第12話 それからー…

 それからー…

 僕と聖子は高等部の三年になった。


 二年の時は嫌な物は避ける感じで選択科目を選んでた僕らは、がっつりと英語を選べるだけ選んで文系のクラスに進んだ。

 おかげで聖子とは、ほぼ同じクラス。



「まこちゃんはいいわよねー…帰国子女だもん…」


「…何言ってるんだよ。僕がアメリカにいたのって、4歳までだよ?喋る相手は、ほぼ日本語だけの母さんだったって言うし…」


「あたし達、伯父貴の期待に応えられるのかな…」


「不安だよね…」



 そもそも、僕らがこんなに英語に力を入れ始めたのは…

 高原さんから『頭が悪い奴は嫌いだ』って言われた事もあるけど、ビートランドはアメリカにも事務所がある。って事が頭にあったから。


 セン君はああ見えて(のんびり屋さんに見えてって意味)、アメリカに住むお父さんに会う気満々だし、陸ちゃんだってデビューするなら世界ツアー出来るぐらいになりたいって言ってるし…


 つまり…

 ほんと、まだデビューしてないのに、夢だけはワールドワイド。

 だけどその時が来たとして、勉強不足でした!!って事にならないように…語学力を身に着けて置こう…と。


 Deep Redがアメリカで活動してたから、僕は生まれがアメリカ。

 だけど英語はそんなに喋れるわけじゃないから…大っぴらに言いたくない。



 光史君もアメリカで生まれたし、帰国したのは7歳だったから…それとなく喋れるみたいで…

 陸ちゃんは頭がいいから…問題ない。

 知花はインターナショナルスクールに通ってたから…もう外人。(違うか)


 そんなわけで、残った聖子と僕と、セン君(アメリカに行く気満々ではあるけど)は英語に難がある。

 うーん…



 だけどバンド活動の方は…本当、乗りに乗ってるって感じで。

 新曲もかなり書き溜めたものを、みんなでディスカッションしながらより良い物に仕上げて。

 それを朝霧さんに聴いてもらってアドバイスをもらったり…

 本当に、デビューに向けてみんなで前を向いてた。


 そしてついに…僕らは8月に渡米する事が決定した。

 それに伴って、僕と聖子は桜花の姉妹校に転校する形に。


 陸ちゃんは桜花の大学を辞めて、アメリカの大学を受け直して『二年以内に卒業する』って言い切った。

 …本当にやっちゃいそうだよね。


 光史君は、バンド一本にしたいからって、大学中退。

 …ちょっと羨ましかったりする。


 元々茶道の家元だったのに勘当されて、今は音楽屋のバイトとバンドだけだったセン君は…


「親父と暮らすんだ。」


 って、嬉しそうだった。


 ついでに…

 僕らの知らない所で英会話教室に通ってたらしいセン君は…


「うん。完璧だね、セン。」


 陸ちゃんと光史君と知花に囲まれて、英会話が出来るぐらいになってて。


「何なのよー!!抜け駆けしやがってー!!お茶男ー!!」


 って。

 聖子に怒鳴られてた。




 …お茶男って(笑)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る