第5話 「…まこちゃん、最近何かあった?」

「…まこちゃん、最近何かあった?」


 お昼休み。


 珍しく真向いに座った知花が、僕をマジマジと見て言った。


「…いい事?」


 首を傾げて普通にしてるつもりが…少しだけ瞬きが増えたかもしれない。

 そんな僕を見ながら、知花も同じように首を傾げてる。



「…知花も何かあった?なんか…最近キラキラしてるね。」


「…キラキラしてる?」


 知花は…僕とは違って、真っ赤になった。


 えー…?

 この頬の染め具合って…彼氏でも出来たのかな?



 この時、聖子はと言うと…体育委員会に行ってて、不在。

 聖子がいないからこその会話。

 だって、聖子…

 こういう話題になると、根掘り葉掘り聞いちゃうから。



「…髪の毛の秘密とか話せて、肩の荷が下りたからかな…?」


 知花は赤くなったまま、そんな事を言った。


 髪の毛の秘密…とは。

 実はハーフで、赤毛だ…と。

 いつもは、ウィッグをつけてた…と。

 あと、何だか似合わないなあ…って思ってた眼鏡も、少し違う目の色を隠すためだったみたい。



 この前、『セン君スタジオ初参加』の時。

 赤毛でやって来た知花。

 何だか、いつものふわっとした雰囲気が…さらにふわっとして感じられた。


 声もだけど、僕は知花の雰囲気が大好きだ。

 あ、親友として。

 人間として。



「まこちゃんのいい事は?」


 頬の赤みが引いた知花が、僕に話を振る。


 …いい事…

 …い…


 言えない。


 こんなのバレたら、僕は…

 聖子はともかく、知花からは親友やめるって言われそうだ。


 だって、知花は無垢って感じで…

 今の僕の状態なんて知ったら…卒倒しちゃいそうだよ。



 生物の多田先生に唇を奪われただけじゃなく、全てを奪われたと言うか、捧げてしまったと言うか…


 一度、あんな気持ちのいい事を知ってしまうと…

 当然、次も欲してしまう。


 …だって僕は…


 健康男子だから。



 だけど、知花と聖子に対しては、絶対そんな気持ちにはならないし、そんな対象として見た事もない。


 何も聞かれてないけど、信じて、知花。



「彼女でも…出来たの?」


「…知花も、彼氏でも出来た?」


「……」


「……」


「彼氏…って言うのとは…違うの…」


「僕も…彼女っていうのじゃないかな…」


「…ふふ…」


「はは…」



 そんな会話を交わした、一ヶ月後のスタジオで。


 …知花が、TOYSの神さんと結婚してる事を…聞かされた。



 そ…






 そりゃあ、赤くもなるよ!!←そこ?

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