくらいの高さ。
ボルガ大河の本流は、この陸橋の高さがあって微かに反対側の川岸が見える。
街の明かりと、エスカトラの光り。
そして、青と黄色の街路灯がボルガ河に映ってる。
さっきの惨劇が嘘のように穏やかだ。
風が涼しい。
花の甘いにおいを運んで来る。
虫が鳴いてる。
第二衛星アルゴの蒼い光りが優しい。
...チカッ...
空が光る。
...チカッ...チカッ...チカッ...
空が落雷のように白む。
...バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ...
...ズッ...ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...
...ユッサユッサユッサ...
地面が揺れる。
!?
「な、何だ!?。汗」
ビンセントも動揺してる。
太い光の柱が落ちた。
雷の数千倍...。
ケラムの方だ。
ケイは相変わらず、アイちゃんと話してる。
僕たちも陸橋の方に向かった。
「オグワンが地上のザバナの群を攻撃をしている。まもなくハイドラとバグーの連合軍の進軍が始まる。道を開いている。」
兵曹が言う。
...チカッ...チカッ...チカッ...
...バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ...
...ズッ...ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...
...チカッ...チカッ...チカッ...
...バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ...
...ズッ...ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...
...ユッサユッサユッサ...
兵曹は西の方向を指差し、おばさんに何かを説明している。
ボルガの対岸が騒がしくなってる。
川が荒れている。
水位が下がりはじめた。
「サブルゲートの水門が開いた。副門も全て開く。」
...ゴーーーーーーーーーーーゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴーーーーーーーーーーーーーーーゴゴゴゴゴゴゴゴーーーーー...
ザブルは、ハイドラ領のゲート。
水性民族ヒドウィーンのゲート。
だから水門。
地響きが聞こえる。
「見て!。バグー軍が合流するよ。」
「ホントだ!。バグー人も水に入ってる」
「バグダディスも、もとはヒドゥイーンと同じ種族だ。水に対応できる。おまえ達アトラ人よりも。」
え?。そうなのか...。
ボルガの中域が、灰色のバグーの兵でびっしりと埋め尽くされていく...。
まるで、灰色の絨毯。
「凄い数...。」
「このままハイドラに攻めて来たりして。笑」
「バカ!。」
怒られるぞ!
何てこと言ってんだ。
兵曹が睨んでる。
「ハイドゥクや、ノリエガ様、カルタゴ様がいる限り、ゾットはその気にはならないだろう。」
ゾット?。
....ウーーーーーーーーーーーー...ウーーーーーーーーーーーーーーーーー.......ウーーーーーーーーーーーー...ウーーーーーーーーーーーーーーーーー.......ウーーーーーーーーーーーー...ウーーーーーーーーーーーーーーーーー.......ウーーーーーーーーーーーー...ウーーーーーーーーーーーーーーーーー.......ウーーーーーーーーーーーー...ウーーーーーーーーーーーーーーーーー...
遠くで獣が咆哮をあげ初めた。
圧倒的な数。
凄い圧迫感を感じる。
音源からこんなに離れているのに...。
辺りを、反響してる。
途方も無い爆音...。
「砂獣が鳴いてる。凄い数だ...。」
ビンセントが呟く。
砂獣?。
大きな兵曹が出てきた。
「バグーの兵曹 ゾットだよ。」
バグー軍と反対側にも、続々と兵士が姿を現わしている。
「ハイドラ軍だ!。」
ビンセントは興奮してる。
ボルガ大河の対岸にはバグー軍、こちら岸はハイドラ軍でびっしり埋まってる。
兵隊の動きが慌ただしくなってきた。
拡声器で何かが叫ばれてる。
「お出になられる...。」
兵曹が口を開いた。
え?!。
ビンセントもこっちを向いた。
ケイも来た。
...ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー...
120万全軍が一斉に雄たけびを上げる。
対岸のバグーの兵士達も...。
敵将なのに...。
もの凄い雄叫びだ。
この数、この音圧...。
怖い...。
!?
地鳴りだ。
陸橋が激しく揺れている。
こんなに離れているのに...。
黒い鎧と白い鎧の巨大な兵士達が二手に分かれ大河から姿を現す。
最後尾にいる兵士二人は桁外れに大きい。
ゾッドがまるで子供に見える。
「マドワアンティカ。マトゥバ アンティカだ。ノリエガ様と、カルタゴ様だ。兵曹を上げられた。そしてダルカン、ラキティカ、イブラデ...。」
兵曹を上げる?。
ダルカン?。
大きな兵士二人は黒と白の牙虎(ヒドゥィーンタイガー)に乗っている。
ヒドウィーンタイガーは大きい。
でも、2人の乗ってるそれはその10倍は大きい。
あり得ない...。
「あれ、兵曹獣だよ...。」
ビンセントが。
兵曹獣?
!?。
何だあれ!?。
河の中から。
ゆったりと...。
......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー.........ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー......ウオォォォォォォォォォーーーーー...
全軍120万の歓声は最高潮をむかえる。
もう何も聞こえない。
空気さえ真っ白に感じる。
あぁぁ...。
川の中域から。
青い鎧を着た巨人が...。
青い巨人が...。
ゆっくりと姿を現わす。
大きさはアンティカの比じゃない。
身体ごと吹き飛ばされそうな振動。
陸橋が大歓声で大きく揺れる。
大気が割れる...!
銀色の兵曹も興奮してる。
この冷静な兵士が。
身を乗り出して巨人を見てる。
「新しいハイドゥクだ!。史上最強のハイドゥク!。ハイドラの歴史上最も偉大なハイドゥクだ!。我らの誇り。我らの希望。」
ハイドゥクはゆったりと川岸に向かって歩いている。
...キーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ジェットエンジンのような回転音が響いている。
「すげえ...あれがハイドゥク。....」
きっと、まだ、第一兵曹だ。
人間に近い姿をしてる。
なのに、こんなに大きい。
悠々と大河を渡って行く。
サーチライトに照らされるハイドゥクは、白い顔で、目は切れ長で少し顎がしゃくれている。豊かな顎鬚を蓄えている。
ゆったりと岸へ向かう姿は、噂に聞く兵曹とは思えない。
穏やかで優しい。
でも、どこかもの悲しい。
みんなの心の琴線を振るわせる。
そんな空気を漂わせてる。
大小さまざまな120万の兵が、一瞬にしてハイドゥクの従者以外の何者でもなくなってしまった...。
それほどハイドゥクは神々しい。
「あれがハイドゥク。あれがエイジン•ローデシアの不動明王...。」
ビンセントが呟く。
...ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド...
地響きが続き、ついにザブルゲートの主門が開き始めた。
軍楽の調子が変わる。
!?
対岸が動く!。
激しく大太鼓の音が響き、バグー軍が進軍を開始した。
「さあ、我々も進もう。安全地帯に、フライヤーがある。」
「何で私たちを助けてくれるんです?。」
ケイが聞いた。
「おまえ達はなぜあそこにいた?。」
言葉につまる。
「おまえ達は、ハイドラ領に入った時から監視されていた。おまえ達は自国アトラの機密施設に到達するためにハイドラ領域を通過しようとした。」
不安を映すように、ますます、進軍行進曲は激しくなっていく。
僕達は、ハイドラ軍の基地の前まで来た。
銀色の兵曹は、手を上げ、警護をしている兵士と話をした。
警護の兵士は頷き、エルカーを引き受けた。
どれも兵曹に負けず劣らず巨人だ。
警護のヒドウィーンが、2人がかりでエルカーを持ち上げる。
兵曹は振り返り言った。
「おまえ達の成功を祈っている。」
ケイは言った。
「名前を聞かせてください。」
「聞いてどうする?。」
兵曹は向こう側に去って行く。
「俺はビンセント!。こいつはタク!。」
「私はケイ!。」
兵曹はアルバーンの深い山の中に消えて行った。
返事は無い。
「...我が名はタイト...」
山頂から声が聞こえる。
そこには、ケイやビンセントと変わらない若者が立っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます