いつか出逢ったあなた 46th

ヒカリ

第1話 「まこちゃーん。お弁当食べよー。」

「まこちゃーん。お弁当食べよー。」


 教室の入り口で、聖子が大声で叫んだ。


 僕がそれを見て弁当を持って立ち上がると。


「…毎日一緒に弁当食ってるよな。」


「…島沢って、七生と付き合ってんの?」


 そんな声が聞こえて来た。



「付き合ってないよ。友達。」


 振り返ってそう答えると。


「…おまえ、マジで耳いいよなあ。」


 僕と聖子を噂してた二人は、首をすくめて苦笑いをした。



「何話してたの?」


 廊下に出ると、聖子が教室の中を振り返りながら言う。

 言ってもいいけど、別に言うほどの事じゃないしなあ。


「別に……あれ?知花は?」


 気が付くと、いつも聖子と一緒にいる知花がいない。


「今日は寝坊してお弁当作れなかったんだって。購買行ってる。」


「へー、珍しいね。」


 僕はポケットの小銭を確認して。


「僕も牛乳買いに行っていい?」


 聖子に言った。


「うん。じゃ、あたし先に行ってるわ。あ、お弁当持ってっとく。」


「ありがと。」



 僕、島沢しまざわ真斗まことは、桜花学園高等部の一年生。

 同級生の七生ななお聖子せいことは、ほぼ毎日、一緒にお弁当を食べる。

 で…一緒にバンド活動もしてる。


 バンドを組んだ経緯はー…知ってるだろうから置いといて…



「あ、まこちゃん。」


 売店に行くと、知花に会った。


 桐生院きりゅういん知花ちはな


 彼女も同級生で、一緒にバンドしてる仲。

 ついでにお昼も一緒。



「寝坊したんだって?」


「そうなの。朝ご飯食べるだけでギリギリだった…」


 寝坊したら、僕なら朝ご飯抜いちゃうけど、知花は食べるんだー。なんて思いながら、小さく笑った。


 知花の手には、売店のサンドイッチ。


 いつも自分でお弁当を作って来る知花。

 それがとても美味しそうなラインナップで…

 僕と聖子は、時々おかずをトレードしてもらったりする。



 自販機でパック牛乳を買って、知花が会計を済ませるのを待って一緒に理科室に向かった。



「そう言えば、この前知花が言ってたキーボード、うちにあったよ。」


 並んで歩きながら言うと、知花は目を輝かせて。


「えっ、お父さんの持ち物?」


 楽しそうに声を弾ませた。


「うん。もう古いから使ってないって。分解するって言ったら貸してくれないかもだけど…それは内緒にして次のスタジオに持ってってみる。」


「わ~、楽しみ。」


 知花は、華道の家のお嬢さんなんだけど…

 どういうわけか、電気系統に恐ろしく強い…って言うか、好奇心の塊。


 先週のバンド練習で、スタジオのキーボードの音が出なくなった時も。


「これ、一度開けなきゃダメかも…」


 って、受付に行って開けてもらうのかと思いきや…


「まこちゃん、違うキーボード借りて来たから。みんな、ごめん。歌なしで練習してて。」


 そう言って…通路にキーボードを引っ繰り返して、分解し始めた。


 それには受付の人達も驚いてて。


「え…えええええ…君、そっち系の職人さん…?」


 って…


 で、僕らが一曲やってる間に…直した、と。



「遅いー。お腹すいたー。」


 理科室に入ると、聖子が机に突っ伏して、顔だけ上げて言った。


「ごめんごめん。」


 聖子が出してくれてた椅子に座って、三人でいただきます。をする。


 いつから、こんなお昼時間を過ごしてるだろ。

 僕がバンドに加入してからは…ずっとだけど、まだ一年は経ってない。


 女二人に男一人。


 時々『どっちとデキてんの?』って聞かれたりする事もあるけど…

 僕と聖子と知花は…


 そんな、軽い関係じゃないんだよ。


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 アメブロに『まこちゃんのお話はすっとばします。なかった事に!!』と書いたはず。

 なのに!!

 やっぱり出しまーす。

 そして一時間おきに更新…

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