第4話エスカトラの女2

刀が、芋虫の突進で折れた。


こいつ、皮膚は厚いし、小型のブルドーザーくらい力ある。


でも、動きは鈍い。


これじゃパンデミア(生態系)では生き残れない。


どんな成体になるんだろう...。


...ガン...カラーーーーン...


...バスッ...


刀を捨てて、キックをぶち込む。


辺りが振動するほどだ。


なかなかのキック力...。


我ながら。笑。


...シュゥゥゥーーーーーーーーーー...


芋虫の粘液で、蹴る度にブーツが白煙をあげる。


ケラムの生き物には、体液が強酸になってる奴がいる。


生き残るため。


...ドスッ!...


...ドスッ!...


蹴る度に、尻尾についてる白い顔が、苦痛に歪む。


効いてる!笑。


溜めてーー...。


おーりゃあ!。


思いっきり蹴りをブチ込む。


...ドッスンッ...


いい音!。笑。


倒れちゃったけど、あのおばさん大丈夫かな?


こんな時間にザブルゲートの近くを歩くなんて...。


もう一回....。


...ドッスンッ...


...ゲーーーゴーーーーー...


うわっ!。


ゲップしやがった。


芋虫のクセに。


...ゴボッ...ゴボッ...


何か出てきた。


げっ!。


何だこれ!。


「くっさ!。」


何かが腐った臭い。


凄く臭い...。


吐きそう。


丸呑みにされた犬か熊...。


人の身体も出てきた!。


こいつの口から。


「うわっ!。うわっ!。うわっ!。」


ひえぇぇ...。


芋虫がまた突進して来る。


しぶとい。


諦めて死ねっ!。


そうだ、悪さするあたま取っちまおぅ。


芋虫の背中に乗って尻尾の顔を掴む。


繋がってるとこ細いのに...くっそ、硬ってえ。


「タク!。それギルメアの幼体っ!。群体だぜ!。」


ビンセントだ。


ぎ、ギルメア....?。


赤い綺麗な...蝶々?。


だよね。


が、こ、こんな...?。


違うギルメア?。


「その擬人頭をもぎ取れ!。統率が取れなくなってバラけるぞ!。」


「さすが昆虫博士。」


「昆虫博士じゃねーわ!。怒」


うわ、地獄耳。


この白いキモい顔、擬人頭って言うんだね。


芋虫が左右に揺れる。僕を振り落とそうとする。


逃げようとしてる。


「取れねぇ...。頭...。」


僕は擬人頭を殴り続けた。


...ベチャ...


...ベチャ...


...ベチャ...


変な音...。


擬人頭は苦痛とパンチでぐちゃぐちゃに歪む。


キモい。


何この表情...。


妙に人間臭い。


おぇ...。


!?


「キャー!。」


「俺のエルカー(飛行車)が、エルカーがっ....。」


ケイとビンセントの叫ぶ声が。


芋虫が動き出した!。


うーわっ!。


...バムゥッ...


ギルメア(大芋虫)が柱に激突する。


....ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...


飛ばされる!。


うわあぁ!。


あっあっ。


やられた!。


飛んじゃってる。汗。


俺飛んじゃってる...


うわっ。地面来た。


アスファルトに激突する。


...バスッ...


いて。


止まんない。


...ザザザー...


滑って行く...飛ばされた勢いのまま。


うわっ。


...ガガガガガギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギーーーーーー...


火花が飛び散ってる。


ベルトのバックルがアスファルトに擦れて。


滑って行く。


エルカー(飛行車)のヘッドライトで照らされてる方へ。


上向いたまま。


...ズザザザ...


「うわぁぁぁぁぁ!。」


な、何これ。


何これ?。


何だこれ!。


黒い毛だらけの化け物が...。


ストップモーションで。


上の道路を支える大きな柱の影から。


「何だこれ!。何だこれ!?。うっっわぁーーーー!。うっっわーーー!。」


大木のような数本の長い脚が、毛だらけで黒い重そうな胴体を支えている。


爪?。


真っ黄色...ピカピカ光ってる。


ビル並みの高さ...。


「で...でっか...。」


毛だらけで真っ黒な胴体は、中年のゴリラみたいに肉が垂れ下がってる。


これ、これ蜘蛛!?。


これ、デカイ蜘蛛!?。


「...うわあぁ!。助けろ!。早く!。...」


あいつら。


あわゎ...。


捕まってんじゃん。


黄色いピカピカの爪で囲われてる。


この鮮やか過ぎる色。


毒あるよね?。


絶対...。


サーチライトに照らされる度、ピカピカ光ってる。


そぐわない...この場に....。


...ビュュゥ...


...ガンッ...


大クモが、エルカー(飛行車)を串刺しにした。


二本の前脚で。


...ググググ...ガガガ...


...タンタンタン...


エルカー持ち上げて、蟹のような口でかじり始めた。


口の中真っ赤だ。


...ゴリゴリゴリゴリ...


...ゴリゴリゴリゴリ...


かじられたエルカー(飛行車)の塗料や部品が、ビンセントとケイの頭上に降ってる。


バラバラと。


「避けろ!。危ない!。」


「避けとるわ!。言われんでも!。」


「やだ、もう。髪にゴミが...。」


エルカー(飛行車)の反重力板(アルマダイを利用した浮遊装置。)は半分以上が脱落して、ボディから垂れ下がっている。


...スゥーーー...


...ブウゥワッ..


何を?。


バカ蜘蛛。エルカーを持ち上げた...。


...ブウゥーーーン...


...ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...


叩きつけた...。


...バシッ...


スパークする。


地面に。


...ドダンドダンダン...


「うわっ!。」


「ギャァーーー!。」


食べ物じゃないのに気づいた?。


頭悪い。こいつ。


...ダンッ...


エルカーぎバウンドする。


...ゴガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ...


火花を散らしてアスファルトを滑ってる。


...ゴガーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...


柱に激突した。


!?


何あれ!?。


大グモの身体の下についているの。


ピカピカしたの。


卵?。


キモい!。


動いてる...。


サーチライトに照らされる。


ゲ...目だ。


目!。


大小100以上ある。


ビンセントとケイを見てる。


爬虫類みたい...虫なのに...。


そう、ワニみたいな目だ。


「私たちを餌だと思ってる...。」


ダメじゃん?。


2人食べられちゃうじゃん?!。


「待って!。今いく!。」


「タクっ!。あっち!。あっち!。」


ケイがおばさんと女の子の方を指した。


「俺たちは大丈夫!。....じゃないかも....うわあああ!。」


ビンセントが。


どっちだよ!。怒。


...ビュオオオウゥゥッッ...


大グモが、爪振り下ろした。


ビンセント目がけ


やばい。汗。


「...ひぇっ!。...」


辛うじてよけた。


ナイス!。


あいつピースしてる。


泣きそうな顔で。


カッコ悪い。


あ!?。


ギルメアがおばさんと女の子の方へ行った!。


今度こそ、そのキモい首。引きちぎったる。


おりゃ!。


ギルメアに後ろから飛びつく。


...ヌルッ...


やっぱり滑る...。


でも、今度は離さない。


ギルメアが擬人頭のついた尻尾を振り回す。


凄い力だ。


激しく振ってくる。


こいつ、振り落とす気だ。


...ダンッ...


い、いてぇ。


地面に叩きつけられた。


絶対に離さんぞ。


この手を離さない。


絶対に。


おまえ、おばさん達を呑み込む気だろ?!。


させねぇ。


絶対に!。


こいつ焦ってる?。


毛虫のクセに...。


悪いけど、俺、結構力あるから。


怪力だから。


フライパンとか、ヤカンとか、ぺちゃんこだから。


水筒とか鍋とか、片手で、ヒラヒラだから。


「おおおりゃあああ!。」


思いっきり、思いっきり、ギルメアの擬人頭を締め上げる。


...グエェッ...オオオオかぁサーーン...


ギルメアの擬人頭が悲鳴を上げる。


キモい声出してんじゃねぇよ!。


体液が噴き出してる。


...シューーーーーーーー...


つなぎがギルメアの粘液で白煙を上げてる。


「気をつけろ!。そいつ!。歯が。歯がある!。サメみたいな歯が!。」


ビンセントの声が。


「キャアーーー。」


ケイの悲鳴。


...ガツッッ...


クモの爪で歩道が砕け散ってる。


...バラバラバラ...


「すぐ行く!。このっ!。...」


こいつの頭ぁー。


引き抜けろ。


頭ぁーー。


うう。


尻尾滑る。


滑る。


足が滑る。何度も。


思いっきり引っ張った。


せいのぉぉぉぉおっ!。


...メリメリメリメリ...


...ブシャァーー...


ひぇっ...。


もげそうになった擬人頭の付け根から、黄色い体液が噴き出した!。


...オカぁサーン...


擬人頭がまた悲鳴を上げてる。


何これ、何これ。


また、変なもん出てきた...。


首の付け根からピンクのミミズみたいなのが何百本も。


蠢いてるし、臭っ。


臭っ!。


何これ?。


何これ??。


触手?。


キモい。


キモ過ぎる。


おえー。


でも、擬人頭がちぎれかけてる。


俺のパワー、マジすげぇ。


半端ねぇ。笑。


!?


擬人頭の口が、大きく開いた。


ゾンビの口みたい。


今、擬人頭の4分の3は口....。


ホントキモい!こいつ。


色々仕掛けてくる。


今度は何だ!?。


...ギュワーギュワギュワギュワギュワギュワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワ...


大きく開いた口から、甲高いサイレンのような大きな音が...。


鳴き声がだんだん大きくなる。


他に何も聞こえなくなった。


逆にバカグモが、おとなしくなった...。


項垂(うなだ)れてる。


うわっ!。


...バタバタバタバタバタバタバタバタ...ギギギギギギギギギギギギギギギギ......バタバタバタバタバタバタバタバタ...ギギギギギギギギギギギギギギギギ......バタバタバタバタバタバタバタバタ...ギギギギギギギギギギギギギギギギ......バタバタバタバタバタバタバタバタ...ギギギギギギギギギギギギギギギギ...


凄い数の鳥!虫!コウモリ...。


飛び込んで来る。


吸い込まれるようにギルメアの大きな口に...。


どこにいたのこいつら...。


「...あなた!。あなた!。待って!。先に逃げてたのね?!。あなた!。ねぇ!。アイもいるの!。...」


!?


危ないっ!。


どうした?!。


おばさん!。


突然走り出した...。


娘さんの手を引いて。


ギルメアに向かって。


え?。


ダメでしょ。


普通に。


何やってるんすか!?。


「やだ。いやー。怖い。」


女の子は泣きはじめた。


だよね?。


「...あのお母さんおかしくなってるよ!。ケイ。ん?.......。ケイ?。...」


ビンセントが。


「...パパ!?。パパ?。ここにいたの?。パパ。...」


ケイ?。


「ケーーーーーーーイ!。どした!?。」


ケイが、黄色い爪を腕で押しのけ、ギルメアに向かって走り出した。


?!


嘘だろ?。


「け、ケイッ!一体、な、なーにやって!。げ?。お札?。あれ?。札束?。あそこに。あそこにも。何であんなところに。もったいない!。もったいな過ぎる!。今そっち行くね?君たち。待ってろ!。」


ビンセントも走り出した。


え?。


こいつら、おかしくなってる?。


ここは、リーダーの俺がしめる...。


やむを得ん。


「ゴォラアァ!!。何やってんだ。おまえら!。」


...キーーーーーーーーーーーーン...


耳鳴りが...。


右の耳だけ。


「タク...。タクヤ....。」


父さん?。


父さんの声?。


何で...?。


行方不明の父さん。


「ターク。久しぶり。」


「タクくん!。タクくん?。」


「おーい。クソタク〜笑。てめぇカッコつけやがって。笑」


え?。


アツコさん、マッツ、ジャン、イーノ。


懐かしい声。


何でここに?。


会いたかったよ...。


でも、右側だけ。


右の耳からしか聞こえない。


左の耳からは、相変わらずこいつの鳴き声が...。


爆音だ。


でも、懐かしい...。みんな。


思わずギルメアの擬人頭から手を離した。


しまった...汗。


振り飛ばされた!。


...ゴガンッッ...


潰れたエルカーに激突した。


頭ぶつけた。


痛てぇ!。


エルカーのヘッドライトが消えた。


しまった!。


...ガガガガガァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...


!?


突然、高いところから、爆音が響く。


何だ!?。


この爆音...。


...ドーーーーーーーーーーーーーーーーン...


...ビチャッ...


...ドーーーーーーーーーーーーーーーーーン...


...グチャ...


...ドンドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...


..ビチャン...


サーチライトが照らす。


暗闇の中、大きな何かが地面を何回も踏みしめている。


今度は一体...。


次々と...。


踏みしめるたび、地面が激しく揺れる。


ギルメアの鳴き声が止んだ。


...ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...


...シューーーー...


....シューーーー...


代わりに、何かの肉が潰れる音。


何回も何回も。


これ体液が何かを溶かす音?。


変な臭いがする。


サーチライトが辺りを照らす。


!?


無残に潰れたギルメアがいる。


グチャグチャだ。


内臓が飛び出て、体液が吹き出してる。


気持ち悪い...


あ!。


小石のようにバラバラに崩れはじめた。


バラバラになったいくつもの粒が、蠢いてる。


苦しみ悶てる。


粒はサナギ化する前のギルメアの幼体?。


成体のギルメアは、80cmくらいの、それはそれは綺麗な赤い蝶。


ケラムの虫には、このギルメアみたいに、幼体からサナギになる前に、エネルギーを蓄えるために、肉食の群体になるものがいる。


あの昆虫博士によると...。


そして、鳴き声で、物を破壊したり、お互いの成長を促進させるものもいる。


そこ鳴き声は、確か、レディエードって言われてる。


こいつは、幻覚を見せるタイプだ。きっと。


ギルメアはハイドラの公用語ワイナ語で、幻とか夢だ。


潰れた擬人頭の根元に生えたピンクの触手だけがいつまでも蠢いている。


...ガガガガガァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...

...ガガガガガァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...


!?


再び爆音が...。


大グモが吠えはじめた。


...ゴゴゴゴーーーーーーーー...


...ゴゴゴゴーーーーーーーー...


え?。


違う。もっと重い声だ。


何だ...


...ゴゴゴゴーーーーーーー...


...ゴゴゴゴーーーーーーーーーーーー...


何かいる?。


他の何か?。


この咆哮...今までのとは違う。


「うわーーー!。」


「キャーーー!。」


2人の悲鳴が、本気だ。


...ガツッ...


...バラバラバラバラ...


...ガツッ...


...バラバラバラバラ...


コンクリートの砕ける音が....。


サーチライトが爆音のする場所を照らす。


何だ....これ。


大蜘蛛より大きい。


10mはある。


ごつくて、黒い毛皮で覆われている。


大きな熊?。


10mの?。


また、サーチライトが。


...ゴゴゴゴーーーーーーーーーーーーーーーーーー...


...ゴゴゴゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...


牙のある口を開け雄叫びを上げている。


大蜘蛛が華奢なおもちゃに見える。


ごつくて重厚な巨体。


こんな大きな熊が....


鳴き声が2つ。


なんで?。


巨大な熊...頭が二つある。


首の1つがこっちを向いた。


目が一つで梟みたいだ.....


げ!?...


こいつ熊じゃない!。


「た、タイオールだっ!。」


ビンセントの声だ。


た、タイオール?。


ビンセントの声に反応して、巨大な熊、いや、タイオールが激昂する。


...ゴゴゴガガガガーーーーーーーーーーーー...


...ゴゴゴガガガガーーーーーーーーーーーーーーーーー...


...ゴゴゴガガガガーーーーーーーーーーーーーーーーー...


....やばい。これはやばい。...


大蜘蛛は、再び雄叫びを挙げた。


...ガガガガガァーーーー...


...ガガガガガァーーーー...


タイオールがその音に反応する。


タイオールの興奮は最高潮だ。


両方の頭から汽笛のような咆哮を上げる。


...ドスン...ドスン...ドスッ...ドスッ..ドスドスドスドスドスドス...


大グモの方へ突進しはじめた。


!?


タイオールは、足元のケイとビンセントを見つけた。


「...終わった...」


ビンセントの声だ。


掴もうとしてる。


大蜘蛛には目もくれない。


蜘蛛が大きな口を開け雄叫びを上げる。


錆びた金属が擦れるような音だ。


...ガガガガガァーーーー...


...ガガガガガァーーーー...


!?


あぁ...。


...ザクッ...


二本の黄色い前足でタイオールの腕を突き刺した。


...バシャドボバシャバシャ...


...ジャアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...


凄い量の体液が降って来る。


...シュゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...


アスファルトが溶ける。


...ゴゴゴガガガガーーーーーーーーーーーー...


...ゴゴゴガガガガーーーーーーーーーーーーーーーーー...


...ゴゴゴガガガガーーーーーーーーーーーーーーーーー...


タイオールが悲鳴を上げ両腕を引き離す。


...ボギィ、ゴン、バキバキ...


大蜘蛛の前足が引きちぎれる。


大木が折れるような鈍い音だ。


...ブシャーーーーーーー...


...バタバタバタバタ...


...シュゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...シュゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...


体液がアスファルトに落ちる。


大蜘蛛が逃げようとしてる。


...ブゥウォン...


脚がビンセントとケイの頭上に、振り下ろされた。


!?。


まずい...。


「うわーー!。」


「キャーーー!。」


...ガツッ...


2人が逃げた。


ギリギリの間だ。


大グモの脚から...。


...ゴゴゴガガガガーー...


...ゴゴゴガガガガーー...


...ゴゴゴガガガガーー...


タイオールがブチ切れてる。


人間が逃げたのを見て。


両方の口から雄たけびを上げてる。


大蜘蛛を両方の拳で何度も殴り始めた。


...ボギィ...ゴゴ...ガゴン.....


...ボギィ...ゴゴ...ガゴン...


まるでハンマーでヤシの実を割ってるみたいに。


...ボギィ...ゴゴ...ガゴン...


...グチャ...ボギィ...バキ...


木材が折れるような鈍い音がする。


...シュゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...シュゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...


また、大蜘蛛の身体から体液がほとばしっている。


潰れた大グモを見て、タイオールはまた猛り狂ってる。


こいつ、全ての反応が怒りだ。


両方の胸をたたいている。


地面が揺れる。


タイオールが大蜘蛛の足をむしり取り始めた。


大木みたいに太い木を。


...バッキィ...


...ブッチィ...


...バキバキ...


...バッキィ...


...ブッチィ...


...バキバキ...


大蜘蛛をめった打ちにしている。


...ボギィ、ゴン、バキバキ...

...ボギィ、ゴン、バキバキ...

...ボギィ、ゴン、バキバキ...


...ゴーーーーーーーーーーーン...


拳がたまに柱に激突してコンクリートを粉々に砕く。


...ゴゴン...バラバラ...


こいつが蜘蛛に気を取られてる隙に、逃げなくちゃ...。


おばさんと女の子。


倒れてる。


気絶してる。


ビンセントが、エルカーのスロットル引いてる。


...ググクググ...


「ビンス!。いけそう!?。」


ケイが。


ビンセントはVサインを。


こいつのVサインあてになんねぇ。


...グググッ...


エルカーのエンジンが反応してる。


...ググググググ...


...グルグググググゴンゴンーーーーン...


....グググググググググゴンゴンゴンゴン...ドドドドドドドドドドドドドドドド...


エンジンかかった! 。


エルカーが浮いた。


良し!。


「女の子乗せて!。俺はおばさんを...」


...グググググググググーーーーーー...


やばい。


エンジン止まりそう。


僕がエルカーを引っ張る。


ビンセントとケイがエルカーを押してる。


...ドドドドドドドドドドドドブルブルブル...


もう少しだ、もう少し。


あれ、俺もっと力あるはずなのに...


力が出ない。


消耗してる。


意外に...。


...ブルブルドドドドドドドグググググググググ...


...グググ...


!?


エルカーが全く動かなくなった。


まずい!。


タイオールの興奮が収まらない。


...ゴゴゴゴゴンゴンゴンググググゴゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーウギギギギギギ...


蜘蛛の死骸を捨てて、今度は放送塔をへし折り始めた。


...ズガゴーーーーーーン...ガッシャーーーーン...ズガゴーーーーーン...ガッシャーーーーーーーーーーーン...


辺り構わず殴り続けてる。


本当にまずい。


タイオールがこっち向いた!。


あぁぁ...。


放送塔を。


振り下ろして来た!。


うわああああ!。


「キャーーー!。」


今度こそダメだ...。


受け止められない。


この重さ。


しかも、タイオールの渾身の一撃。


身体。


持ち堪えてくれ!。


頼む!。


拳を交差し頭上で構える。


あ!。


ケイとビンセントが親子に覆いかぶさる。


バカ!。


違うだろ!。


に、逃げろ!。


神様!。

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