第5話エスカトラの女3


...


...


...


え?。


え!?。


衝撃が来ない。


どした?


!?


..グウェ...グウェッ...グウェッ...グウェッ...


タイオールが宙に浮いてる。


うそ?。


何で?。


苦しそうに吠えてる。


サーチライトに照らされて壁に映ってる影。


まるで子供のように足をバタつかせてる。


必死に何かから逃れようとしてる。


タイオール以上に大きい何か。


巨大な影。


デカい。


デッカい!。


今度は何?


「と、トリオール....かも。」


ビンセントが。


...グウェ...グウェッ...グウェッ...グウェッ...


タイオールの声がさっきまでと全然違う。


まるで怯えたように子犬のようだ。


トリオールって、それほど強い奴か....。


防護壁のどこかが欠壊してるんだ。


じゃなきゃ、こんなに立て続けにケラムの生き物が現れるはずがない。


「今だ!。行くぞ!。」


ビンセントが女の子を背負い走り出した。


俺はおばさんを...。


あ!?。


ビンセントずっこけそう!。


あいつ勇敢だけど、ヘタレ。笑。


「やだ。何やってんの?。笑」


こんな時に、爆笑してる奴もいるし。


ケイがビンセントの背中を押す。


凶暴で、無敵に見えるタイオールにも天敵は多い...。


タイオールをクロマニオン原人としたら、トリオールがホモサピエンスだ。


違いは、トリオールとタイオールは同時代に生きて、トリオールがタイオールを好んで食べること。


トリオールは、知能でも、腕力でもタイオールを圧倒してる。


そして、感情をコントロールできる。


進化は残酷だ。


...ダッ、ダッ、ダッ、ダッ...バタ、バタ、バタ...ドタ、ドタ、ドタ......ダッ、ダッ、ダッ、ダッ...バタ、バタ、バタ...ドタ、ドタ、ドタ......ダッ、ダッ、ダッ、ダッ...バタ、バタ、バタ...ドタ、ドタ、ドタ...


はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。


ふぅ、はっ、はっ、はっ。


真夜中の海みたいな漆黒の闇を走り抜けて、僕達は、道の反対側まで走って来た。


この無駄な13車線を。


おぞましい、化け物も、獣や何かの腐る強烈な匂いも、漆黒の海の向こうだ。


時おりサーチライトに照らされる。


化け物達のいた巨大な柱や、防護壁が。


「あれ見て!。星が落ちて来た。」


ケイが。


え?。


...チカーッ...チカッチカッ...チカーーー...チカーーーーー...


一際まばゆい星がゆっくりと降りてくる。


まるで、シャンデリアのようだ。


冷たいけど透き通った光。


「ハイドラの軍事衛星だよ。」


ビンセントが言う。


星より煌びやかだ...。


「ここに来る途中に見たやつ?。」


「綺麗ー。」


近づくに従って、様々な色に発光し始める。


「そう。さっきのと同じだよ。オグワンだ。あの光は識別灯。ペギリュウムライトだよ。ハイドラ軍へのメッセージだ。」


「何で軍事衛星があんなに高度下げてるの?」


「さぁ?...。あっち、もう一個来たよ。...」


ハイドラの軍事衛星が綺麗なのは有名だ。


胸が苦しくなるほど。


赤や黄色。青、緑。


流星や花火と同じ扱い。


ホントに話しかけてくれてるみたいだ。


人工物だし兵器。なのに、神秘的。


時間を忘れてしまう。


...ズドーーーーーーーン...


地面が揺れる。


道の反対側だ。


振動がこんな所まで。


「あっ!。あれ!。見ろ!。た、タイオールが!。」


巨大な影がタイオールを防護壁に敲きつけた。


サーチライトの光。


血が飛び散ってる。


ぐっちゃグチャに潰れ、原型をとどめてない。


一体何が...。


...ブッウオオオーーーーーーーーーーーー...


な、何?。


こ、こ、今度は?。


...ブッウオオオーーーーーーーーーーーー...


...ブッウオオオーーーーーーーーーーーー...


角笛?。


軍の角笛みたいだ。


眩しい!。


目が焼ける。


何だ?この光。


「眩しい!。」


「きゃっ!。」


これ、ボルガ大河だ。


突然、強い光がボルガ大河を照らす。


車道から見下ろす大河。


この高さから見ても反対側の岸が見えない。


ボルガは巨大だ。


「ねぇ。見て!。あれ!。」


ケイがボルガの中域を指差す。


何かが水の中から。川の中域で。


「何だろう?。」


ビンセントが言う。


ホント何だあれ?。


二本の鉄塔が伸び始めた。


何で川から鉄塔が...。


あ!。


「見ろよ!。あれ!。兵曹だぜ!。」


鉄塔を持った巨大な兵士が、大河の中からゆっくりと姿を現す。


かなりの体格。


まるで石像みたいだ。


違う。


鉄塔じゃない。


旗。軍旗だ。


あれは!


「見ろ!。」


「あぁぁ...。汗。人?。デカくないか?。」


「何で川の中から...。」


滝のように身体から水が落ちてる。


何か相談してる。


防護壁の上から無数のサーチライトを浴びて。


さっきの陰惨な静けさと闇が嘘のように。


瞳が焼けるほど眩しい。


光で溢れるこの光景。


夢を見てるようだ。


何が始まるんだろう。


ケイも、ビンセントも固唾を飲んでる。


...ウウゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーゥ......ウウゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーゥ....『...kkjjjkjhh gfdffgghfc fddr ookju hgggffftu ddsfff fffy uhhgghj cvcghhjj kllkkk.』


ウウゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーゥ......ウウゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーゥ...『... cxxxxx bhhhgygh kjiolbbgggy iujhhggfffr cccxddxd hh jikjgggghf juikjhggghssserfdd poiikbvcfgcc ...』


彼方の放送塔からサイレンとワイナ語の放送が一斉になり響く。


反響してる。


この光で一気に視界が広がる。


息の詰まる暗黒は、こんなに明るく広く拓けた場所だったんだ...。


立体的な景色。


ここは、境界の国、ハイドラ首長国連邦の南の領土。アルバーンに隣接してる。


!?


ヒッ!。


な、何だ...?。


大きな獣の鳴き声?。


背後から野太い音がする。


「...お...ち....じか?。...」


何だ?。


人の声?。


音が低すぎて聞き取れない。


ハクア語?。みたいだ。


「おまえ達無事か?。って言った?」


ビンセントが言う。


僕たちの国アトラの公用語。


...きょ、きょ、巨人だ...


影から、ヌッと現れる。


と、とてつもない。


うわぁ!。


「キャッ。」


「うわあぁあぁぁぁぁぁぁぁ!。」


耳元で叫ぶな!。


ビンセント...こいつ。


...でかっ!。


...でーか!。


「何だこれ!何だこれ!うわあぁぁぁぁぁぁ!。」


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