第2話プロローグ2


... ウウウウウウゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー...


!?


い、いつの間に...。


「し、シー様!。」


【...そこの女。ただちに退去しなさい!。こちら港南第6エリア 第34分隊 治安管理鋼規。繰り返す。そこの女。ただちに禁止区域から退去しなさい!。... 】


拡声器から声が...。


「...第26鋼規。ターゲットを確認。応援を!。急いでくれ。カウンターの値も...い、異常値だ..。」


かなり慌てている。


...ち、治安警察だ...


白いジェットスピーダー。


下弦に反重力板が着いている。


ゆっくりと回転している。


まるで四つの翼か車輪のように。


回転しながら莫大な浮力を産み出す。


アフロダイの力で。


アフロダイと重力は密接な関係がある。


...ヤバいことなったぞ...


...誰が呼んだ?...


...本営が来たらヤバい...


【...女!。聴こえないのか!。そこを下がれ!。女!。】


おばあさんがスカイスピーダーを見上げる。


バリケードの柵を持ち上げたまま。


ブレザーを着た巨人。


身なりの整った怪物。


グレーの髪がなびき、ブレザーの端がはためく。


風が強くなって来た。


...また来たぞ!...


...ウゥゥーーーー...ーーーーーー...


...ウゥゥゥーーーーーーーーーー...


来た...!。


今度は橋の方角から。


真っ黒なスピーダー。


!!


ほ、本営だ!。


スピーダーがひと回り大きい。


形も角張っている。


公安用じゃない戦闘用だ。


滑るように接近して来る。


陽の光を反射しながら。


...大変!...


...ありゃ...


...可愛そうに...


...婆さん殺されるぜ...


【...だ、ダメだ。...】


スピーカーから声が漏れる。


...ウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ...


...ウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ...


けたたましくサイレンが轟く。


スピーダーの影が色濃く岩場に覆い被さる。


「...ベイ3本営。現場に到着。座標フタマルロクヨンゼロゼロゼロ、ナナマルサンイチニナナ。端ノ島。被疑体確認。人間。甲型。性別女。直ちに排除する。...」


黒のスピーダーの中央の男。


通信機は制服に組み込まれてる。


『...3本営。了解。...』


音声が風に運ばれて来る。


地上10mから。


真っ黒な制服。


防御メット。


緊急時にはフルフェイスになる。


20mmくらいの弾ならビクともしないらしい。


「警告を無視しています。対処願います。」


鋼規が敬礼をする。


鋼規は純白な制服。


防御メットじゃない。


白い帽子形のメットだ。


「あぁ。」


本営は追い払うように手を掲げる。


本営の方が立場が上だ。


【...撃つしかなさそうだな?。値は?。...】


【...中に入られたら厄介です。まだ出ません。...】


【...しかし、よく嗅ぎつけたな。よりによってこんな場所。...】


構わず拡声器のまま話している。


粗っぽい。


【...はっ!。汗。凄い値です。...】


市民に聞かれてはいけないはずなのに。


【...何!?。...】


【...すでに基準の10000倍を超えました。計測続いてます。...】


【...まずいなそれは。おい。本部に連絡。...】


反対側の男に。


【...はい。...】


「こちらベイ3本営 第127 ビスタチーム。アルマダイの測定値が...」


【...どうしますか?。指示を待ちますか?。...】


【...いや。このまま行く。...】


【...値。まだ出ません。報告が必要です。...】


【...かまわん。用意。...】


...ぉぉぉう?。撃つのかよ...


グラサンの男が動揺してる。


...えぇぇ?...


【...了解。射撃用意。...】


撃つ気だ。


「し、シー様っ!。」


「シー様ぁ!。」


...ジャバッ...


ボディーガードが水に。


右足の脛の下まで水に。


「来るな!。着ちゃいけない!。」


おばあさんが手で制する。


右端の機が旋回を始める。


...ブロロロローーーーーゥゥゥゥ...


アフロダイエンジンの軽い回転音。


ジェットスピーダーは小回りが利く。


簡単に移動して向きを変える。


まるでウォータースライダーを滑るように。


みんなに危険が及ばない場所、方向に。


反重力板が無ければ重い鉄の塊。


【...ピーーー...再度警告する。...ガッ...下がれ。警告!。下がれ!。女!。...】


移動したスピーダーの警官が叫ぶ。


けたたましい音量。


鋼規の白いスピーダーが本営の下を飛び帰って行く。


おばあさんが引きちぎった柵を掴んだまま睨み上げている。


反対の手でボディーガード達に離れるように促してる。


まるで猟銃で狙われた熊。


砲撃が始まれば強気じゃいられない。


いくら巨人でも。


簡単に肉片にされてしまう。


恐怖に震え泣き叫ぶに違いない。


【...ガッガッ...聞こえないのか!。..ピーーーーーー...そこは立ち入り禁止区域!。退去しろ!。...】


...バキィン...バキ...バリバリバリバリッ...


...キャアァァァァァ...


...う...ぉぉぉ...


...何て力だ!...


す、凄い!。


柵から火花が飛び散る。


おばあさんは無視してバリケードを壊している。


「おまえ達ごときに指図される私ではない。」


...うぉぉぉ...


...しゃ、喋った!...


...ハクア語を?!。...


...気狂いじゃなかったのか!?...


【...だ、ダメだ。汗。中に入られたら取り返しがつかない。...】


警官が慌てている。


随分と。


【...良し。11:34分。威嚇射撃。...】


【...り、了解。汗。い、威嚇射撃...】


【...発砲!...】


【...発砲!...】


...ヒッ!汗...


....カッカッカッ....ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド...


18mmバルカンが火を噴く。


スピーダーの下弦。


一門のバルカン砲。


...キャアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!...


...うぉぉぉぉぉ!...


銃弾が着水する。


激しく水飛沫を吹き上げる。


...バシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャバシャ...


海が沸騰してる。


!!


おばあさんが鉄柵の中に入ろうとしてる。


む、無視してる...。汗。


治安警察のバルカン砲を。


【...ダメだ...。何て奴だ...。...】


何かを探してる?。


【...鉱脈に入られたら厄介だ。】


鉱脈?。


「来る...。」


え?。あ、アスカ?。


「あの時代が...。炎と戦いの時代が。」


な、な、何を言ってる?。汗。


アスカが呟く。


「あ、アスカ?。」


まるで熱でうなされてるみたいに。


「アルマダイの封印が今、解かれる。」


放心状態だ。


あ、アルマダイ?。


【...し、射撃用意!。...】


...エエッ!...


「...ダメ。」


あ、アスカ?。


...う、撃つんだ?汗...


【...し、射撃用意。...】


「やめて!。」


「し、し、シー様っ!」


...ジャバッ...ジャバ...


「バカ!。アスカ!。」


僕は引き寄せてアスカの口を手で。


厄介だ。


治安警察に目をつけられたら。


...ジャバッ...ジャバジャバ...バシャ...ジャバジャバ...バシャ...バシャ...ジャバジャバ...


2人の大男が海に入って行く。


アスカは僕の手を振り払う。


「来るな!。来るなーーーーっ!。」


おばあさんが叫ぶ。


【...射撃開始...】


...バシャバシャ...ボシャ...ドシャ...ザバァ...


男達は躊躇せずに進む。


【...射撃開始!。...】


でも中々前には進めない。


波が荒すぎる。


...ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド...


火を噴く。


スピーダーの下弦。


...うをっ!うをっ!うをおおぉぉ!...


バルカンの砲塔が。


1番射線に近い観光客が飛び上がる。


...キャアァァァァ!...


威力の凄まじさ。


あぁぁ...。


大半の人が耳を塞いでしゃがみこむ。


人や動物には絶大な威力。


正確無比な射撃。


風が水煙を消していく。


海面は真っ赤だ。


酷い...。


おばあさんは跡形も...。


!!


いや...。


おばあさんが立ち上がる。


鉄くずになった錆びた扉を握ってる。


「し、し、シー様ぁぁっ!。」


「く、来るなっ!。」


誰もが固唾を飲んで見てる。


治安警察がボディガード達に気づいた。


...ブロロロロ...


スカイスピーダー1機が大男の方へ。


慣性で滑って行く。


【...い、生きてます!。...】


【...ひ、人ではないな?。汗...】


【...さ、再射撃しますか?。...】


【...い、いや...。ショットアンカー。動きを止める。...】


かなりの慌てよう。


拡声器をオンにしたまま。


ショットアンカー。


鯨でも吹き飛んでしまう。


錨だ。


「見て。あれ。」



アスカが指を指す。


バリケードが吹き飛んでいる。


水の中。


透明な。


!?


何かが湧き出してる。


赤、青、黄色...。


海面に。


煙のように消えて行く。


混ざり合い様々な色に。


水の中で。


...何だあれ...


...き、綺麗...


人々も指差している。


【...あぁぁ...!。あ、あ、アルマダイが漏れてる!...】


【...大変だ!。...】


...あの光...


「違う。あそこ。」


アスカが身体を近づけて指差す。


何か浮いてる!。


人...?。


...ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ...


!!


海底が隆起し始めた!。


...バシャーァァァァ...


大きな岩が海に落ちる。


島が、島の端っこが崩れ始めた。


【...す、凄い値だ...】


【...被疑体は!?...】


「アダム。見て!。」


おばあさんが両腕で抱えている。


背を向けて波から守ろうとしてる。


凄い波。


うっ...。


く、くっさ!。


臭い!。


鼻を刺す匂い。


何かが腐った、いや、それよりも強烈な悪臭。


人?。


「人?。」


僕は鼻を抑えながらアスカに。


「違うよ。人じゃない。」


そうだ。


人にしては大きい。


下半身が無い。


腐ってる?。


まるでミイラみたい。


おばあさんの杖が海底に沈んで行く。


「皆さん!。ここは危険です。し、シャトルへ!。」


大男の片方が叫ぶ。


「ちょっとあんた!。ぼんやり見てる場合じゃないだろう!。あの人達を!。島から離れた方が良い!。」


船長はまだ海を見てる。


「おい!。船長!。何ぼうっとしてやがる!。」


「え?。」


【...ハッチが取れてしまってる。...】


【...引き返そう。俺たちがここに居てもどうしようもない。...】


【...し、しかし、市民が。...】


【...濃度を見てみろ!。おまえだけ残るか?...】


【...あ、い、いえ。せ、せめて警報を。...】


「あぁ...。お、おい!。カトー!。戻るぞ。シャトルを出すぞ!。」


「え?。あ、はい。」


「み、皆さーーん。船に戻ってください!。急いで船に!。急いでっ!。」


一斉にみんな走り出す。


パニックだ。


シーシャトルに向かって。


先を争って。


「おい!。カトー無線は!。」


おばあさんがミイラを抱えて島に戻って来る。


水をかき分け。


階段から落ちないように。


ゆっくりと。


水に浸かったミイラを。


「シー様!。」


!!


ひ、人じゃない。


赤い目が横に3つずつ。


宝石のように光ってる。


金属のミイラ。


所々光を反射する。


内臓が、千切れた内臓が海中に見える。


微かに口が動く。


生きている?。


それとも波?。


歯もある。金属の骨格や筋肉。


鈍い金色、そして鏡のような銀色。


腐った肉片や内臓が強烈に臭い。


あちこちに様々な色の光る石。


ミイラ自体が宝飾品みたいだ。


青い髪の毛。


肩まで伸びている。


両耳の所に皮膚が残っている。


顔は、皮膚が剥がれてしまっている。


「おい!。君たちも!。」


「は、はい!。」


「あれは私。」


え!?。


アスカ?。


何言ってんの?。


ミイラがアスカ?。


え!?。


おばあさんがまた階段を上がろうとする。


ミイラを抱き抱えて。


でももう上がれない。


自分の体重で。


「...アス...。母さんだ...。アスカ。」


波の音がおばあさんの声を打ち消す。


アスカ!?。


おばあさんがミイラを抱きしめている。


いや、あれはアンドロイド?。


おばあさんの顔が真っ赤だ。


泣いている。


おばあさんは諦めた。


階段の所に座った。


島から2段目の所。


「シー様。」


「ノーラン。ここはもう終わる。消滅する。お前達もお行き。せめてあの人らを救ってやっておくれ。この島は助からない。思ったよりも早く反応が進んでしまっている。」


「シー様。」


「頼んだよ。この子と私もここで終わる。この子も私も長く生き過ぎた。もう十分だよ。デイライト。幸せに暮らしておくれ。」


「シー様。」


「シー様!。」


「アスカ。聞こえるかい。おまえはもう蘇っちゃいけないんだ。分かるかい?。母さんと行こう。2人で。一緒に。戦いの無い世界へ。平和な世界へ。おまえは頑張った。独りぼっちで。長い長い間。だけどもう良いんだ。これからは母さんと一緒さ。ずっと。ずっと。」


お母さん?。


ミイラの?。


何が何だか分からない。


やはり死んでる。


動かない。


左胸の金色のモーターだけが綺麗。


錆びていない。


!!


アンドロイドの顔。


皮が肉が再生されて行く。


顔だけじゃない!。


手も。


女の人だ!。


普通の女の...。


安らかなに眠っている。


綺麗な顔。


似てる...。


誰かに...。


この胸の高まり...。


どんどん再生されて行く。


あれは...。


!?


ま、まさか!?。


あ、あ、アスカ!?。


あれは!。


あそこにも。


「ダメ。間に合わない。」


僕のアスカが腕を引っ張る。


え!?。汗。


「何が?。」


「私に捕まって。」


「に、逃げないと!。僕たちも。」


こっちのアスカが首を横に振る。


「捕まって。お願い。間に合わない。」


「あ、アスカ?。」


「お願い。」


アスカが悲しそうな顔をする。


僕はアスカをそっと抱きしめた。


「うん。」


そうだ。


僕はこの娘(こ)さえいれば。


「お願い。」


アスカが僕を見つめる。


「分かった。」


淡い石鹸の香り。


アスカが抱きしめ返して来る。


しっかりと。


細い身体。


柔らかくてしなやかな身体。


柔らかい胸の膨らみ。


愛してる。


アスカを抱きたい。


「アダム。もっと強く。」


「あぁ。笑」


アスカがキスを。


....ダンダンダンダンダンダンダンダンダン...


岩場が激しく揺れる。


上下に。


あぁ...。


僕たち死ぬんだ。


ここで。


何か途轍も無いエネルギーが炸裂する。


これから。


それは分かる。


それでもいい。


アスカと一緒なら。


...ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ...


隆起して行く。


バリケードのあった場所。


新たな島のように。


水蒸気、水柱が噴き上がる。


島が高熱を放ってる。


亀裂が広がって行く。


「臨界を超えたようです。どうやら。」


ボディーガードが。


足元に小さな光。


「バカどもが発火させちまったんだよ。」


赤、青、黄色、白、黒、緑、紫...。


「そのようです。」


雪の結晶のような形。


「撃つかね普通?。融合が始まってるのに。」


クリスマスのイルミネーションのように。


踊っている?。


「確かに。誤算でした。笑」


「そこまで愚かだとは。」


振動に合わせて。


踊っている。


「どのみち避けられませんでしたよ。」


眩い光の粒たちが。


歓喜に満ちて。


こ、これがアルマダイ?。


ひょっとして...。


隆起した場所から滑り落ちて来る。


小さな光の粒達が。


「そうかい。」


おばあさんは強くもう一人のアスカを抱きしめる。


左胸のモーターに手をやった。


金色の眩いモーター。


!?


金色のカニ?。


モーターじゃない!。


抵抗している。


おばあさんの手を黄金の脚で刺している。


おばあさんの手は血だらけだ。


でもあのアスカは穏やかな顔をしている。


おばあさんも穏やか顔をしてる。


「我々もご一緒させていただきます。」


「最後までお側に。」


おばあさんは頷いた。


静かに。


反対の手でアスカの肩をトントンと叩きながら。


優しい顔をしている。


母さんの顔。


....ガガガガガガガガ....


島が崩れ始めた。


シーシャトルが島より高く持ち上げられる。


シーシャトルは波の中に潜って行く。


果敢にも。


上手く鎖外れたんだ。


岩場に残された親子。


子供を抱きしめてうずくまっている。


高波にさらわれてしまう。


「おーい!。」


ボディガードが叫ぶ。


波が激しくなって来た。


「おーーーい!。こっちに来なさい!。」


手招きをしている。


母親が息子の手を引き転がるようにこっちへ向かって来る。


僕たちは見えないのか?。


沖合でシーシャトルは動かなくなった。


早くも。


死んだ魚のように。


波に弄ばれている。


全長100mの透明なクジラ。


治安警察のスカイスピーダーが飛び去って行く。


シーシャトルの上を。


...ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ...


激しく揺れ始めた。


音が酷い。


鼓膜が破れそう。


...バキンッ...ゴリ...ゴキン...バギィッ...バンッ....バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ...


岩場に亀裂が走る。


大気に光の結晶が飛び始めた。


アスカが目を閉じて唇を近づけて来る。


僕もアスカの唇から舌を入れて絡める。


少しづつ温度が上がって行く。


地面が崩れる。


僕とアスカは浮いている。


おばあさん達が海に呑み込まれて行った。


光が。


水平線から光が広がって来る。


眩しい。


大気は光で真っ白に。


目が焼ける。


...ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン...


...キーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


耳鳴り。


何も聞こえなくなった。


何も見えない。


あるのはアスカの感触だけ。


温度が高くなって行く。


アスカ熱いよ。


アスカはキスをやめない。


何も見えない。


何も聞こえない。


感じるのはアスカだけ。


アスカ。


でもそれが僕の全て。


溶けて行く何もかも。


僕もアスカも。


アスカ...。


出会えて良かった。


愛してる。


永遠に。


永遠に一緒に...。

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